未来はまだ決まっちゃいない。IPCCの気候報告書「人類にとっての警戒警報」

  • author Brian Kahn - Earther Gizmodo US
  • [原文]
  • Kenji P. Miyajima
未来はまだ決まっちゃいない。IPCCの気候報告書「人類にとっての警戒警報」
Image: Oscar Del Pozo/AFP (Getty Images)

実に7年ぶり6回目。甲子園ではありません。

「IPCC(気候変動に関する政府間パネル)」の主要報告書の発表です。2014年の第5次報告書から7年、第1作業部会による第6次報告書が発表されました(IPCC、気象庁の暫定和訳バージョン)。

異常気象が続く中での報告書発表をチャンスに変えて

中身は冷静で科学的な内容なのですが、読んでいると感情的になります。IPCCによる他の報告書(特に2018年発表の気温上昇を1.5度に抑えるケースの特別報告書)を読んだときは落ち込みもしましたが、今回はちょっと違う印象を受けました。

第6次報告書には、気候変動に関するレポートに必要なすべての要素が詰め込まれています。気候危機は予想以上の速さで進行中で、引き返せない転換点が目の前に迫っていて、脱化石燃料を達成するための時間的な余裕はどんどんなくなってきています。国連のグテーレス事務総長の言う通り、この報告書は「人類にとっての警戒警報」です。サイレン鳴りまくりです。でも、今までと違うのは報告書に書かれていることではなくて、書かれていない「世の中で起こっていること」だったりします。

ローカル地域の天気と気候変動をつなげるCurrentlyというサイトを設立した気象学者のエリック・ホルタウス氏は、「みなさんはすべてを変えるために、グッドタイミングで生まれてきました」という言葉をよく使います。私はこれまで青臭いって思われたくなくて、そういう感情的な表現を避けがちだったんですね。でも、今回ばかりは「ほんとこれ!」って思わずにはいられませんでした。この大ピンチは、変わるためのチャンスでもあるんです。

IPCCの第5次報告書が発表された2014年は、まだ異常気象と気候変動をつなげるための科学は生まれたてで、異常気象が気候変動の影響を受けるのもまだ先のことと考えられていましたし、気候変動ムーブメントは今と違って白人の環境保護団体が中心でした。でも、それから変化が起こり続けています。

今回の報告書は、表現が以前よりもハッキリしています。科学がより緻密になってきた証拠です。人間が気候に与える影響に「疑いの余地がない」と初めて言い切りました。直近50年間の温暖化ペースは、過去2,000年(たぶんもっと長い期間)で最速なのだとか。でも、もっともっと深刻なのは、この夏に起こっている異常気象です。あちこち大陸洪水起こりとんでもない熱波が多くの人の命を奪いました。森林火災から立ち上る煙は、宇宙からでも確認できるくらいです。私たちは、緊急事態の真っただ中を生きています。

変化に必要な気候変動ムーブメントの成長

この2年で、多くの人が森林保護を超える目標を掲げて団結しました。彼らは、先住民族の土地所有権を回復し、黒人や褐色人種を深刻な状況から解放し、嘘ばかりつく巨大石油産業をコテンパンにして、熱帯雨林を守りたいと考えているそうです。これまでとは違う何かのために必死で戦う準備ができているムーブメントといえます。

「Inherited」という若者による気候変動ムーブメントを紹介するポッドキャストのホストを務めるジョージア・ライト氏は、ブログで「先はクソ長いですが、燃え尽きるわけにはいきません」と覚悟を述べています。

とは言っても、変化に抵抗はつきものです。今あるシステムや、石油生産と富の独占と尊厳の搾取による経済をキープしようとする人々は、必死に応戦することでしょう。過去にIPCC報告書が発表された際にも、抵抗勢力は存在しました。でも、今回はその抵抗する力も弱くなっています。

エネルギー関連の分析を専門とするケタン・ジョシ氏は、石炭産業と化石燃料の使用そのものを終わらせることについて、「最初のドミノが倒れれば、そこから先のドミノを次々と倒せる力が私たちにはあると確信しています。その歴史的瞬間はスローモーションのように感じるかもしれませんが、時間が過ぎればほんの一瞬の出来事として記憶されるでしょう」とツイートしています。その言葉が、この数週間私の頭から離れません。

どんな未来を生きたいか、決めるのはわたしたち

もちろん、未来は決まっていません。IPCCは気候モデルにパスウェイと呼ばれるシナリオを用いています。これは基本的に起こり得る世界の姿を表したもので、各シナリオが気候にどんな影響を与えるかを示しています。実現してほしくはありませんが、今よりも世界が分断して富裕層が富を独占するというシナリオもあって、そうなると想像を絶するレベルの温暖化が起こって、数十億まではいかなくても、数億人に甚大な被害が及んでしまいます。

それとは違って、より公正な未来を選ぶこともできます。競争をやめて協力し、技術や知識をすべての人の利益のために共有・共創する世界なんてどうでしょう。非現実的? もしも気候変動を止めるためのコントロールを失ってしまったときには、このような考えは甘すぎる理想だったってことになるかもですね。

わたしたちひとりひとりにできること

より良い未来のために戦う気満々の人々が、行列を作っています。気候変動を止める方法も増え、必要性も高まっています。私たちひとりひとりに何ができるのでしょうか? パイプラインへの抗議活動に参加するのもいいでしょう。昔ながらのやり方で、代議士に電話で訴えるのもいいでしょう。刑務所を太陽光発電所にするために活動するのもひとつの方法です。「普通の人々」を議会に送り込むのもいい案です。ジェフ・ベゾスに税金を払ってもらうために動くのもアリです。76通りある気候変動を止める方法のどれかを実行するのもいいと思います。しかしながら、もしもより良い未来に向かうとしても、人類は何世紀も続くであろう気候変動の影響に対処していかなければなりません。気候変動に対してもっとも脆弱(ぜいじゃく)な人たちを助けるために戦うのを忘れないようにしましょう。

気候変動ムーブメントの成長と気候危機の緊急性が、変化の道のりにさまざまな影響をもたらしてくれます。でも、時間はどんどん過ぎ去っていきます。だからこそ、今がまさに行動を起こすべき時なのです。

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