グリーンランドの雪しか降らないキャンプで観測史上初の雨

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グリーンランドの雪しか降らないキャンプで観測史上初の雨
Photo: Saul Loeb / AFP (Getty Images)

そのまま凍れば問題ないかと思いきや、そうでもないのだそう…。

先週、グリーンランドの氷床で大規模な融解が発生。それも2週間で2度目の出来事です。前回は観測史上最高気温とのことでしたが、今回の要因は。というのも先週のグリーンランドには70億トンもの雨が降り注ぎ、サミットキャンプ(氷床の頂点近くにある研究ステーション)では観測史上初めて雨が確認されたのだとか。

雨は雪よりも"色が暗い"

氷床の大規模融解は、先週末2日間にわたって起きました。たった数日の雨でもその影響は深刻で、氷床を溶かすだけでなく雨がそのまま凍ることも問題と考えられているのだそうです。雪がしっかり硬めに圧縮した状態の氷は白く反射しやすいのに対して、雨からできた氷は色が暗く比較的滑らか。これにより太陽の光を吸収しやすくなり、さらなる融解を促すことが懸念されています。

Gif: Gizmodo US (NASA Earth Observatory)

上はグリーンランド氷床での雨の影響を捉えた衛星画像です。雲のない状態(8月12日)と雨が降った後の状態(8月15日)を比較しています。

地球上で最も早く温暖化が進む場所

今回の雨により融解の影響を受けた範囲は、氷床の約半分にあたる87万2000平方キロメートルとされています。7月下旬には氷床のおよそ3分の2が溶けたことが確認されているほか、氷床での80万平方キロメートル以上にわたる融解はこれまで1度に限らず発生していますが、今回のような遅い時期にこの規模の融解が起きたのは史上初とされています。

今年の夏は世界中であらゆる形の気候変動現象が発生しました。なかでも北極圏は、地球上で最も早く温暖化が進んでいるとされています。研究よると雨はもはや珍しいものではなくなり、2020年のレポートでは、北極圏の一部地域では冬であろうと関係なく雪でなく雨が降ることもあり得るようになったと書かれています。

温室効果ガスの排出削減が鍵

こうした話は北極圏から遠く離れた地域に住む私たちにとっても決して他人事ではなく、先週の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)では、グリーンランドや北極で溶けた氷床が過去3,000年になかったほど早く海面上昇を引き起こすことになると警鐘を鳴らしています。

2019年の研究では、世界中でこのまま温室効果ガスの排出が続いた場合、今世紀終わりまでにグリーンランドの氷床融解で海面上昇(最大0.3m)が起き、世界中の沿岸地域に影響を与える可能性があること、西暦3000年になるころにはグリーンランドの氷床がすべて溶けて海面上昇(最大7m)が起きることが示唆されています。

こうした事態を防ぐためには、一刻も早く化石燃料の使用を中止し、温室効果ガスの排出量を削減することが重要です。「グリーンランドの山頂で降雨」を常態化させないために、今できることをやらないわけにはいきませんね。