疲れた心にはやっぱりエンタメが必要。コロナをひっくり返す『DIVOC-12』、展開が読めない『ユメミの半生』インタビュー

  • author 中川真知子
疲れた心にはやっぱりエンタメが必要。コロナをひっくり返す『DIVOC-12』、展開が読めない『ユメミの半生』インタビュー
Image:© 2020-2021 Sony Pictures Entertainment (Japan) Inc. All rights reserved.

私たちの生活を大きく変えた新型コロナウイルス。ステイホームや活動自粛…。必要なこととわかりながらも、「もういい加減にしてくれ」という気持ちになりませんか。そんな時欲しくなるのは、「心に効く薬」のような存在です。

12人の監督がそれぞれチームに分かれ「成長への気づき」「感触」そして「共有」という3つのテーマにそった作品をつくったオムニバス映画『DIVOC-12』は、まさにそんな薬のような映画。COVID-19のCOVIDを逆から読んでDIVOCとしたこの名前には、「コロナをひっくり返したい」という意味が込められているそう。

『DIVOC-12』の作品のひとつ『ユメミの半生』でバーチャルプロダクションを使用した上田慎一郎監督 と、その巨大スクリーンの前で主演としてユメミを演じた女優 松本穂香さんのインタビューをお届けしますね。

Video: ソニー・ピクチャーズ / YouTube

『ユメミの半生』

映画館のロビーで閉館のお知らせを見つめる少年カケルの前に、映画館のスタッフ ユメミが現れる。「聞いてるよ。常連に映画監督志望の中学生がいるって」とカケルに話しかける彼女は、波乱万丈だったという自分の半生を語り出す──。

──『ユメミの半生』は、ソニーPCLの技術であるバーチャルプロダクションを使用した国内初映画だそうですね。なんでも、巨大モニターに映し出された風景が、カメラと連動してピントが変化し、連動して動くものだとか(取材記事)。この大掛かりなバーチャルプロダクションを使った理由をお聞かせください。

上田慎一郎監督(以下上田監督)撮影が一回延期になった時に、ソニーからバーチャルプロダクションという技術を紹介してもらったんです。その時に、面白いなと思って。

『ユメミの半生』にはさまざまなロケ地が登場します。それを短期間で撮影する方法を模索していました。面白いだけでなく、この技術を使えばそこがクリアできるだろうな、と考えました。

それに、今の最新技術に挑戦することは、この映画にとって意義があるとも思ったのです。

──監督はこれまでの作品でも常に新しいアイディアや技術を映画作りに取り入れてらっしゃいましたよね。コロナ禍でいち早く完全リモート映画の『カメラを止めるな!リモート大作戦!』を作って時代をキャッチしていますし。

今回、『ユメミの半生』でバーチャルプロダクションで撮ったり演じたりするのは、一般的な撮影と違いますか。

上田監督本質的な所は変わりませんでした。ただ、実際のロケ現場ではないので、演出も芝居も「ロケ現場の様に見える」ように工夫する必要はありました。その工夫が大変であり楽しくありでしたね。スタジオだと風がふかないから、扇であおいだりしたんですよ。照明で照り返しの光を当てたりとか。

ただ、そこも「役者にとってどうなのかな、やりづらく無いのかな?」っていうのは意識しながらやりました。役者は勝手が変わりますよね。背景に映ってるものがあるので、グリーンバックよりはやりやすいけど、スクリーン以外の場所には景色がないわけです。そこは普段の現場と違う。

松本穂香(以下松本)お芝居をする上では、特にいつもと違うことはありませんでした。やることは同じです。相手がいて、その人とお芝居をしていって。

もう少ししっとりした作品だと、自然の中や、その風景に身を委ねたり、風景に助けられることもあるのですが。今回の作品に関しては、やり辛さを感じることはありませんでした。

私たちよりも照明さんとかの方が大変だったのではと思います。奥の風景と手前の光が違うので、いつもと全然違うのだろうなと思っていました。

──本作はバーチャルプロダクションのみで、VFXは全く使っていない?

上田監督少しだけ使いました。できる限りCGを使わないルールのもとで作っているのですが、銃撃シーンの煙や火花、ヌンチャクセーバーはVFXですね。

──今回はコロナ禍という特殊な状況と、短期間で複数のロケーションを回るという設定なのでバーチャルプロダクションが活かされていますが、今後も使う場合はどういった理由が考えられますか?

上田監督まず、天候に左右されない利点があります。

それと、本作には14、15歳の少年が出演しているのですが、法律上、子どもは夜8時までしか出演(労働)できません。バーチャルプロダクションなら、昼間からでも夜のシーンが撮れたりします。落ち着いてしっかり撮影できたりするかな、と。

それと移動がないので、移動してセッティングしてという時間ロスを防げます。絶対にいけないような場所での撮影も可能です。今回はバイクの走行シーンがありますが、ノーヘルで手放し運転をしているんです。こんなこと、現場ではできませんが、バーチャルプロダクションなら可能です。バーチャルプロダクションだからできる内容もあると思います。

──『ユメミの半生』は閉館間際の映画館から登場し、映画の楽しさや魅力が語られています。なんだか、上田監督の映画への思いや、コロナ禍で危機的状態に陥った映画館への憂いが込められた作品だと感じました。監督はどのような気持ちを込めて本作を作ったのでしょうか。

上田監督:見た人のアクションに繋がるといいなと思って作りました。見た人が自分も映画作ろう、脚本を書いてみよう、役者やってみようかなとか、この物語が誰かの現実に少しでも触れられたら嬉しいなって思う。

松本こちらからどう感じて欲しいというより、感じ方はみなさまに委ねるというか…。ただ、見てくださった人の行動のきっかけになれば、私たちとしても嬉しいかなと思います。

──後世に残すコロナ禍の記録としての面もあるような気がしましたが、いかがでしょうか。物語として面白い一方で、今の世の中の空気感もキャプチャーしていると思ったのですが。

上田監督いや、そう言った意図は無く、今を生きる人に楽しんで欲しいと思っていました。10年後にみた人が、コロナ禍は大変だったんだなと感じるだろうとか、未来の人たちに、この時代の苦しかったこととか、大変だったこととか、そういったものを残そうというつもりはありませんでした。むしろ、ネットに見られる大変だとか苦しいといった声に対して、「そんな中でも楽しめるよ」とか、「ものは作れるんだよ」っていうメッセージを送っています。

──完全リモートで製作した『カメラを止めるな!リモート大作戦』やバーチャルプロダクションの『ユメミの半生』、コロナ禍における映画作りという点で、気持ち的に変化したことはありましたか。

上田監督『カメラを止めるな!リモート大作戦』を撮った時は第1回目の緊急事態宣言の時でした。第2回目、第3回目の時にも何か作らないと、と思ったのですが、この時にはZoom画面を使ったり、リモート映画を作ろうという気持ちは薄らいでいて。やっぱり現場で撮りたいと感じていました。

──上田監督は「映画に助けられてきた」「映画は心の薬」とおっしゃっていますが、お二人にとって、このコロナ禍を乗り越える上で支えになった映画はありますか。

松本私はホラーが好きなので、強いていえばホラー映画です。

コロナ禍になって、映画が素晴らしい娯楽のひとつなんだと再認識しました。その中でも、何も考えずに、頭空っぽで見ることができるホラーというジャンルに助けられました。印象に残っているのは『ミッドサマー』です。お仕事上、お芝居や演技に注目してしまうのですが、そういうものを超えてやってくる作品が好きなのです。

上田監督僕ではなく、映画監督をしている妻なんですが、彼女も日本映画を見る時は監督目線で見てしまうから、マーベル作品ばかり見ていますね。頭を空っぽにして一映画ファンとして映画を堪能できるから、と言っています。今の穂香ちゃんの発言と同じかな。

コロナ禍に僕を支えてくれた作品は、『エヴァンゲリオン』シリーズですかね。実は『エヴァ』を見たことがなかったんです。だから、テレビシリーズから旧劇場版、新劇場版、『シン・エヴァンゲリオン劇場版』までを、Youtube企画を絡めて全部鑑賞したんです。コロナ禍でなかったら、そこまで時間をかけてできなかったはずですし、見ているときはコロナ禍であることを忘れていました。

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Photo:中川真知子

上田監督は映画を「人を救う薬」と表現していますが、元気、しんみり、考えさせられる、笑える、大切なものに気づけるなどなど、いろんな気持ちにしてくれる『DIVOC-12』は、まさにコロナ禍で元気を失った私たちの心にあらゆる手を使ってアプローチしてくる治療薬みたい。きっと、心が弱っている今も、色々乗り越えたコロナ終息後に見ても、違う感じ方ができるはずです。

『DIVOC-12』は10月1日(金)より全国ロードショー。

『DIVOC-12』

12人の映画監督による12本の短編で紡がれる、未体験エンタテインメント。株式会社ソニー・ピクチャーズ エンタテインメントによる、新型コロナウイルス感染症の影響を受けているクリエイター、制作スタッフ、俳優が継続的に創作活動に取り組めることを目的とした、オムニバス映画を制作するプロジェクト。

監督:藤井道人、上田慎一郎、三島有紀子/志自岐希生、林田浩川、ふくだみゆき、中元雄、山嵜晋平、齋藤栄美、廣賢一郎、エバンズ未夜子、加藤拓人

出演:横浜流星/松本穂香、小関裕太/富司純子、藤原季節/石橋静河/小野翔平、窪塚洋介/安藤ニコ、おーちゃん/清野菜名、高橋文哉/蒔田彩珠、中村守里/中村ゆり、髙田万作/笠松将/小川紗良、横田真悠/前田敦子

『DIVOC-12』公式サイト:https://www.divoc-12.jp/

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