専門家5人に尋ねました…このままコロナ禍は収束していくの?

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  • author Daniel Kolitz - Gizmodo US
  • [原文]
  • 湯木進悟
専門家5人に尋ねました…このままコロナ禍は収束していくの?
Image: Elena Scotti(Photos: Shutterstock)

過度の期待は時期尚早?

一時は日本でもどうなってしまうかと心配された、新型コロナウイルス感染症大流行。ところが、ここにきて感染スピードは急速に収まってきているようにも感じられます。もしや、このまま収束する? それとも、また次の感染拡大期がやってくる? 今回のGiz Asksでは、この疑問を複数の専門家にぶつけてみました。

Marisa Eisenberg

ミシガン大学疫学准教授

いつ新型コロナウイルスが終焉を迎えるのかを具体的に示すのは非常に困難です。ただはっきりしているのは、まだまだ長い道のりが待っているということでしょう。

いわゆる「ゼロコロナ」を目指すのは理想の世界ですけど、そこへ少しは近づきつつあるようです。これは季節的な影響かもしれません。あるいは、多くの人がワクチンを接種したり、すでに感染して一定の免疫を獲得したことにより、たとえ新たに感染しても重症化する確率が低下しているのかもしれません。このままマスクの着用や全世界でのワクチン接種率の向上という予防措置を継続すれば、感染スピードを落とし、免疫強化が進んで、単なる風土病の一種に新型コロナウイルス感染症が落ち着く方向性へと向かっていき、重症患者や死者数は減少していくことでしょう。

もし基準を示すとすれば、新型コロナウイルス感染症による入院患者数や死亡者数が、きわめて少なくなるときに、パンデミックは収束を迎えたと定義できるのではないでしょうか。その数値は国によって異なりますが、季節性インフルエンザがもたらす影響と同程度に落ち着くかどうかは、一つの指標になり得ます。米国内では、毎年インフルエンザで1万2000人から6万1000人が死亡してきました。一方、2020年の新型コロナウイルスに起因する死者数は、米国内で37万5000人、今年はこれまでに約29万5000人です。

大切な別のポイントは、パンデミックが収束する時期は、国や地域によって異なるという点です。ワクチン接種率、ソーシャル・ディスタンスやほかの予防措置の徹底は、場所によって異なっているからです。さらに、ある場所でパンデミックが終わったと思われても、その長期的な影響残り続けるでしょう。それは、メンタル面でのダメージかもしれませんし、誤解や誤情報による不信感、経済的なインパクトが残ってしまうことかもしれません。

Leana Wen博士

ジョージワシントン大学公衆衛生学教授、救急医、著書に「Lifelines: A Doctor’s Journey in the Fight for Public Health

そもそも社会として、われわれはパンデミックの収束とはなにかを、いまだ定義していない。新型コロナウイルスの新規感染者がゼロになったらだろうか? 医療崩壊を懸念する必要がない程度の入院患者数に落ち着けば、もうパンデミックは終わったと考えてよいのか? 死亡者数が、ある一定の数値を下回ればよい?

いずれにせよ、ほとんどの人が同意すると信じているが、この新型コロナウイルス感染症という、われわれにとって最悪の健康上の危機は、もはや心配する必要などないというレベルに到達するまで、まったく落ち着いてきてなどいないということだけは確かだ。

近いうちに、そうした状態を迎えるとも、個人的には考えていない。子どもたちにワクチン接種が進められない状態で、その希望はもてないだろう。また、世界では、大いに必要と思われる層にさえワクチンがいきわたっていない。これからいずれかの時点で、パンデミックが落ち着くとはどういうことなのか、新たな定義づけがなされることだろう。

それは、もはやコロナのことを念頭に置くことなどはなく、さまざまな決定を自由に下せる時代のことだ。現時点では、まったくその状況に近づいてもいない。

Amesh Adalja

ジョンズホプキンズ健康安全保障センター学者、感染症、ICUおよび緊急治療が専門分野

今回のパンデミックは、多くの国で、ほかの年ごとに流行する呼吸器系疾患と同じように新型コロナウイルス感染症に対応できるようになったとき、その収束を迎えることでしょう。

動物を宿主とし、さまざまな症状を伴って急速に感染が拡大する呼吸器系疾患が、新型コロナウイルス感染症です。これを撲滅したり、地上から駆逐することなどできません。それで、目指すことになるのは、重症化や入院患者数、死亡者数の急拡大を、いかにして減らすことができるかというポイントです。重症化しやすい人々へワクチン接種を進めて、入院にいたるケースを減らすことが理想に掲げられるでしょう。

とはいえ、ある一定数の入院や死亡が報告されることは、今後も避けられません。感染後に免疫を自然に獲得することも、実は大きな転換点となりますが、それをウイルスとの闘いの理想とすべきではありません。

最終的には、新型コロナウイルス感染症は、風土病の一種に落ち着き、ウイルスと共存しながら、より制御できる状態で向き合っていける状態が、パンデミック後の世界の姿となるでしょう。

Art Reingold

カリフォルニア大学バークレー校疫学首席教授

率直に答えるならば、だれも確かな答えなど出しようがない。その一因は、ワクチンの効果をすり抜ける変異株による不透明な見通しや、世界全体で高いワクチン接種率を達成できる時期を見通せないことにある。

しかしながら、将来的にまるで季節性インフルエンザと似たようなパターンで、定期的に風土病と化した新型コロナウイルス感染症の流行が生じる世界になるだろう。その時期を述べるならば、早くとも今後1年から1年半のスパンでは訪れないと考えている。

Lynn R. Goldman

Milken Institute School of Public Health学長、ジョージワシントン大学環境および職域衛生学教授

ウイルス変異していくスピードに勝る勢いで、十分なワクチン生産して人々の腕に打っていくことは、急速に実現できるものではありません。パンデミックの収束まで、あと最低でも1年はかかるでしょう。これは、非常に楽観的に考えるならばです。ワクチンの生産が順調に進まなかったり、人々のワクチンへの抵抗感が高かったりすれば、まだ2〜3年はかかることにもなります。

これは残念な事態でもあるでしょう。そもそも人類の新型コロナウイルス感染症に対する当初の認識の甘さがありました。これほど早く変異して感染が拡大していくとは、だれも予測できませんでした。一方、人々の生活様式についての認識も不十分なままです。ここまで誤情報デマが広まるとは想像できず、科学的な知識の欠落も想像以上でした。mRNAを用いたワクチンが存在していることは、知っていた人も少なくありません。でも、もしそこにどのような遺伝学や科学的な作用が関係しているのかまで知らなければ、ただ怖がって不安感が募るだけです。これは自分自身にどのような影響をおよぼすのだろう? 遺伝学の正しい知識なしには、その正しい答えを導き出せません。多くの人々が懸念や恐れを抱くのも理解できます。とはいえ、それが膨大な人数のワクチン拒否にまでつながってしまうのです。mRNAは、人の遺伝情報(DNA)の書き換えまで行ったりはしないという科学的根拠が存在するのに、これは本当に残念です。

もちろん、子どもたち向けのワクチン開発には、多大の障害が存在します。自らも小児科医として治療に携わっているので、その障害の大きさはわきまえています。とはいえ、ウイルスが子どもたちの間で蔓延し、それがパンデミックの収束を遠ざけています。もし子どもたちの間で感染が拡大し続けるなら、結局のところ、大人の間でもブレイクスルー感染が続いていくことになるからです。

米国内のみならず、全世界で毎日のように新型コロナウイルス感染症に起因する死亡が異常なペースでは報告されないようになるとき、パンデミックは終わりを迎えたことがわかるでしょう。もし世界のどこかで感染拡大が続いているならば、やはりパンデミックは終わったとはいえません。これは、あらゆる感染事例をなくさなければならないという意味ではありません。やはり現実的なのは、免疫の獲得ウイルスの変異により、この感染症が、ただの風邪季節性インフルエンザのようになってしまう展開です。ずっと気をつけなければいけませんが、それは冬がやってくる度にワクチンを接種したりすることで、これほど多くの人がなくなっていったりはしないという状況を迎えるようになるでしょう。

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