仮想空間でエンタメはどう変わる?落合陽一らによる「ソードアート・オンライン」トークのなかに、その答えが見えてきた

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  • author Jun Fukunaga
仮想空間でエンタメはどう変わる?落合陽一らによる「ソードアート・オンライン」トークのなかに、その答えが見えてきた
Photo: Sony

聞こえてくるのは、フィクションの世界に現実が迫る足音。

2021年9月23日〜9月26日までの4日間、オンラインイベント「UNLOCK with Sony」が開催。未来を担うクリエイターのクリエイティビティと、ソニーのテクノロジーを掛けあわせた多様なコンテンツについて、登壇した様々なゲストがトークを繰り広げました。

この日のテーマは、「仮想空間が拡げるクリエイティビティの可能性」。世界的人気コンテンツ「ソードアート・オンライン(SAO)」を軸に、メディアアーティストの落合陽一さん、ゲームAI開発者の三宅陽一郎さん、クリエイティブディレクターの天野清之さん、SAOアニメシリーズプロデューサーの丹羽将己さん、SAOゲーム総合プロデューサーの二見鷹介さんが、仮想空間とクリエイターのエンゲージメント、仮想空間エンタメの可能性について語りました。

Video: Sony - Stories / YouTube

SAOの世界では、2022年に世界初の「VRMMORPG(VR大規模多人数同時参加型オンラインRPG)」がスタートしていますが、その世界まであと1年と迫ったのが今現在、我々が暮らす現実世界です。そんな現実世界でも、最近ではオンラインゲーム内で人気アーティストがライブを行ったり、映画の上映会が行われるなど、仮想空間を利用したエンタメは徐々に誰もが楽しめるものになりつつあります。

しかし、作中で描かれた"完全なる仮想空間を謳歌"できるようになるには、現在のテクノロジーだけではまだまだ難しいのも事実。トークセッションは、まずSAOの世界に没入するために必要なテクノロジーについてからスタート。

SAOの世界のように大人数が同時に楽しめるVR空間の実現には、通信技術が現在の5Gから7Gまで進化する必要があるとのことですが、一方で同時にたくさんの人が体験しているという体感値に関しては、「現在のテクノロジーでもコンテンツの見せ方次第で作れる」と天野さんは述べました。

また、SAOには様々なAIキャラも登場しますが、三宅さんはAIがトップダウン型からボトムアップ型へ推移中である現在の現実世界の例を挙げ、「ニューラルネットワークやディープラーニングを使ったボトムアップ型のAIキャラクターが登場したことは、今の現実世界とぴったり同期する」と述べていました。落合さんも「現実が追いついてくる速度とマッチしているところがSAOのおもしろさ」と、この関係性について述べていましたが、どうやら思っていた以上に現実世界は、SAOの世界に近づきつつあるようです。

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Screenshot: ギズモード・ジャパン

続いて、トークセッションでは来る11月20日より、仮想空間で開催される「ソードアート・オンライン -エクスクロニクル- Online Edition」についても。このイベントは以前、東京・京都でリアル開催された「ソードアート・オンライン -エクスクロニクル-」のオンライン版で、スマホやPC、VRヘッドセットで体験することができます。

Online Editionでは、SAOファンにお馴染みの「はじまりの街」などもVRで再現されますが、ユーザーはアバターを操作して、手を振ったり、音声通信による会話なども可能。まさに今あるテクノロジーでSAO的世界を楽しめるコンテンツになっています。


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Screenshot: ギズモード・ジャパン

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Screenshot: ギズモード・ジャパン

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Screenshot: ギズモード・ジャパン


ちなみにOnline Editionでも、現実世界では設置コストがバカ高い巨大4面シアターが登場しますが、こういった展示物を設置するにしても仮想空間にはメリットがあります。

「最近はVRの“展示空間としての可能性”が広がりつつある。例えば、美術館に展示する時の予算は限られるため、作品の展示のためにソニーの「Crystal LED」のような高額なディスプレイをいくつも持ってきてしまうと予算は膨れ上がってしまう。でも、(今までは)そうまでしてやっとお客さんが体験できたものも、VRだと無限にディスプレイを置くことができるし、施工業者も必要としない。

また、テクスチャーを切り貼りするのもゲームの素材から直接持ってくるなど、オンラインから借りてくることもできるので非常に作りやすい。スケール感や空間の広さなどの面でも、VRでは、リアルよりも遥かにクリエイターが思い描くイメージに近いものを作ることができる(落合さん)」

落合陽一さん
Photo: Sony

「VRだと目線にあわせて展示した絵が動き出したり、大きくなったりするようなおもしろいこともできる。そういった目線トラッキングをリアルでやるのはすごく大変だが、VRだとほんのちょっと技術を入れるだけでできるようになる(天野さん)」

クリエイターにとって、これまで作品の制作や展示コストのような物理的な制限が、自分のクリエイティブの実現を阻む要因だったかもしれません。しかし、仮想空間であれば、そういった制限に縛られることなく、本当に作りたいクリエイティブを実現させることができる。

そんな可能性が実際に高まりつつあるのが仮想空間エンタメの現在地なのです。


トークセッションの後半では、SAOの影響でこの道に入ったというソニーの若手エンジニアを迎えての質疑応答コーナーも設けられていました。

Q1. XRでどんな人に注目が集まるようになるのか、また、どんな人が才能を開花させるのか?

この質問について、落合さんは、「XRだと空中に金魚が浮くなど、フィジカルでは置けなかったものを空中に置けるため、非常にクリエイティブ。それによってパブリックアートが変わる。ただ、それにはスマホだけではダメでヘッドトラッキングが付いている、かつ、ARである程度解像度のあるものであれば、その可能性を感じる」と回答。

天野さんは、それとは別の観点から「物理法則がない仮想空間に、物理法則を持たせたるとおもしろくなる。仮想空間では現実では不可能なこともできるし、仮想空間で学んだことを現実にうまく置き換えることができるようにれば、それまで現実ではできなかったことができるようになった人たちが、思いもしなかったものを作り出せるようになることで、双方向性が生まれる」とも。


Q2. VRソーシャルでは、ユーザーは自分の好きな格好のアバターを作るなど、現実以上に「総クリエーター社会」になりつつあるが、仮想空間でのファッションやアートは今後どのように発展していくと思うか?

天野さんは、昨今話題のNFT(=「Non-Fungible Token(非代替性トークン)」の略。データ管理にブロックチェーン技術を活用している)の観点に着目。「NFTの、“誰が作ったのか”をきっちり管理していく仕組みには希望も感じているが、ある意味では絶望になる可能性もある。それは、過度の管理によって創作の幅が狭まってしまうような事態が起きること。創作の幅を狭めないようにするための仕組みやルールを設けられるかによって、今後の仮想世界での創作の幅が広がっていくと思う」

また落合さんは、仮想空間でのモノづくりにおいて、「デジタルファブリケーション(=デジタルデータをもとに創造物を制作する技術)だと、手の技の修練なしでモデル化した制作技術が使えるため、今までモノ作りが苦手だった人でも機能や形を作れるようになる。それが仮想空間の中にも広がって、その中で作ったものでお金を稼いで生活できる人が増えていくといい」と、その新たな可能性について言及しました。

なるほど、人は何かを作れる場所に行くとモノを作りだすということか。そういうシステムやツールが今後、実装されるごとに、仮想空間ではさらにユーザーの総クリエイター化が加速していきそうです。


SAOは、現在の世界から先行したテクノロジーが存在する世界を描くことで、未来のエンタメのビジョンを示してきました。しかし、そのビジョンにインスパイアされたテクノロジーにより、現在のエンタメはSAOの世界に迫りつつあります。

今回のトークセッションで語られたようなテクノロジーがさらに発展していけば、近い将来、感覚までも仮想空間にフルダイブできる日がやってくるはず。そうなれば人間のクリエイティブの“もうひとつの可能性”である仮想空間発のエンタメや、その担い手であるクリエイターがますます多く生まれていくことになるのでしょう。

Source: UNLOCK with Sony

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