iPhoneのプライバシー強化でSNS各社の収益が1兆円オーバー消える

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iPhoneのプライバシー強化でSNS各社の収益が1兆円オーバー消える

こう聞かれたらそのまま上のほうタップしちゃうもんね…。

4月に「アプリのトラッキングの透明性(ATT)」と称してAppleがプライバシー方針を大刷新! こんな風に個人情報の追跡を許可するかどうか、アプリごとにユーザーにお伺いを立てるスタイルになったのはみなさまもお気づきのことと思います。

個人情報保護の観点からは非常にすばらしい動きなのですが、使う人の趣味・嗜好・興味範囲が追えなくなった開発元は悲惨で、たとえば大手SNSのSnapchat(Snap)、Facebook、Twitter、YouTubeの4社をあわせると、今年下半期の売上減は推定98億5000万ドル(約1兆1228億円)にも達しているみたいですよ!!?

これは、Financial Timesがテクノロジー調査会社Lotameの試算をもとに報じた数字。なんでも今年第3、第4四半期の4社の売上は平均マイナス12%になるんだそうな。

特に影響が大きいのがスマホ頼みのビジネスモデルを展開中のSnap。そして、売上の98%近く(Statista調べ)をターゲティング広告に頼るFacebookです。

SNS各社にとってはレクイエム
Apple

Facebookは半年で1兆円近くの減収?

これだけでも十分想像を絶する影響規模なのですが、まだまだ生ぬるいわ〜と言ってる専門家もいて、同誌が取材したアドテックコンサルタントのEric Seufertさんなどは「Facebook単体で今年下半期83億ドル(約9460億円)の売上が霧散している」と言っちゃってますよ。半年で1兆円。ひゃあああ…。

利用者の選択に委ねるアプローチが標準になれば広告主だってそれに合わせてビジネスモデルを変えていかなきゃならないだろうし、SNSはこれからますます苦しくなりそう。SeufertさんはFinancial Timesにこう語っていますよ。

「ATTの登場で、一部のプラットフォーム(特にFacebook)はマシンを土台から作り直さなければならない苦境に追い込まれている」

「新たなインフラ整備には最低でも1年はかかるというのが僕個人の感想。新しいツールとフレームワークをイチから開発して、テストにテストを重ねてやっと大人数向けに展開できるわけだから」

Appleは3ヶ月で2兆円超の広告収入

いっぽうAppleはというと、今年第3四半期の広告売上はアナリストの予想を7億ドル(800億円弱)も上回って、183億ドル(2兆円超)にも達してしまってます。3ヶ月で2兆円。なんという札束空中戦だ…。

「許可しない」を選んでも追跡が止まらないアプリもある

まあ、iOS 14.5以降も「許可しない」を選んで止まるのは端末を特定できる広告拡張子(IDFA)だけで、フィンガープリンティングやトラッカー企業までは止めらません。

事実、Washington Postがプライバシー保護ソフト開発元と共同で調べてみたら、一部のアプリは追跡がピタッと止まるということもなく、だいたい13%くらい減る感じでした。「追跡止まらないんだけど!」とAppleに報告したら「開発元に確認して対処する」という返事だったのに何週間経っても変わってないそうです。

IDFAをブロックするだけでも独占的と他社から不評なので、これ以上やると刺し違えるギリギリなのかもしれませんね。想像ですが…。

「許可する」を選ぶ変わり者は4%しかいない

気になるのは「許可する」「許可しない」の比率ですが、これまでのところやっぱり「許可しない」を選ぶ人が圧倒的に多く、OSのアプデでこの機能が解禁になった直後の数週間は「トラッキングを許可する」を選んだ米国内のiPhoneユーザーはわずか4%でした。

広告主がSNS離れ?

利用者のデータがとれないと、「男物のパンツを男女両方に表示しなきゃならなくて、それだけでも広告効果は半減」と言われますし、ターゲティングが思うようにできないとワンクリック得るのに2倍、3倍の出稿が必要で、費用も高くつきますよね。それで広告費をSnapやFacebook、Twitter、 YouTubeから引き上げてほかに振り分ける企業もぼちぼち出てきているみたいですよ。

つまり、広告費全体の予算規模は前年比でそんなに変わっていないのに、SNS各社のシェアが激落ちしているんです。この状況を、モバイル広告会社KochavaのCharles Manning CEOはFinancial Timesにこう整理しています。

「広告の出費が減ったのではない。動いただけ」「マーケターは結果が出るところにお金を落とすものだから」

決算報告は針のむしろ

10月下旬の第3四半期決算報告でFacebookのシェリル・サンドバーグCOOはAppleのポリシー改正の影響に言及し、こう詳細を報告しました。

「影響が出始めたのは第2四半期だったが、消費者サイドに浸透したのは6月下旬。第4四半期にはクリティカルマスに達した」

「結果、2つの課題に直面した。ひとつ目は広告ターゲティングの精度低下で、同じ広告効果を得るのに広告主側が負担する費用が増したこと。ふたつ目は、広告の成果を計測しづらくなったこと」

まあ、そうは言ってもFacebook(Meta)はプラットフォームもいろいろ持ってるし、多角経営なのでなんとかなりそうなのですが、そういうクッションがなくて厳しいのはSnapです。Appleショックが売上にモロに響いて、四半期決算報告の日には25%も株価が下落。最高ビジネス責任者のJeremi Gormanさん自身、CNNに「まさかこれほどまでの影響が出るとは予想以上だ」と声明を発表していますよ。

さらに世界的なサプライチェーンの問題も売上が予想を下回った原因だとも述べていまけど、これに関してはどのテックカンパニーも困ってます。年末商戦はこれまた針のむしろになりそうです…。

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