コロナ禍の巣篭もりで、DIYのゴーストガンが知らぬ間に広まっていて、実際に人が死んでいる

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  • author satomi
コロナ禍の巣篭もりで、DIYのゴーストガンが知らぬ間に広まっていて、実際に人が死んでいる
乱射で一番よく使われるAR-15アサルトライフルもこの通り。80%まで組み立てた下部レシーバーが115ドル(約1万3000円)で売っている
Image: Ghost Gunner

「小人閑居(人間暇をもてあますとロクなことがない)」とは言うけれど。

完成度80%未満の銃は銃と看做されないアメリカで、ネットでパーツを取り寄せて銃を家で手作りする人がコロナの巣ごもりで急増し、追跡不能、正体不明なゴーストガンが街にあふれ返る事態となっています。

80%ルールの抜け穴

完成品の銃は、もちろんアメリカでも銃所持許可証か狩猟免許を所持している人しか買えません。未成年者、犯罪歴、薬物依存症や精神疾患のある人は店頭で販売を断られます。ただ、アメリカの場合、完成度80%未満の銃は法的な銃器とは看做されず、ただの部品と同じ扱いですので、規制は一切かかりません。購入時のバックグラウンドチェックで身分証、許可証、免許の提示を求められることもないため、あちこちのネットショップから別々の決済方法、別々の送付先で買って、家で組み立ててしまえば追跡不能な未登録の銃=ゴーストガンの一丁あがり。人気DIYキット「Buy, Build and Shoot」(591ドル:約6万7500円)なんて21分もあれば組み立て終了という話もあるし、未成年者や正規のルートで買えないヤバい人でも作り放題できてしまうんですね。

どれくらいの勢いで増えているのか

全米で押収されたゴーストガンの数は、2016年から累計約2万5000丁にものぼります。特に顕著なのがポストコロナの増加率です。ロサンゼルスは昨年1年間でゴーストガン813丁を押収しました。サンフランシスコも2016年は押収件数6丁だったのに、2019年は77丁、2020年は164丁に跳ね上がっていて、今年は上半期だけで115丁というものすごい増えよう。ほかの地域でもゴーストガンで警官、学生、市民が死傷を負うケースが頻発しています。

カリフォルニア州全体で見ると、過去1年半に押収された銃のうち25〜50%はゴーストガン。知らぬ間に、巷にあふれる銃の4分の1ないしは半分が出所不明、買い手不明、追跡不能な銃になっていたのです。

急増の原因は?

マニア向けの銃DIYキットは90年代からあったのに、今ごろになってなぜ?と思ってしまいますが、やはり2020年のパンデミックを境に不穏な事件が増えたことで、銃のほうもエピデミック(爆発的流行)になってしまったようです。コロナのロックダウンで外部との接触が減って野放しになったこともこれに拍車をかけました。

コロナに加えて、アメリカは大統領選の混乱、警察とデモ隊の衝突もひどかったし、街では白昼堂々、店が襲撃されて大手薬局チェーンなどが続々閉店に追い込まれています。閑静な住宅街でもマスクの暴漢に家や車、個人が襲われるのが日常茶飯で、昼も夜もないゾンビランド状態。これまで銃を手にしたことのないアジア系の人たちまで自衛のために銃を求めるほどなので、需要のあるところ供給ありなんでしょうね…。前は暴力団の家宅捜索や密売組織の摘発で見つかるのが常だったのが、今は「銃のある家の子と喧嘩しただけで怖くなって、万一の自衛用にゴーストガン作って持ち歩いている」という感覚の子もいて、一般の家庭や移動中の車、職場、所持品にまで浸透してしまっている印象です。

誤射で死亡するケースも

銃大国アメリカにもけじめのようなものはあって、銃には鍵をかけて子どもの手の届かないところに保管しますし、銃を買い与えるときには射撃場で基礎を身に着けます。でも、ゴーストガンはそうした抑制も効きません。7月にはサンディエゴのアパートで、12歳の坊やが泊まりにきた友だち(15)の銃をいじってるうちに、うっかり自分に向けて引き金を引いて死亡する痛ましい事件も起こりました。これも後の調べでゴーストガンと判明しています。サンディエゴ署には今年、自家製銃器取締本部も設立され、10カ月足らずの間に昨年1年間の2倍に相当する400丁近くを押収済みだとNY Timesは報じているのですが…、こうした水面下の動きまでは把握できていないんでしょうね…。

違法化を叫べば叫ぶほど銃が売れるパラドックス

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Image: KTVU

全米に先駆けてサンフランシスコは違法化を推進。今月は州検事も州内3社の銃部品メーカーのうち2社に対し、連番記載を求める訴えを検事と共同で起こしました。バイデン政権も規制強化を最優先課題に掲げて取り組み中なのですが、規制を叫べば叫ぶほど「今しかない!ラストミニッツ!」と銃に走る人は増えるばかりです。

サンフランシスコ、カリフォルニアがダメになっても隣のネバダに行けば銃規制はザルだし、メールオーダーがダメになっても3Dプリントがあるので、現実的にはポイント・オブ・ノーリターンでもう引き返せないところまで来ているのかも…。

Source: Ghost Gunner, New York Times, San Francisco Examiner, People, KTVU

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