NASA、月面着陸を2025年まで延期。長官はジェフ・ベゾスと議会を非難

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  • author George Dvorsky - Gizmodo US
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  • たもり
NASA、月面着陸を2025年まで延期。長官はジェフ・ベゾスと議会を非難
この先の有人アルテミス計画で使われる、SpaceXの月面着陸船のイラスト
Image: SpaceX

長官ご立腹です

もはや誰も驚きはしませんが、2024年の実現を目指していたNASAの有人月面探査ミッションが延期されました。今回のリスケで女性と有色人種を含むクルーが月面に降り立つミッションは2025年へとずれ込み、NASAは各方面を非難しています。

NASAのビル・ネルソン長官は先日開かれた記者会見で延期の発表だけでなく、その原因についても語っていました。

連邦裁判所は先日、ジェフ・ベゾス氏のBlue Origin(ブルー・オリジン)社が月面着陸船の契約の件でNASAを相手取っていた訴訟を棄却。それについてネルソン長官は「アルテミス計画の前進を意味する」と述べた後、NASAは同計画のスケジュールを明らかにする準備はまだできていないと言ったものの、結局はスケジュールについて語り始めたのでした。

第1弾の日程はすでにご存じの通り。NASAがSLSロケットを初めて打ち上げることになるアルテミス1は、2022年2月12日に予定されています。高さ約101メートルのロケットは、宇宙船「オリオン」を搭載して組み立てが完成したばかり。まだいくつかのテストを実施する必要がありますが、NASAは来年初旬に打ち上げることに強い意欲を示しているようです。

ネルソン長官は、「宇宙飛行士たちをはるか宇宙の彼方へと連れて行く」アルテミス2ミッションのおおよその日程も言及。この有人ミッションは月には着陸せず周回飛行するもので、以前の日程は2022年4月でしたが、2023年5月へと変更されました。

そして人類が再び月面に降り立つという待望のアルテミス3ミッションは、計画されていた2024年ではなく2025年になるとも発言。改訂されたスケジュールは、月周回有人拠点「ゲートウェイ」の建設や2020年代後半に計画されている月面でのさまざまな活動など、アルテミスの後半の予定には影響を及ぼさないと補足していました。

延期になりそうだと思っていたので、アルテミス3が2024年に実現しなくてもあまり驚きはしません。とはいえ、その理由を聞くのは興味深いものでした。

ネルソン長官は前述のブルー・オリジンの訴訟に関して、「訴訟で7カ月近くも失ってしまい、それで(アルテミス)初の有人月面着陸が2025年以降へとずれてしまった」とコメント。NASAは訴訟が終わるまでは、法律の定めるところによりSpaceXと連絡を取ることが許されてなかったのです。そうは言うものの、SpaceXはNASAとのやりとりや報酬を受け取ることなしに月面着陸船の開発を続けていました。訴訟の7カ月間で何が失われたのかは、明らかにはなっていません。記者会見に出席していたネルソン長官と他のNASA高官らは、この件に関して具体的なことは何も発表しませんでした。NASAの有人宇宙フライトプログラムのリーダーであるキャシー・リーダース氏は、NASAがブルー・オリジンの係争で“保留”になっているにもかかわらず「SpaceXの面々が進展させ続けてた」と興味深い内容を打ち明けていました。

ネルソン長官は以前の議会が十分な予算を割り当てなかったと不満を漏らし、責任転嫁を続けました。彼はさらにトランプ政権時のアルテミスの計画が「技術的な実現可能性に基づいていなかった」と言い、前大統領を非難。実際、有人月探査を元々計画していた2028年から2024年へと前倒しにしたのは、トランプ元大統領のアイディアだったのです。延期の理由として新型コロナのパンデミック、サプライチェーンのトラブル、そしてハリケーン「アイダ」による損害も挙げられました(NASAのミシュー組立施設は8月に、甚大な被害を受けています)。

長官による「技術的な実現可能性」についてのコメントは、NASAが技術的な敗北を認めるのに限りなく近い発言でしょう。NASAはその点を認めるより、予算不足について訴える方を好みますからね。確かにブルー・オリジンの訴訟はアルテミス計画を遅らせたかもしれませんが、未完成の宇宙服など他の問題においてはベゾス氏を責めることはできません。この夏、監査がまとめたレポートによれば、「(宇宙服開発の遅れは)2024年後半での月面着陸を…実現可能ではない」ものにしたとのこと。

NASAのパメラ・メルロイ副長官は、オリオンにおける財政に関する最新情報を報告。宇宙船の当初の基準コストは67億ドル(約7630億円)でしたが、修正見積によって今では93億ドル(約1兆600億円)になったと述べていました。金額が跳ね上がりましたが、彼女は「SLSとオリオンにおける初開発の課題のほとんどが遅れています」とコメント。

ネルソン長官は記者会見の機会を利用して、議会に取り入ろうと揺さぶりもかけました。彼は「われわれはとてもアグレッシブかつ優れた中国の宇宙プログラムに直面している」として、中国が彼らのタイコノートを月に降り立たせる「可能性が高まり」つつあって、その実現は「思っているよりもだいぶ早く」なるかもしれないと発言。NASAが「月面着陸の競争相手に打ち勝つために、安全かつ技術的に実現可能な手法でできる限りアグレッシブになる」と宣言したのです。新たなスケジュールは十分な予算次第だとして、議会は2023年度のNASAの予算を増やす必要があると釘を刺していました。

もっと安全性の高いミッションにつながるでしょうから、1年の延期はおそらく良いことです。過酷な環境から宇宙飛行士たちを守る次世代型宇宙服のさらなる開発とテストにNASAが費やせる時間も増えますからね。有人探査の再開は1972年から待たれているんですから、 あと1年ぐらいどうってことありません。

Source: NASA

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