星の爆死をライブ観測。人類は「超新星爆発のロゼッタストーン」を手に入れた

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  • author George Dvorsky - Gizmodo US
  • [原文]
  • 山田ちとら
星の爆死をライブ観測。人類は「超新星爆発のロゼッタストーン」を手に入れた
Image: NASA, ESA, Ryan Foley (UC Santa Cruz), Joseph DePasquale (STScI) via Gizmodo US|6000万年前に超新星爆発を起こしたSN 2020fqv。乙女座の方角にある銀河内に位置する

星の最期を解き明かす。

6000万光年離れた宇宙の闇を照らし出した超新星爆発を、複数の望遠鏡がとらえていました。死にゆく星の姿をここまで克明に、しかもリアルタイムに記録できたのは史上初だそうです。

恒星の唐突すぎる死

その超新星爆発に与えられた名は「SN 2020fqv」。爆発寸前だったことはかなり前から科学者たちに知られていたのですが、2020年4月、なんの前触れもなく爆発しました

それを地球からたまたま観ていたのがカリフォルニア州サンディエゴにあるパロマー天文台の光学観測装置「ZTF(Zwicky Transient Facility)」、そして宇宙から観ていたのがNASAのトランジット系外惑星探索衛星(TESS)でした。この貴重な機会を逃すまい! とほかの天文台も続々と観測に加わり、最終的にはハッブル宇宙望遠鏡を含めた複数の望遠鏡が地上と宇宙からSN 2020fqvの最期を見届けました。

いくつもの独立した視点から超新星爆発の前、爆発そのもの、そしてその後を観測できたのはこれが初めてだそうです。もっとも初期の段階から多角的な視点でとらえられ続けた映像とデータは、超新星爆発の過程について理解を深める上で重要になってきますし、超新星爆発がいつ起こるかを予測するのにも役立ちそうです

死にゆく様をライブ観測

恒星の死を見届け、その死因について推察するのは簡単なことではないようです。仮に天文学者を犯罪現場捜査官にたとえるとすれば

これまでの超新星爆発の調査では、星が死んだあとに現場に駆けつけて、残された証拠からその星に何が起こったのかを推理するしかありませんでした。

と主任研究員であるカリフォルニア大学サンタクルーズ校のフォーリー(Ryan Foley)助教はプレスリリースで説明しています。

でも、今回は違いました。何が起こっているかをリアルタイムで観測できたわけですから。

SN 2020fqvは地球から6000万光年も離れているので、超新星爆発が実際に起こったのは今から6000万年前のこと。ですから本当の意味での「リアルタイム」ではないんですが、フォーリー助教の言わんとしていることはよくわかります。

Image: NASA, ESA, Ryan Foley (UC Santa Cruz), Joseph DePasquale (STScI) via Gizmodo US

SN 2020fqvは、乙女座の方角にある蝶の羽のように合わさったふたつの銀河「NGC 4567」と「 NGC 4568」に位置しています。これらの銀河は融合している最中で、いずれひとつになるのだそうです。

宇宙望遠鏡も大活躍

ZTFとTESSに続き、ハッブル宇宙望遠鏡がSN 2020fqvを取り巻く星周物質を観測し始めたのは爆発が始まってからたった数時間後のことでした。以降、2020年を通してこの星周物質がだんだんと薄らいでいく様子を克明に記録してきており、超新星爆発後の変化について新たな知見をもたらしています。

超新星爆発直後の密度の高い星周物質は、ほんの短い間しか見ることができません。だからめったに観測できないんです。しかも、いつもなら超新星爆発が起こって数日経ってから初めて観測し始めるのが常なので、今回の観測は余計に貴重なんですよ。

と興奮を隠せない様子で説明してくれたのは、論文筆頭著者であるポスドク研究員のティニャノント(Samaporn Tinyanont)氏。論文はイギリスの学術誌『Monthly Notices of the Royal Astronomical Society』に掲載される予定だそうです。

星の死を予測する

恒星が死ぬ間際に活発になることは以前から知られていました。たとえば、今後100万年以内に超新星爆発を起こすと予想されているベテルギウスもそうです。ただ、正確にいつ爆発するのかは事前にわからない場合が多く、予兆もはっきりしていませんでした。

今回の観測においては、爆発が起こる数日前から爆発後数週間に至るまで、TESSが30分おきにSN 2020fqvの姿を撮影していました。ハッブル宇宙望遠鏡も、超新星爆発が始まってから数時間後にはすでに稼働していました。さらに、1990年にさかのぼる過去資料も分析され、数十年に渡って死にゆくSN 2020fqvの姿が明らかになってきたのです。

では、この大量のデータから何がわかったのでしょうか?

ひとつは、複数の天文学的手法を用いて恒星の質量をより正確に計算できたことです。それによれば、爆発した当時、SN 2020fqvの質量は太陽の14〜15倍ほどでした。より正確な質量を把握することで、超新星爆発を起こしたときの恒星の物理的条件がよりはっきりしてきました。

さらに、プレスリリースでは今回の観測が「超新星爆発のロゼッタストーン」になり得ると表現されています。ロゼッタストーンとは同じ内容の文章が3種類の文字で刻まれている古代エジプトの石碑。これまで解読できなかった謎や隠されたヒントを解き明かす手がかりとなってくれる期待が込められてのたとえです。

今回の観測をもとに、超新星爆発の警告システムを構築できるかもしれません。恒星が普段とは違う挙動をし始め、だんだんおかしくなってくる。その段階ではまだ隠されている兆候にもっと注目すれば、恒星が爆発する前に何が起きているのかをもっと理解できるようになるかもしれません

とフォーリー助教は話しています。

観測技術の進歩により、今後も今回のように素晴らしいデータが手に入る機会があると思います。それらを解読することで、死にゆく前の数年間、一体恒星に何が起きているのか理解を進めることができると思います。

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