最近見たニュースの中で1番「えっ…? は?」ってなりつつ、1番ワクワクしました。
宇宙飛行技術開発を行うSpinLaunch(スピンローンチ)が、とある試作機の実証テストに成功しました。これだけいうと、昨今話題の宇宙ビジネスでまた打ち上げ実験かと思いますが、SpinLaunchに限って言えばぜんぜん違います。まず、打ち上げ方法が(誤解を恐れずに言うと)小学生のマンガみたいなんです。
ロケットを振り回して遠心力でぶん投げる
SpinLaunchは、そもそも従来の打ち上げ方法ではなく、新たな宇宙機打ち上げを模索している企業。今回、初の実証実験に成功した打ち上げシステムは、回転するアームの先にロケット*をとりつけ、減圧して空気抵抗を減らしたドラムの中でアームを高速回転、回転の勢いで貯めた運動エネルギーを離陸する力に用いるというものです。
*テストで用いられた機体は燃料を噴射しないので正確には「ロケット」じゃないんですが、ここでは便宜上ロケットと呼ばせてください。
創業者&CEOのJonathan Yaney氏も「クレイジーなプロジェクト」と言っていますが、(宇宙工学に詳しい人から怒られるのを覚悟で言うと)ロケットをグルグルグルグルぽーーーーーん!と回して飛ばすという方法なんです。
なんでしょう、例えるならソフトボールの上野選手が多めに腕を回して上に宇宙船を投げるような? 室伏選手がハンマーをロケットに持ち替えて頭上に飛ばすような?
実証実験で使用されたのは、想定されるマシンの1/3スケールのもの。また、ダミーとなるロケットにエンジンは積まれていませんでした。実際に運用するとなると、ロケットも重くなるので運動エネルギー(ぐるぐるによる遠心力)も強くしないといけないし、さらにロケット自体もその遠心力に耐えられる構造が求められます。今後、6ヶ月から8ヶ月の間に30回のテストフライトを予定しているということなので、実用化にむけ課題を1つずつクリアしていくのかと。
何がワクワクするかって、やっぱりグルグルぽーんの発想ですよね。
よく海外映画やドラマで「何もロケット科学じゃないんだから」とか、難しい話=宇宙工学という例えのセリフがあります。でも、SpinLaunchの発想は小学生でも理解できるグルグルぽーん。もちろんグルぽーんを成功させるには科学者しかわからない難しい話がいっぱいなんですが、でもスタートはグルぽーん。このグルぽーんで1人の小学生が宇宙に興味を持って宇宙サイエンスを志す素晴らしいきっかけになるかもしれないと思うと、すごくワクワクするし、胸がアツくなります。
ギズ編集部にも胸が激アツになった人が1人。以下、食い気味にリプしてきたリチャードのコメントです。
これマスドライバーっていう方式で、宇宙に行くためのコストをめちゃ削減できると期待されてる技術です。SF好きとしてはめちゃくちゃ感慨深い...。
なんというか、再利用可能ロケットがバスだとしたら、マスドライバーは電車って感じがします。宇宙時代幕開け感すごいですよね。
地球では大気が厚く重力が強いので、SpinLaunchのようにロケットの初速をアシストするシステムとして開発されていますが、月や火星では大気が薄く重力も弱いので、ロケットなしで宇宙に到達させられます。これからの宇宙時代でめちゃくちゃ大事な技術です。
あと、これはコスト削減のため運動エネルギーを回転させながら貯めていますが、コスト度外視で作れるのであれば、巨大な(全長数キロの)リニア電磁銃などで緩やかなカーブを描きながら加速させられます。するとGが弱いので人も乗れるはずです。
「回転で運動エネルギーを貯めて発射」の機構は富豪刑事の対空スフィアでも使わせてもらっているもあって、いまめちゃくちゃジーンと来ています。
こういう一気に語りたくなるテクノロジって、理解できてもできなくても、素晴らしいなって思います。あー、なんか今日はいい日だなー。
Source: SpinLaunch via CNBC