白亜紀の地図を塗りかえるかも。イタリアで発見された恐竜の化石がすごいワケ

  • 62,705

  • author Isaac Schultz - Gizmodo US
  • [原文]
  • 山田ちとら
白亜紀の地図を塗りかえるかも。イタリアで発見された恐竜の化石がすごいワケ
テティスハドロスの成体と2頭の子どもたち(イメージ画) Image: Davide Bonadonna via Gizmodo US

イタリアと言えばー?

パスタ、ワイン、洗練された芸術文化。決して恐竜の化石の産地として有名な土地柄ではありません。ですが、最近イタリア考古学史上最大の発見があったそうなんです。

なんでも、スロベニアとの国境に近いイタリア北東部の漁村で、白亜紀の恐竜・魚類・甲殻類・ワニの祖先を含む過去最大規模の化石群が出土したとのこと。その中には「ブルーノくん」と名付けられたひときわ大きなハドロサウルス科の恐竜の化石も含まれていました。

ブルーノくんのなにがすごいかって、これまで考えられてきた白亜紀の地中海エリアの地形を一新するかもしれないそうなんです。以下、詳しく見ていきましょう。

世紀の大発見

採掘現場のようす。地道な作業が続いています
Credit: ZOIC s.r.l. via Science X

化石群が発見されたのはヴィラッジョ・デル・ペスカトーレという海辺の町の石切り場です。1990年代初頭に最初の恐竜の化石が発見されて以来、新発見が相次いできました。石切り場の地層は非常に硬く、重機を使わないと採掘できないほどだとか。さらに、酸浴槽に沈めてまわりの石を溶かさないと化石を掘り出せないなど、なかなか大変な作業のようです。

それでも脈々と続けられてきた発掘調査がついに大当たりしたのは2021年前半のこと。2019年から2020年にかけて掘り出した化石の中から重要な標本がいくつも見つかりました。

数種類見つかった恐竜の化石のうち、一番多かったのが「テティスハドロス(Tethyshadros insularis)」というハドロサウルスの一種でした。すでに掘り出されたものが7体、さらにもう4体発掘できるかもしれないそうで、これまで考えられていたテティスハドロスの常識をくつがえす大発見となったそうなのです。

デカいやつがいた

ハドロサウルスはイグアノドンの仲間から進化した植物食恐竜で、あごの先がカモのくちばしのような形状をしているため「カモノハシ竜」とも呼ばれています。テティスハドロスが初めてヴィラッジョ・デル・ペスカトーレの石切場で発見されたのは15年前で、記念すべき第一号は「アントニオくん」と名付けられました。これまでの調査では、アントニオくんが生きていたのは今からおよそ7000万年前で、ハドロサウルス科の恐竜ににしては比較的小さいとされてきました。

上がアントニオくん、下がブルーノくん。大きさも肉のつき方も違います
Credit: ZOIC s.r.l. via Science X

ところが、今回新たに発見されたテティスハドロスの化石の中には、アントニオくんよりもさらに大きなブルーノくんがいました。

この「ブルーノ」と名付けられた新しい標本は、最初に発見されたアントニオよりずっと大きく、体重も相当あったと考えられます。組織構造の分析からは、アントニオが幼体であったこと、またブルーノがそれよりも成熟した個体であったことが伺えます

とメールで説明してくれたのはスペインのビーゴ大学で子生物学研究に携わるポスドク研究員のAlessandro Chiarenzaさん。さらに、

これまでは、テティスハドロスがほかのハドロサウルスに比べて小さかったのは「島嶼化(アイランド・エフェクト)」によるものだと考えられていました。島嶼化が進むと、もともと小さかった生物は巨大化し、逆に大きかった生物は矮小化します(たとえばインドネシアのコモドドラゴンや、更新世のマルタ島などに住んでいたとされるピグミーマンモスなど)。

しかし、今回アントニオを上回る大きさのブルーノが発見されたことで、アントニオがアイランド・エフェクトにより矮小化したハドロサウルスの成体ではなく、成長過程にある幼体だった可能性が示されたのです

とも説明しています。

その上でブルーノくんをほかのハドロサウルス科の恐竜とも比較してみたそうなんですが、やはり矮小化の効果は認められなかったそうです。

白亜紀後期のイタリアは陸橋だった?

ブルーノくん
Photo: P. Ferrieri (courtesy of Soprintendenza Archeologia, belle arti e paesaggio del Friuli-Venezia Giulla) via Gizmodo US

もしテティスハドロスがアイランド・エフェクトによって矮小化していなかったとしたら、当時のイタリアがそもそも島嶼ではなかった可能性が出てきます。

というのも、これまでは白亜紀後期の地中海エリアにはテティス海(古地中海)に浮き沈みする島々が点在していたと考えられていました。しかし、当時のテティスハドロスに島嶼化の影響が現れていなかったのであれば、テティスハドロスがユーラシア大陸から渡ってきてまだ間もなかったと推察できます。このことから、当時のイタリアは大陸間をつなぐ陸橋だった可能性も考えられるそうです。

しかも、ブルーノくんが生きていた時代は今まで考えられていたより1000万年前だったらしいこともわかりました。化石の年代測定はまだこれからですが、正確な年代がわかれば当時のイタリア、ひいては地球海エリアの地形をより正確に把握する手がかりとなりそうです。

もっとデカいやつがいるかも

興味深いことに、ヴィラッジョ・デル・ペスカトーレの発掘現場にはブルーノくんよりもさらに大きな標本が眠っているかもしれないそうです。

もうひとつ、まだ発掘されていない化石があります。そいつはもしかしたらブルーノよりもさらに大きいかもしれない

とChiarenzaさんは話しています。

それに、テティスハドロス以外にも翼竜や甲殻類、魚類、ワニの祖先、植物などたくさんの生物が保存されています。もしかしたらそのうち獣脚類の恐竜が完全体で見つかったりするかもしれません

と期待を寄せているそう。

考古学者にとっては宝の山のようなヴィラッジョ・デル・ペスカトーレ。これからどんな発見があるんでしょうか。この研究について詳しく知りたい方は、こちらの論文をどうぞ。

Reference: Scientific Reports, University of Bologna via Phys.org, 化石研究会

    あわせて読みたい