北極の海氷が解けると米西部の森林火災が深刻化しやすくなるって研究結果。解け続ける未来しか待ってないのに

  • author Kenji P. Miyajima
北極の海氷が解けると米西部の森林火災が深刻化しやすくなるって研究結果。解け続ける未来しか待ってないのに
2018年8月に起きたカリフォルニアの森林火災の様子 Image: Kevin Key&Slworking - Gettyimages

つくづく地球はあちこちがつながっていますね。良くも悪くも。

北極の温暖化は中緯度地域に気象災害をもたらすと考えられていますが、新たに北極の海氷が解けると米西部の激しくて大規模な森林火災が頻繁に起こるようになるという研究結果が発表されました。

毎年夏に北極の海氷が面積でみても体積でみても歴史的なペースで解けています。その一方で、近年米西部・北西部・カナダ西部で夏から秋にかけて歴史的な規模の森林火災が起こっていることもよく知られています。

しかし、このふたつの現象がつながっていることを示す研究はこれが初です。気候科学の進化の結果ですが、悲しいことばかりが明らかになっていきますね。

北極の海氷が解ける→米西部の森林火災が激化&頻発化

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Image: Zou et al. / Nature Communications

研究チームの分析によると、7月から10月にかけて北極の海氷が解けると、北極圏上空のジェット気流が通常よりも北上し、それが翌年の秋に熱く乾燥した空気を米西部まで押し上げるため(上図の赤い「H」が熱く乾燥した空気を運んでくる高気圧)、激しい森林火災が頻繁に起こりやすくなるそうです。

米西部では、観測史上もっとも大規模な森林火災20件のうち、半分以上が直近4年間に集中しています。北極の海氷面積も、直近15年がそのまま観測史上最も海氷が解けた15年になっています。確かに、研究結果を裏付けているように感じますね。

北極圏の温暖化と中緯度地域の気象災害の関連について研究を続けている専門家らは、これまで北極の海氷と中緯度地域の気象災害のつながりを示す根拠は薄かったことに言及したうえで、今回の研究結果は初めてハッキリとした具体的な根拠を示したと評価しています。こういう研究に辛口だった気候科学者まで「重要で大きな前進」と言っているのがなんともいえない気持ちにさせてくれます。

海氷が解け続ける未来しかないんだけど…

深刻なのは、この研究が悪化しかしない未来を示していることです。北極の温暖化は、他の地域よりも3倍速く進んでいて、年ごとに多少回復することあっても、海氷はずっと解け続けます。IPCCは最新の報告書で、2050年までに最低でも一度は夏に北極から海氷が消えると指摘しています。米西部はどんどん大規模で激しい森林火災が起こりやすい気候になっていくということになります。

気候変動対策として排出量を相殺するためのカーボンオフセット用に植えられた木が燃えているうえ、カリフォルニアの森林火災によって排出されたすすが北極圏の氷を解けやすくして温暖化の加速につながっている可能性も指摘されています。北極の温暖化の影響を受けて火災が激化、温暖化対策のはずの森林が燃え、また北極の氷が解けてみたいな負のサイクル。

森林火災による大気汚染も深刻化

森林火災は、山やその周辺の家屋や建物が燃えて終わりではありません。森林火災による大気汚染に起因する健康被害も今後は深刻化すると考えられています。そしてその影響をもっとも受けるのは、屋外労働者やホームレス、妊婦や子ども、高齢者などです。

消防士はもちろん、志願したカリフォルニア州の服役囚も1日数ドルで消火活動の最前線に立っています。米環境保護庁(EPA)もカリフォルニア州と気候変動の影響を受けて森林火災対策を進めていますが、どこまで温暖化のペースについていくことができるか、すっごく心配です。

Reference: Nature Communications, Carbon Brief, The Guardian, IPCC, The New York Times, Business Insider, The Sacramento Bee, US EPA

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