ソリューションを忘れずに。「気候変動」を「気候危機」と呼んでも人々の意識は変わらないんだってさ

  • author Kenji P. Miyajima
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ソリューションを忘れずに。「気候変動」を「気候危機」と呼んでも人々の意識は変わらないんだってさ
Image: John Englart/flickr

名前よりも中身が大事なんだね。

「気候変動」から「気候危機」「気候非常事態」へ

一昔前は「地球温暖化」か「気候変動」と呼んでいたのが、2019年に英ガーディアン紙が「気候変動」を「気候危機」「気候非常事態」「気候崩壊」と呼ぶようになってから、ニュースメディアで「気候危機」「気候非常事態」という言葉を見かけるようになってきました。

地球温暖化の影響で気象災害がより激しくより頻繁に起こるようになってきたのは「危機」と呼ぶにふさわしい状況ですし、それを受けて世界中で2,000を超える国や自治体が「気候非常事態」を宣言しています。

こうして見ると、メディアや政府、自治体が一体になって危機感も高まってきたような印象を持っちゃいますけど、肝心なのは、一般の人たちがそれをどう受け止めているかですよね。

ぶっちゃけ「気候変動」でも「気候危機」でも同じ

で、ラトガーズ大学とミシガン大学の研究者がその辺の事情を分析したところ、「気候変動」でも「気候危機」でも一般の人たちの受け止め方に変化はなくて、「気候非常事態」って呼んだら逆に引かれるという結果だったそうですよ。

研究者らは、米国勢調査の人口比率に合わせた2,333人に対して、「気候変動」「気候危機」「気候非常事態」というそれぞれの呼び方にどういう印象を受けるかについて聞き取り調査を行ないました。

中立的として知られるAP通信のロゴを用いた偽のツイートのタイトルに、「気候変動」「気候危機」「気候非常事態」のいずれかの呼び方を入れて参加者に読んでもらい、印象を尋ねたところ、「気候変動」と「気候危機」では、気候変動対策への支持やその効果を信じる姿勢に違いは見られず、「気候非常事態」に至っては拒絶反応が出て、ニュースの信頼性が落ちてしまったのだとか。

ソリューションを忘れずに

研究者は呼び方以外にも、森林火災や健康被害、経済損失などの「負の影響」と、植林や気候変動対策への投資、気候ストライキやアメリカの気候政策などの「解決方法」を混ぜて印象を尋ねています。その結果、負の影響に対しては拒絶的な反応を見せる一方で、解決方法を示す情報には希望を見いだして前向きな姿勢を見せたとのこと。政治的立ち位置の違いを超えて同じ傾向が見られたそうです。

論文執筆者のひとりであるラトガーズ大学のローレン・フェルドマン氏は、呼び方が一般人の捉え方に影響を与えていないことには驚きを示していますが、気候変動の脅威や負の影響、政治的な対立に焦点を当てた情報は、人々の心を閉ざしてしまう指摘しています。

フェルドマン氏は、人々が気候危機や気候非常事態という言葉に慣れてしまったことも、今回の結果の原因なのではないかと考えているようです。気候変動の影響を受けて起こっている気象災害の情報にも慣れちゃうんだから、言葉になんて簡単に慣れそうですよね。

著名な気候科学者で、気候コミュニケーターでもあるマイケル・マン氏は、恐怖をあおる言説は逆効果にしかならず、緊急性を訴える場合には必ずどうすればいいかをセットにしなきゃダメ警告しています。

気候が危機的状況なのは間違いありませんよね。カリフォルニアで毎年のように起こっている森林火災みたいな気象災害の激甚化を見ていると、非常事態と呼ぶのも納得できます。そう感じている人たちが強いトーンで警告を発するのも自然なことだと思うんです。国連事務総長が8月に発表されたIPCC第一作業部会の第6次報告書を「人類にとっての警戒警報」 と表現していたように。

でも、危機をあおったり、「もうダメだ」とか「何もできることはない」みたいな言い方だったり、化石燃料産業や政府にあるはずの責任を押しるような言葉を目にした人たちが、耳と目を閉じ口をつぐんだ人間になろうと考えてしまうのもわかります。また、1.5℃を目標に抑えるための期限を切るメッセージも、期限前には人々を「間に合わない」とあきらめさせたり、期限が過ぎてまた新たな期限を設けると危機感が薄れたり信用を失ったりするため、逆効果になり危険だと専門家は指摘しています。それでは気候変動を止めるための道のりがさらに険しく遠くなってしまいます。

気候変動をどう呼ぶかよりも、気候変動を止めるためにどんなことができるか。気候変動について家族や友人、知人と話す時や、SNSなどで発信する時には気をつけたいですね。

Reference: The Guardian, Climate Emergency Declaration, Climate Change, Grist, Michael E. Mann/Twitter, Asayama et al. 2019/Nature Climate Change