マダガスカルの飢餓問題に気候変動の影響はほとんど関係なかったからといって「じゃあいいや」で済ませてはいけない理由

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  • author Kenji P. Miyajima
マダガスカルの飢餓問題に気候変動の影響はほとんど関係なかったからといって「じゃあいいや」で済ませてはいけない理由
Image: Rijasolo/AFP - Getty Images

気候変動のせいで社会が弱くなることもあれば、気候変動せいじゃなかったおかげで社会基盤の弱さが可視化されることもあるんですね。

マダガスカルで2年連続の降水量不足による食料危機

インド洋のアフリカ沖にあるマダガスカル南部では、ここ2年間干ばつによる飢餓が深刻化しています。

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Image: World Weather Attribution

上のグラフは、マダガスカル南部における年ごとの降水量を表しています。グラフ右の矢印が指しているのは、1990年7月から1992年6月までと2019年7月から2021年6月までの降水量です。どちらも2年連続で雨期の降水量が少なかったために、深刻な食料不足に陥っています。

干ばつによる飢餓への気候変動の影響はほぼゼロ

近年、コンピュータと気候モデルの進化によって、気象災害が起こると早い段階で気候変動がどれくらい寄与していたかを分析する「イベント・アトリビューション」が行われるようになってきました。これは気候変動がある場合とない場合で、特定の異常気象が起こる確率を比較して、気候変動の寄与を数値化します。「気候変動がない場合よりも○○倍起こりやすくなっていた」という表現がよく使われます。

今回、ワールド・ウェザー・アトリビューション(WWA)がマダガスカル南部で続く干ばつによる飢餓にどれくらい気候変動が寄与しているのか、それとも寄与していないのかを分析したところ、気候変動の影響はほとんど見られず、ほぼ自然変動によるものという結論に至ったそうです。今回は自然現象だったとはいえ、現在の気候でも135年に1回の確率で同じ規模の干ばつに見舞われてしまうのだとか。

原因は貧困とインフラ不整備と新型コロナ

じゃあ、いったい何が飢餓の要因として考えられるのかというと、人口の約80%が農業に頼っているマダガスカル南部は多くの人が貧困レベルにあり、また灌漑などのインフラが整っていないため、長引く干ばつに耐えられるだけの社会基盤がないとのこと。そこに新型コロナの打撃が加わったため、イナゴやサボテン土とタマリンドジュースを混ぜたものなどを食べて飢えをしのがなければいけない状況に追い込まれています。

今回の干ばつによる飢餓では、国連食糧農業機関(WFP)のトップも気候変動の影響と伝えていましたが、気象災害が起こったときすぐに気候変動の影響と決めてしまうと、気候以外の社会基盤の弱さが見えなくなり、そのせいで気候変動の影響が出た時の被害が大きくなりかねないので、慎重に判断する必要がありそうです。

「気候変動じゃないならいいや」とはいかない

また、気候変動の影響がほとんどなかったからといって、「じゃあいいや」で済ませてはいけないそうです。今回の分析結果は「過去2年間の干ばつに気候変動の影響はほとんどなかった」ことを示しているだけで、「これからも気候変動は影響しないという意味ではありません

実際に最新のIPCC報告書によれば、マダガスカルが属する地域では、気温が産業革命前比で2度上昇すれば気候変動の影響が感じられる干ばつが起こるようになるそうです。現時点では各国が最新の目標を達成しても、2100年までに2.4度から2.7度上昇すると言われています。つまり、気候変動の影響は「まだ見られないだけで、これから気候変動が進めば、同じ規模の干ばつが起こったときに被害がもっと深刻化すると思われます。

当面は食糧援助が急務ですが、貧しい開発途上国には自力で気候変動に適応できるリソースが不足しているので、気候変動に耐えられる社会基盤を作るためには国際社会による支援が鍵になりそうです。

Reference: WWA, Thomson Reuters Foundation News, CBC, Climate Home News, David Beasley, WFP Chief/Twitter, BBC

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