なぜ多いの? シリコンバレーのCEOにインド系が躍進した理由

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  • author satomi
なぜ多いの? シリコンバレーのCEOにインド系が躍進した理由
Image: WION / YouTube

語学力と14億人パワーの成せる技?

Adobe(アドビ)、IBM、Palo Alto Network(パロアルトネットワークス)のCEOもインド系なら、Microsoft(マイクロソフト)のサティア・ナデラCEO(2014年就任)、Google(グーグル)のスンダー・ピチャイCEO(2015年就任)、Twitterのパラグ・アグラワル次期CEOもインド系。米IT業界でインド系エグゼクティブの活躍が目立つようになってきましたね!

ジャック・ドーシーからTwitter次期CEOに指名されたパラグ・アグラワルは、上のようにジャックに感謝の意を表明しています。ハーバード大出身、インド系財閥のアナンド・マヒンドラ会長も、同胞の出世をわがことのように喜んでいます(インド系エグゼクティブの活躍が止まらない状況をコロナのパンデミックになぞらえたその表現は、ちょっと過激過ぎてあまり感心はできませんが)。

生き馬の目を抜く米IT企業で裏方の実働部隊に甘んじることなく、したたかにトップに上り詰めるインド系。その強さの秘密についてBBCは次の点を挙げています。

競争とカオスに揉まれて育っている

「インドは生まれた瞬間から墓場までグラディエーターみたいな競争社会。これだけ多くの国民が入試から就職まで、インフラもキャパも十分にない環境で“特訓”される国は世界的にも珍しい。いわば競争とカオスが頭の柔らかい問題解決型人間を生む土壌なのだ。家庭より仕事を優先するのも、アメリカのオーバーワーク気味な企業風土に合っている」(Tata Sons元重役で「The Made in India Manager」共著者のR. Gopalakrishnan氏)

富と頭脳を極めた在米インド系移民400万人の人脈

アメリカのインド系移民400万人のうち約100万人はエンジニアや科学者で、今や米政府が発給するH-1Bビザの実に7割以上はインドのソフトウェアエンジニアの手に渡っています。もともと労働ビザ発行数は出身国で割り当てが決まっていたんですが、60年代の人権運動を境にスキルと家族の呼び寄せが優先になって、インドからの民族大移動が始まったとBBCは背景を解説してくれてます。

まず医師や博士が来て、次の波がエンジニア。アメリカに渡れるのは「カースト最上層、修士号取得者、高度技能ワーカー」という3つのふるい落としを経た「選ばれし民」であり、互いの交流、助け合いも盛んなのだといいます。古くから鉄道敷設労働者の波があった中国系はもっと層が厚いので、それも違いです。

議会対策

最近はGAFAM支配の弊害があちこちに出てきて、企業のトップが議会にしょっちゅう呼び出しを食らっています。シリコンバレーの金持ちと一般国民との格差は開くばかり。その距離感を縮める面でも、礼儀正しく、マイノリティーのインド系は適しているように思われます。槍が飛んできてもサンマが飛んできても動じないインド人持ち前の忍耐強さ、粘り強さ、打たれ強さであれば、この難局も乗り切れるのではないかというわけです。

学ぶ姿勢

Fortuneが紹介しているのは、マイクロソフトのナデラ流ビジネスです。ナデラCEOはそれまで社内を支配していた「know-it-all(なんでも知っている)」という全知全能の世界観を、「lean-it-all(なんでも学べ)」という姿勢に置き換えることで風通しを良くしました。重役会議で声を荒らげたり、怒りを露わにするのはプロフェッショナルではないという考えを明確に示すとともに、自身もメールや発言で怒りをぶちまけることは決してしません。こうして社長室で灰皿や椅子が飛ぶこともなくなり、社員が気持ちよく働ける環境作りに励むトップの下、マイクロソフトの評価額はCEO就任時の5000億ドルから2.5兆ドルに躍進。世界の頂点に復活を果たしました。いやあ…半沢直樹のドラマなんか見せたら卒倒しますよね。

英語力

そしてもちろん忘れちゃならないのが高い語学力。競争&カオス、在米エリート人脈、謙虚さ、学ぶ姿勢だけで出世できるなら、中国系エリートだって負けちゃいないのに、なぜか中国系は上に行きにくい。これは中国とアメリカが険悪という政治的背景もあるかもしれませんが、やっぱり英語力大きいですよね…と、有能な中国系GAFAM社員が言ってるのをよく耳にします。

アメリカで出世するのが最良解なの?という疑問の声も

このCEO就任ラッシュについて、「そんなに手放しに喜んでいいことなの?」と疑問を投げかけているのはインド系メディアのWION。インド政府と米企業が揉めるたびに、アメリカに渡ったインド人が米企業CEOとしてアメリカの国益を代表してやってくる状況をあまり快くは思ってない様子です。

Video: WION / YouTube

「シリコンバレーで中国生まれのCEOは何割いる? ゼロですよ、ゼロ。なのに中国ではスタートアップの30.8%はユニコーン(評価額1ビリオンドル=約1100億円超えの振興企業)で、その割合は米国に次ぐ世界第2位です」と指摘。グーグルのピチャイCEOがインド政府と法廷で争ってるのを引き合いに出して、「Android OSの支配力をテコに、インド国産スマホにグーグルのアプリをプリインストールするように求めたり、インド国内の競争を阻害して競争法に違反したり。それもこれもみんなトップで指示しているのはスンダー・ピチャイだ」と語っています。

アメリカ企業のために尽くすのもいいけど、そのあり余る才能をもっとインドのために使ってよ、という気持ちはわからなくもないですよね。インド系の活躍は誇らしい反面、インドを敵に回すインド系CEOには複雑な思いがありそう。当のインド系CEOたちのなかにも葛藤がありそうです。

日本で移民が企業のトップに立つケースは多くありませんし、それはほかの国も同じ。米国とインドが特別なだけで、米中が険悪になるほど米印が緊密になる、というのはあるかもしれません。

Source: BBC, Fortune, WION

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