東芝、シャープ、三菱電機、パナソニックに聞く「調理家電のライバル製品、ほんとのところどう思ってる?」:メーカーさんいらっしゃい!

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  • author 三浦一紀
東芝、シャープ、三菱電機、パナソニックに聞く「調理家電のライバル製品、ほんとのところどう思ってる?」:メーカーさんいらっしゃい!
Photo: 三浦一紀

買い替えを考えている方、必見!

ギズモードの名物企画「ガジェットメーカーさんいらっしゃい!」が帰って参りました! ヒューヒュー!! 同業他社の方々が一堂に会して、自社製品のアピールだけではなく他社製品にも鋭く切り込んでいただくこの企画。字面だけ見るとギラギラした感じですが、実際は和気あいあいとした企画です。

今回のお題は「ハイテク調理家電」。料理を楽にしてくれる、なんなら全自動で料理をおわらせてくれる、そんな家電ないすかね...? とメーカーさんに連絡したところ、集まりました4台の最新オーブンレンジ

そう、いま料理を楽にしてくれるのは、ハイテクオーブンレンジなのです。

というわけで、ハイテク調理家電あらためハイテクオーブンレンジの回、はじまります!

オーブンとレンジを組み合わせたまったく新しいキッチン家電

もう使っている人には常識でしょうが、オーブンレンジはその名の通り1台でオーブンとしても電子レンジとしても使える家電...というのは昔の話。各社の最新モデルはオーブンとレンジ(+α)を組み合わせ、高度に制御・連携させることでさまざまな調理をこなす、じつは新種のキッチン家電なのです。

今回、開催にあたりメーカーさんから各製品をお借りして、実際に調理をしてみました。使う前は「家にレンジとオーブントースターがあるから間に合ってるかな」なんて思っていたんですが、試用後には「私は・いま強烈に・最新オーブンレンジがほしい!」となりました。これは各メーカーの技術とアイデアが投入された、最先端のキッチンガジェットなんです。

ということで、さっそくメーカーさん、いらっしゃい~!

東芝ライフスタイル: オーブンレンジ 石窯ドーム ER-WD7000

冷蔵庫や炊飯器といった「家電」を日本で初めて製品化、人々のライフスタイルに変化をもたらした東芝。東芝ライフスタイルはキッチン家電や洗濯機、冷蔵庫、エアコンなどを手掛ける生活家電専業メーカーです 。

ご担当者はキッチン・リビング事業部 キッチン商品部 商品企画担当の初川嘉一さん。

シャープ:ウォーターオーブン ヘルシオ

「水蒸気で調理する」ウォーターオーブン「ヘルシオ」を商品化し、高機能オーブンレンジの先駆けとなったシャープ。ヘルシオブランドにはほかにも「ヘルシオグリエ」や「ヘルシオ ホットクック」があり、調理を自動化できるプロダクトが複数あります。

ご担当者はSmart Appliances & Solutions事業本部 国内スモールアプライアンス事業部 調理商品企画部 課長の川尻 百恵さん。

三菱電機:レンジグリル ジタング

家電製品からエレベーターといったインフラ、はては宇宙産業まで手掛けるのが三菱電機。キッチン家電のラインナップは冷蔵庫や炊飯器からビルトイン式のIHヒーター・食洗機などなど幅広いですが、中には食パン専用トースターという尖りまくった製品もあります。

ご担当者はレンジグリルの開発・製造元である三菱電機ホーム機器株式会社 家電製品技術部 家電計画グループ グループマネージャーの吉川秀樹さん。

パナソニック:スチームオーブンレンジ ビストロ NE-BS2700

ギズモードでパナソニックといえばカメラ・オーディオの話題が多いですが、総合家電メーカーとしてもメジャープレイヤー。カバー範囲が広く、スチームオーブンレンジで参戦です。

ご担当者はキッチン空間事業部 調理機器BU 商品企画部 電子レンジ商品企画課 主務の井上広美さん。

今回ご参加いただいたのは、以上の4社。順番はくじで決めました。

ルールはシンプル。「オススメのオーブンレンジについてアピールしてください」。それだけです。ではさっそく、スタートです。

本物の石窯を参考にした東芝ライフスタイル「石窯ドーム」

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ギズモード・ジャパン編集部(以降ギズ)本日はよろしくお願いします。トップバッターは東芝さんです。まずは私が試用で作った「中華風スペアリブ」をご覧ください。

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中華風スペアリブ。レシピはこちら
Photo: ギズモード・ジャパン

ギズ:僕、スペアリブは初めて作ったんですけど、普通にできてしまいました。

初川さん今回使用していただいた機能は「石窯おまかせ焼き」という機能になります。おいしかったですか?

ギズ:それはもう。会社のみんなでおいしくいただきました。

初川さん(東芝)上手に作っていただいてありがとうございます。弊社のオーブンレンジは「石窯ドーム」という名前で展開させていただいております。本物の石窯のように熱の回りをよくして、高温の調理を楽しんでいただこうというコンセプトで、2009年に商品化させていただきました。今年で12年目になります。

我々はオーブン調理をメインに訴求しているのですが、残念ながら日本ではあまりオーブン調理に慣れていない方が多いんです。フライパンだと「強火で3分、弱火で2分でできあがり」という説明書きを見ただけで簡単に調理できるんですが、「オーブンで調理する」となると皆さん固まってしまうんですよね。

その理由としては「指定の分量以外ではうまくいかないんじゃないか」とか、「何度で何分焼けばいいのかわからない」とか、いろいろ障壁が多いんです。ほんとうは簡単に使えるのに、先入観から使っていただけないという傾向があります。

そこで、温度や時間、分量を全然気にせずに「とりあえず角皿に並べてオーブンの中に入れて調理をスタートすれば、おいしいオーブン料理が誰でも楽しめますよ」というコンセプトで開発したのが、この「石窯おまかせ焼き」です。まずはこれでオーブン調理に慣れていただいて、それからいろいろな機能を使っていただければいいかなと考えています。

ギズ:僕が今回使わせていただいて一番気になったのが、やっぱり天井の形なんですよね。丸いドーム状になっているんですが、これはどういう効果があるんですか?

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庫内の天井が微妙にカーブしてます。

初川さん(東芝)このメンバーなので包み隠さずお話ししますが(笑)、昔々、私がある本を読んでいたら、ピザを焼く石窯づくりの名人のお話がありまして。あの石窯の直径と天井の高さにはひとつのルールがあって、あまり大きすぎると熱の回りがよくないそうなんです。

だから最適な直径と高さにすると、中の熱い空気が非常によく対流するということでした。それを読んでなるほどと。熱い空気は上に上がっていくじゃないですか。その熱い空気をうまく対流させるためには、天井を丸くしたほうがいいよねというところがスタートです。これは当社だけですね。

ギズ:空気を対流させるために天井が丸くなっているんですね。なるほど。あとは、調理をするときに材料をトレーで浮かせて入れますよね。底面に直置きではないのは何か理由があるんですか?

初川さん(東芝)これは各社さん一緒なんですけども、私どもは熱風循環方式というタイプのオーブンレンジとなっています。背面の中央にある小さい穴が、空気を吸い込む入口となっています。その周りにヒーターがありまして、ヒーターで熱した空気が上と下の吹き出し口から出てきます。

角皿は、その熱い空気をちょっとずらして配置するという形になっています。この方式は、シャープさん以外は各社同じような考え方に基づいて作られています。この方式にすると、角皿2段、同時に焼き物ができます

上下にヒーターがあるオーブントースターだと、1段しか調理できないんですが、こういう熱い空気を循環させるタイプだと2段、業務用だと3段以上もあるんですが、一度にたくさん調理ができます。

ギズ:ありがとうございます。そのほかに特殊な工夫などありましたら、お話できる範囲でお願いできればと思うんですが。

初川さん(東芝)それではせっかくなので。庫内の表面なんですけど、当社はセラミックコートという特殊なコーティングをしています。しかも粒子が非常に小さい微粒子タイプのコーティングを使っているので、汚れが粒子間に入りにくくて取れやすく、お手入れがしやすいという特徴があります。角皿もクッキングシートなどを使わなくてもパンがこびりついたりしません。お餅をそのまま置いて焼いていただくこともできますよ。

ギズ:オーブンレンジの中の掃除って意外と面倒ですからね。それはありがたい。他のメーカーさん、何かあればどしどしツッコんでください!

大きな液晶を搭載。しかし温度対策がたいへん

川尻さん(シャープ)昨年モデルチェンジされて、すごく液晶が大きくなって見やすくなったなと拝見したのですが、その辺りで何か工夫されたところとかありますか? インターフェイスもスマホの操作性にすごく近づいた印象です。

初川さん(東芝)他のメーカーさんの製品はドアの横に液晶パネルがあるなか、弊社だけが液晶パネルがドアの下にあったんです。やはり目線から遠いということで、同じサイズの液晶を使っていながら小さく見えるという意見も頂戴していたので、今モデルは液晶パネルを横側に配置しました。そのときに、せっかく横に配置したんだから、他社さんよりも大きくしたらより大きく見えるかなと思いまして、採用しました。

一番苦労したのは、温度対策ですね。弊社はオーブンの温度が非常に高いので、横に液晶パネルを配置すると熱の影響を受けやすくなるんです。

庫内の最高温度は350度!

ギズ:東芝さんのオーブンは庫内温度が高いんですか?

初川さん(東芝)はい。オーブンレンジは各社の訴求方向が結構違ってまして。弊社はオーブンの温度が350℃ということをメインに訴求しています。

ギズ:その熱を液晶パネルやコンピューターに伝えないようにいろいろ工夫しなければならないと。

初川さん(東芝)そうですね。冷却はどうすればいいのか、温度対策はどうやるかというのは、いつも弊社の商品開発では一番ネックになります。毎回、技術部から「350℃やめて」という意見が出てくるんですが、やはり一番のウリなのでやめられないんですよね(笑)。そこは苦労しながらなんとか商品化しているというのが実態です。

吉川さん(三菱)参考に教えていただきたいことが1つ。IoT機能でスマホのアプリからいろいろ操作ができるよう設計されていますが、スマホでできることの内容を教えていただけますでしょうか。

初川さん(東芝)パナソニックさんとシャープさんを前にして恥ずかしいんですけど、基本的にはオーブンレンジにおいて、アプリを使った機能でみなさん期待しているのはレシピ検索なんです。

なので、基本的にはレシピ検索や献立作りといった機能をメインにしております。あと他社さんと若干違うかなというのは、コロナ禍で在宅の方が増えていて、運動不足になりやすくなっています。そこで、栄養素をベースにしたレシピ検索もできるようにしているところですね。

吉川さん(三菱)たとえば、検索したレシピをスマホからオーブンレンジに転送して、そのまま調理ができるということはできるんですか?

初川さん(東芝)はい。それは他社さんと同じですね。

オーブンレンジなのに奥行きが40cmを切ってる!

井上さん(パナソニック)東芝さんのオーブンレンジは350度の高温にもかかわらず、奥行きが薄いところがすごいなと思っているんですが、ご苦労などありましたら教えていただけますでしょうか。

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ハンドル部分を除けば40cm弱。

初川さん(東芝)奥行きは39.9cmなんですが、この薄さを実現できたポイントは、熱風を循環させるファンをダイレクトドライブ(モーターで直接ファンを回す方式)ではなく、ベルト駆動方式にして本体の下に移動させたことが一番大きいですね。ダイレクトドライブには振動が少ないとかトルクが高いとか、いろいろなメリットがありますが奥行きが厚くなってしまいます。いかに振動や騒音を抑えながら、かつトルクもある程度稼ぎながら、この薄さに収めるのが一番たいへんでしたね。

ギズ:ベルト駆動方式のほうが薄くできる?

初川さん(東芝)先ほどの庫内にあった羽根が、熱風を循環させる羽根なんですけど、あの後ろ側にモーターが付いています。モーターがあればその分後ろが出っ張るんですね。一般的に庫内の奥行きが30cmから33cmくらいだとして、扉の厚みを入れるとだいたい40cmくらいになります。

さらにモーターの厚みで3〜4cmあるので、だいたいオーブンレンジは45cmくらいの奥行きになります。一般的なキッチンのモジュール寸法が45cmなので収まりますが、この場合ハンドル部分が出っ張ってしまいます。

ギズ:なるほど、キッチンの出っ張りは少ないほうが安全そうですね。

初川さん(東芝)そうなんです。だから奥行き全体を45cmのキッチンモジュールに収めようというのが当時の考えで、熱風ファンのモーター部分をどこかに持っていかなければならない。そこで一番簡単なのが、ベルト駆動方式にしてモーターを下に配置すれば、その分奥行きを削れるので、その方式で40cmを切る奥行きを実現しています。

ギズ:ベルト駆動方式を採用しているのは、東芝さん以外にもありますか?

吉川さん(三菱)当社(三菱電機)もベルト駆動方式ですね。

オーブンレンジの横の出っ張りは何?

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ヘルシオ(右側)は壁との間隔を空けるための出っ張りが目立たないデザイン。機能は同じ。

ギズ:そういえば、今製品を見ていて気がついたんですけど、どのオーブンレンジにも側面に丸い出っ張りがありますよね。シャープさんのヘルシオには付いていませんが。これは何でしょう?

初川さん(東芝)いいところにお気づきで。オーブンレンジは消防法の対象になっているんです。消防法では、木の壁に製品が何cm近づいたときに燃えないようにしましょうねという基準です。そのため、壁から何cm離して設置すれば安全に使えるということを取扱説明書に記載する必要があります。

ただ、こういったハイエンドのオーブンレンジに関しては背面も両側面も壁にピッタリ付けても安全な仕様になっています。とは言いながらも、空気が流れるスペースを5mm程度は取ったほうがいいということもあって、そのスペースを確保するためのスペーサーをどこかに設けています。

ギズ:シャープさんのヘルシオの場合は...あ、本体下にある出っ張りがスペーサーなんですか?

川尻さん(シャープ)はい。そのためのものになります。

ギズ:シャープさんだけこの形というのは何か理由があるんですか?

川尻さん(シャープ)機能というか、そこはデザインのこだわりです。下に持ってきて目立たないようにするという配慮です。

ギズ:これはちょっとしたトリビアですねー。では、そのままシャープさんのヘルシオのお話をお伺いしたいです!

プロの調理方法を家庭で楽しめるシャープ「ヘルシオ」

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ギズ:2つのレシピを同時に調理できるということで、焼肉チャーハンとナムルを同時に作りました。やはりそこが特徴的に感じました。

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焼肉チャーハン&たっぷり温野菜。レシピはこちら
Photo: ギズモード・ジャパン

川尻さん(シャープ)そうなんです。ヘルシオは2004年からやらせていただいております。現在はお使いいただいた ウォーターオーブンヘルシオと、水なし自動調理鍋のヘルシオ ホットクック、そしてウォーターオーブン専用機(トースター)のヘルシオ グリエという3シリーズがあります。

ヘルシオは、「水で焼く。21世紀調理器」ということで、電子レンジの「安い、早い、便利」というところに、「健康」「おいしい」という新たな価値を作りたいというところからスタートしています。

ヘルシオの技術は、業務用のスチームコンベクションオーブンで使われていた、過熱水蒸気技術に着目して、その業務用の技術を家庭用に応用したものです。最高温度は300度を実現しています。

初代ヘルシオは、従来の電子レンジのコモディティから脱却したいという思いがありまして、電子レンジ機能は搭載しないという思い切った決断をしております。ご飯の温め直しやレトルト食品の温めなども、すべて過熱水蒸気でやることで、電子レンジの常識を覆そうという取り組みをしました。今から思うと本当にしびれますね(笑)。

しかし、過熱水蒸気では牛乳1杯の温めに5分30秒ご飯の温めも1杯で7分というように、こちらも本当にしびれるくらいの時間で(笑)。さすがに「牛乳温めるのに5分30秒はないわ」というお声をお客様から多くいただきましたので、2005年からの第2世代では電子レンジ機能を搭載しました。とはいうものの、過熱水蒸気に向き合うというところは現在まで脈々と続いています。

熱量が高く、冷凍と生の食材をまとめて調理できる過熱水蒸気

ギズ:過熱水蒸気による調理ってどういうメリットがあるんですか?

川尻さん(シャープ)過熱水蒸気は高い熱量で調理できるところが大きな特徴です。食材の中まで素早く火を通す「調理力」というところと、健康的な調理ができる点、そして温度の低いほうに熱を与える特性を活かして、異なる温度帯または食材でもちょうどよく調理するということができます。

熱源は水ですので、食材が持つ水分を逃がしにくく、うまみをキープできるという点も特徴です。

通常家庭用の製品は1400Wの電源ですが、最新モデルのXA20では過熱水蒸気のエンジンに1350Wの電源をつぎ込んでいます。それにより300度の高温の過熱水蒸気を大量に発生させています。

背面の上部左右に、回るコンベクションファンがございます。こちらから空気を吸い込みながら庫内全体に過熱水蒸気の風を回して加熱しています。ヒーターは、上部と背面にもありまして、三方向から過熱水蒸気を発生させています。

もうひとつの特徴が、スイングダンパーです。こちらは上段と下段で同時に調理するときに、上段に集中的に風を回す、下段にも回す、さらに上段で調理しながら下段に最後のほうだけ熱を回すというように、熱を自在に操ることで上下段異なる種類の調理を実現する機能を搭載しています。

ギズ:過熱水蒸気のコントロールをめちゃくちゃ細かくやるんですね!

AIとIoTで簡単調理「まかせて調理」を実現

川尻さん(シャープ)最近では、健康やおいしさに加えて、自動調理やAIoTというところにも注力しています。共働き世代の増加による家事の省力化を実現するために開発されたのも2015年の「まかせて調理」です。常温、冷蔵、冷凍の食材を混在していても構いませんし、お好みの食材を置いていただいても構いません。一人分から四人分まで、どんなものでも、4つの調理法を選ぶだけですべてちょうどよく仕上がるというところが、過熱水蒸気を使った「まかせて調理」です。

これは、 64眼赤外線センサーで食材の冷凍や冷蔵、常温を見極め、過熱水蒸気の量をコントロールします。また食材の出来具合を 温度センサーで見極めながらコントロールして上手に仕上げるというところが大きな特徴です。

もう1点、ヘルシオでは無線LAN機能を2016年から搭載しています。シャープでは、IoTにAIを組み合わせた「AIoT家電」として訴求しており、クラウドに家電の操作履歴のデータを蓄積し、それをもとに AIでお客様の行動や好みを学習して、お客様一人ひとりに最適化するという機能とサービスを提供しています。

音声での対話やスマートフォンを使って、献立の相談や新しいメニューをダウンロードできますし、クラウド上のAIでお客様それぞれの使い方に応じた画面やオススメを提案するということもしております。

AIというところでは、ヘルシオの画面が朝・昼・晩のお客様の使用実態に応じて、頻度の高いメニューに画面が自動でカスタマイズされます。これをAIパネルと呼んでいます。お客様に合わせたオススメメニューを画面上に表示して、毎日違う献立を提案します。

ギズ:すごく基本的なことを聞くのですが、過熱水蒸気って蒸し物で使われるような蒸気や湯気とは違うんですか?

川尻さん(シャープ)違います。過熱水蒸気というのは100度以上に温められた水蒸気のことを指します。湯気は目に見えますが、過熱水蒸気はさらに無色透明の状態になった水です。

ギズ:ドアの隙間から過熱水蒸気が漏れたりはしないんですか?

川尻さん(シャープ)ドアのパッキンに密閉シールドを入れているので、水蒸気を逃がさない構造になっています。ですが、調理後にお客様がドアを開けたときに水蒸気が顔に当たってしまいますので、それを防ぐために天面にところに排気口を設けています。

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ヘルシオの庫内。右上にあるでっぱりがセンサーのかたまり。

ギズ:庫内の食材の温度を確認するセンサーは、この右上の出っ張りですか?

川尻さん(シャープ)はいそうです。そこに64眼赤外線が動くようになっていまして、こちらで角皿に置かれた食材の状態を判別しています。

ギズ:これは上下に角皿を入れると、下段は見えないんですよね?

川尻さん(シャープ)そうですね。上段につきましては冷凍・冷蔵・常温を混ぜて置いていただいてもいいんですが、下段は副菜限定になります。

ギズ:あと、このモデルは電子レンジと過熱水蒸気の併用ですよね? 電子レンジのマイクロウェーブ調理と過熱水蒸気調理を同時に行なうことは可能なのでしょうか?

川尻さん(シャープ)弊社の方式では、それぞれ分けております。

ギズ:同時に調理することがそもそも技術的に不可能なのか、何か不都合が起きるということなのでしょうか?

川尻さん(シャープ) 弊社の過熱水蒸気調理の場合は角皿を使用し、素材はが鉄板ですので、レンジ加熱はできないのですが、その辺は、パナソニックさんがその方式ですばらしい加熱をしておられますので、もっとわかるのではと思います(笑)。

井上さん(パナソニック)ご期待ください(笑)。

過熱水蒸気と普通の蒸気では調理に違いは出る?

吉川さん(三菱)ヘルシオの場合、過熱水蒸気を庫内に噴射しているんですか? それとも水蒸気を循環させることで過熱水蒸気にしているんですか?

川尻さん(シャープ)このモデルに関しては、過熱水蒸気を最高300度まで加熱した状態で噴射しています。

吉川さん(三菱)じゃあ、庫内に噴射されるときはすでに300度の過熱水蒸気なんですね。それをコントロールして出していると。たとえば庫内が300度で、普通の蒸気を熱風循環で回したときと、300度の過熱水蒸気を噴射した場合、調理に違いは出てくるのでしょうか。

川尻さん(シャープ)熱風だけで焼くと表面に焦げ目が付きやすい焼き方になりますが、300度の過熱水蒸気は表面をしっかり焼き上げる力と、食材の中にまで火を通す力も併せ持っているので、より早く、おいしくできあがるというのがひとつのポイントだと思います。

水分から守るためのシールドを徹底

井上さん(パナソニック)ヘルシオさんは常に参考にさせていただいていて、すごいなって思っているんですが。水を使って調理をするとなると、水分とハードウェアとの戦いというのがあると思うんです。何か苦労されているところはありますか?

川尻さん(シャープ)水で調理するのは本当においしいんですけど、 技術的な面で言うと、サビとの戦いになります。そのため、お客様からは見えないところのすごく細かい部分までシールドを施して、蒸気が入り込むのを防いでいます。水を漏らさないように、中の機構はかなり苦労していますね。

初川さん(東芝)ヘルシオさんは、やはり大きさとの戦いですよね。これまでコンパクト化にいろいろ挑戦されてきていると思いますが、苦労したことなどがあればお聞きしたいなと。

川尻さん(シャープ)大きさはすごく大きな課題ですよね。先ほどの東芝さんの奥行き39.9cmというのはすごくうらやましいなと思いながらも、過熱水蒸気のことを考えるとヘルシオはなかなか実現できない。苦労は今もしておりますというところですね。

ギズ:水蒸気のシールドをやらなければならない以上、どうしてもボディが大ぶりになってしまうというのはありそうですね。

オーブンレンジの上は空けておくこと

ギズ:これはオーブンレンジ全体の話になるんですけど、上面に空気の取り込み口みたいなものがあるんですが、これは何なんでしょう?

川尻さん(シャープ)そちらは排気口ですね。調理終了約1分前くらいから、弊社の場合はそこから庫内の蒸気を逃がします。それにより、お客様が出来上がり時にドアを開けたときに、大量の蒸気が一気に出てこないように配慮しています。

ギズ:これは他社さんも同じ考え方なんですね。オーブンレンジの上にものを載せたりしている人も多いと思うんですが、あまり載せないほうがいいんですかね。

川尻さん(シャープ)はい。ヘルシオの場合も、左右と背面は壁にピタリとつけていただいて構いませんが、天面だけは10cm空けてくださいとご案内しています。

コンパクトでスピーディな三菱電機「ZITANG(ジタング)」

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ギズ:ではお次は三菱電機さんのZITANGに移らせていただきます。ZITANGではスタンダードな唐揚げを作りました。私は家ではほとんど唐揚げを作らなくて、お店で食べるものというイメージがあったんですけど、ちゃんとできました。正直、今回のレシピでいちばん簡単でした

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唐揚げ。レシピはこちら

吉川さん(三菱)ZITANGは、ほかのメーカーさんとは違って、かなりコンパクトで簡単な操作方法となっています。開発の狙いなんですが、料理が苦手な人の調理参加を簡単にすることで家族みんなの調理負担を軽減するというもので、誰でも毎日気軽に使っていただきたいという思うで開発をしております。初代は2011年発売で、現在3代目を発売中です。

オーブンレンジは、買ってから後悔するキッチン家電の上位に入っているんです。その理由としては、「難しくて使いこなせない」「調理に時間がかかってしまう」「電気代が気になる」というものがあります。そういう不満点を解決しながら、簡単に誰でもおいしい調理ができるプロダクトを開発したいという思いからZITANGが生まれました。

製品の特徴は、なんといっても「リレー調理機能」です。生焼けや焦げ付きなどが起きやすい加熱調理を、レンジとグリルのリレー調理により誰でも失敗せずに一品料理を作れるようになっています。具体的には、最初にレンジで食材の中までしっかりと加熱し、続けて自動的にグリル調理に切り替わって、ヒーターによる加熱で表面を香ばしく焼き上げるという、2段階での調理ができるようになっています。この機能を使えば、食材に熱を通して香ばしく仕上げることができ、かつ、調理時間を大幅に短縮することもできます。

先ほどの唐揚げの場合、通常では22分かかるところ、リレー調理機能を使うことで12分くらいで簡単においしくできあがります。しかも油を使わないので、ヘルシーに仕上げることができます。 (※従来品RO-EV100 (総庫内容量30L)2010年度製のオーブン加熱とRG-HS1(庫内総容量13L)の「レンジ▶グリル」加熱との比較(当社測定結果)食材や調理方法などによって異なります。)

ハンバーグやグラタンの場合でも、設定は不要です。材料を用意して庫内に入れていただいて、レンジグリルというボタンを押し、スタートボタンを押していただければ、自動で調理してくれるので、非常に簡単に使える機能となっています。

リレー調理機能は、調理だけではなくお惣菜の再加熱にも効果的です。通常、レンジだけで温めようとすると、べちゃっとして、温かいけどサクサク感がなくなってしまったとか、オーブントースターだと周りは温まったけど、中がまだ冷たかったということがあると思います。そんなときレンジグリルの再加熱という機能を使うと、中から温めて外はカリっと仕上がり、できたてのようなお惣菜に仕上げられます。

ギズ:うわ、僕は惣菜のフライを温めるとき、まさにその「レンジで温め→トースターで仕上げ」をやってました...これ楽でいいですね。

吉川さん(三菱)もう一つの特徴は本体サイズですね。今まで見せていただいた東芝さんやシャープさんの製品は30リッタークラスだと思うんですが、当社のZITANGは13リッターと小さいんです。要は、普段使いするレンジ加熱に重点を置いて、加熱効率をよくしています。

レンジの加熱効率だけではなく、食材と熱源を近づけることによるグリルの加熱効率、庫内を小さくすることによるオーブンの加熱効率、すべてを効率よくすることで、短時間でいろいろな調理ができるようになっております。こちら、省エネ法の対象になっていて、達成率はトップクラスとなっています。

ギズ:なるほど、スピード重視の設計なんですね。僕が試用させていただいたときに驚いたのは、ボタンを押す回数が少ないことでした。「レンジグリル」「スタート」の2回でいいんですよ。最初、ちゃんとした手順に従ってないんじゃないか?ってレシピを二度見しました(笑)。

吉川さん(三菱)細かな設定をしなくても自動でできあがりますよ。

ギズ:ですよね。焼き加減や温め加減はどこで判断するんでしょうか。

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ジタングの庫内。右の壁にセンサー用の出っ張りがあり、食材を近い位置からスキャンできる。

吉川さん(三菱)他社さんと同じように、庫内にセンサーが付いています。右の壁の中央ぐらい。ちょっと出っ張っています。そこに赤外線センサーが内蔵されています。

ギズ:今の近代的なオーブンレンジは、このセンサーとファンがマストなんですね。

吉川さん(三菱)そうですね。 大体のオーブンレンジには入っていると思います。「押す回数が少ない」とのことですが、 操作面では、カラー液晶を使わずに従来の液晶を使っておりまして、簡単に使えるように文字も大きく見やすくして、操作メニューの階層も浅くしています。また、操作時のタッチポイントもできるだけ減らして簡単に操作できるように作り込んでいます。

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押せるボタンがLEDで強調表示される。


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時間を設定せずにいきなり「スタート」でOK。もちろん時間を設定してもいい。


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ギズ:光ったボタンを順番に押していけばいいんですね。マニュアルがなくても使えますね。

機械をコンパクトにすることはハードルが高い

井上さん(パナソニック)私たちも同じように時短の訴求が念頭にあったので、三菱電機さんはコンパクトで原理的にも本当に時短できるんだろうなというのが見てわかるものでしたし、興味を持っていました。本当にコンパクトだからこそいろいろな課題があると思うんですが、マイクロ波とヒーターの併用で難しかったことなどありますか?

吉川さん(三菱)やはりヒーターの熱源と各電気・電子部品がすべて近くなってしまうので、それぞれの断熱構造やマイクロ波の遮断、そういうところをしっかり設計しなければならないのが、構造上は苦労しましたね。

ギズ:ZITANGも庫内にファンが付いていますが、このファンはヒーターでグリルするときに回すという認識でいいんでしょうか?

吉川さん(三菱)はい。天面裏にもヒーターが内蔵されていて、 グリル加熱時は 天面側と背面側の熱風ヒーターの2つで焼き上げます。

そのまま食卓に出せる角皿は追加購入可能

ギズ:試用させていただいたとき、付属の角皿が「そのまま食卓で使えそうでいいな」と思ったんですが、角皿は別売りで2枚目、3枚目を購入することはできますか?

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陶器のような質感の角皿。この上で調理して、そのまま食卓へ出せるデザイン。

吉川さん(三菱)可能です。たとえば焼きそばなどを作って、そのまま食卓に出せるようにしています。

ギズ:盛り付けの手間も省けるようになってるんですね...時短への意識がすごい。

ネーミングの際のエピソード

川尻さん(シャープ)ZITANG(ジタング)さんは、ネーミングがわかりやすいなといつも思っていまして。時短という意味と、なんか言いやすいというのもあるんですが。これって当時だいぶ悩まれましたか(笑)。ほんとにいい名前だなと思っているんですけど。

吉川さん(三菱)はい、そうですね。やっぱり調理時間を短くしたいというところ、どうにかネーミングに使えないかというところをみんなで考えて、時短する調理器具でZITANG(ジタング)と。これはいいなということになりました。

商品開発のルールはある?

初川さん(東芝)三菱さんといいますと、このZITANGにしても、いち早くリベイク機能を主体としたような商品化をされたり、ブレッドオーブンにしても普通のオーブントースターとはちょっと異なるような商品を出したり、炊飯器でも炭釜や蒸気レスであったりと、いわゆるほかがやらないというか、ニッチというか、そういう商品が非常に多いと思うんですが、何か社風やルールがあるんですかね?

吉川さん(三菱)特にルールはないんですけれども、当社でいえばたとえば「暮らしに価値を」ということで、困りごとをしっかり解決するような商品作りをしているというところになります。

ギズ:確かに、電子レンジとかオーブンの場合も、調理に使うより、温め直しに使う人も多いですよね。

吉川さん(三菱)そうですね。結構ありますね。

ギズ:そこをいかに便利にするかっていう視点でデザインされているんですね。

吉川さん(三菱)とにかく簡単に、時間が短ければどんどん使っていただけるかなというのもあるので、オーブンレンジが敬遠されないように、使いやすいところを狙っています。

水タンクがない理由

ギズ:今回お借りした製品のうち、ZITANGが唯一、水蒸気のためのタンクが付いてないんですよね。

吉川さん(三菱)それも簡単に使ってもらうためです。タンクを付けると、水を入れたり、メンテナンスをしたり、手間がどうしても増えてしまいますので、そういうところは省いて、お客様にとって本当に使いやすい商品づくりというところを目指してやっております。

パナソニック「ビストロ」は温めと解凍に自信あり

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ギズ:それでは最後はパナソニックさんのスチームオーブンレンジ ビストロ( NE-BS2700 )です。ワンボウル機能を使って、カルボナーラを作りました。パスタと具材を水に入れて、そのまま調理すれば出来上がりました。

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ベーコンとアスパラガスのカルボナーラ。レシピはこちら
Photo: ギズモード・ジャパン

井上さん(パナソニック)ビストロは2006年に誕生して15年が経ちました。他社さんと思いは一緒で、レンジを温めだけじゃなくてもっと使ってほしいという思いを込めて、ここまで開発して参りました。

日本のそんなに広くないキッチンに置いてもらっているオーブンレンジをもっともっと使用頻度を上げたいというところで、焼く、煮る、蒸す、揚げるという機能を、お客様が本当に使いやすく、ほかの調理器と同等以上の使いやすさとおいしさを提供したいと思っています。

最近ではテレワークで、誰でも簡単に料理ができるという世界と、ちょっとこだわりのものを時間を掛けて楽しみたいというところを両立してお役に立てるものを目指しています。

井上さん(パナソニック)機能については、オーブンレンジで一番使われる「温め」と「解凍」に関してビストロは最高の性能をという思いで開発をしております。

特徴としては、庫内の右側に64眼スピードセンサーを付けております。これは庫内を64個のマスで瞬時に見ることができます。温めに関しては、ご飯であれば1杯30秒台を目指して開発をしました。

また、従来の解凍機能は周囲ばかり溶けて、なかなか中心が溶けにくいというお声がありました。従来の電子レンジは、カニの脚のようなセンサーからマイクロ波を食品に当てていたのですが、どうしても周辺ばかりに熱が当たりやすい。そこで、真ん中に渦巻きのように出てくるサイクロンウェーブ加熱を併用することで、中央からも溶かすことができるようになっています。

レンジにもグリルにも対応できる両面グリル皿

井上さん(パナソニック)もうひとつこだわりの機能が、両面グリル機能です。これは当社独自のものなんですが、波状のパターンが入った金属皿を使用しています。実は電子レンジ機能と一緒に使うことができる両面グリル皿となっています。

さらに上面にある強力な上面ヒーターと、下からのカニ脚と渦巻き状に発生するマイクロ波が、このお皿に当たってお皿をあっという間に熱々にするんですね。これにより短時間で両面をこんがり焼くことができます。

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グリル用の皿。マイクロ波で加熱する素材でできており、食材を直接「焼く」ことができます。触った感じは金属っぽくない不思議な感じ。

井上さん(パナソニック)開発メンバー、私を含め仕事と家庭で大忙しなもので、家に帰ってからも時間がない。コンロで料理をするとどうしても火の管理につきっきりになってしまいますが、それをお任せでできないかということで加熱時間にもこだわりました。

たとえばハンバーグだったら2人分で11分、塩サバは8分、トーストは3分台というように、時短で両面焼けるというところにこだわりました。

時短料理を実現するには、高火力が必要になります。従来は高火力を出すために光ヒーターを搭載していました。ただ、高火力を維持するためにむき出しだったんです。やはり庫内にヒーターが見えているのは不安だというお声がお客様からありまして。

2016年からはこのむき出しのヒーターと同等の火力を持つ大火力極め焼きヒーターというものを上部に付けました。これは庫内からは見えません。これに、マイクロ波を吸収してあっという間に熱くなる両面グリル皿が大きな特徴となっています。

材料を入れるだけでOKなワンボウル機能

井上さん(パナソニック)さらにこだわりの機能が、試していただいたワンボウル機能です。

従来なら、カレーを作るとしたら具を炒めて水を加えて、ルーを加えて溶かして、全部火加減を見ながらやっていたことを、基本すべての材料を最初にボウルに入れて、あとはビストロに入れるだけでOKという機能です。庫内の64眼スピードセンサーが食材の状態を見ながら、こびりつかず、ちょうどいい状態に加熱できます。

カレーはもちろん、パスタやシチュー、中華、フレンチがワンボウル機能でできますし、いろいろな野菜をちょうどいいシャキシャキ状態に茹でるという機能もございます。これはお客様からダントツの評価をいただいております。

余談ですが、ワンボウル機能をビストロに初めて搭載したとき、社内では大反対にあいまして。なんだか適当にやってる調理じゃないか、これが訴求なのかと、私も担当者も相当叩かれたんですが、市場に出してみたらお客様から大好評をいただいて、今ではビストロの看板機能となっています。

お手入れに関しても、こだわりがあります。焼き物などをすると庫内の天井部分に油が飛び跳ねてベタベタになってしまいます。さらに、そこは拭くのが難しいんですね。ビストロの庫内の天井は、触るとザラザラしています。これはオートクリーン加工というもので、高温で油を二酸化炭素と水に分解するという特別な塗装をしております。私も家庭で何年も使っているんですが、いつまでたってもベタベタしませんね。

「ビストロ」は高さにこだわりあり

井上さん(パナソニック)また、サイズにもこだわりがあります。先ほど東芝さんの石窯ドームが奥行きにこだわっていましたが、当社は高さにこだわって開発をしました。ビストロは高さ45cmの空間に入るように設計しています。

初川さん(東芝)高さを縮めて、なおかつ上のスペースも削られているというところがすごく魅力的なんですが、どういうきっかけでそうしようと思われたのですか?

井上さん(パナソニック)当社のお客様ご相談センターに入ってくるお声のなかで、カップボードなどに設置するときに高さが入らないというものが多かったんです。当時は上部10cm空けてくださいと言っていました。でも10cmも空きませんという声がすごく多くて。高さにお困りの方が多いんだなということで、スタートしました。

最初は技術者に、30リッターだったらこれ以上低くできないと言われまして。サイズを28リッターにするという話もあったんですが、容量は譲れません。最終的には部品系、熱周りを含めて根本的に見直すというところからスタートしました。何度か挫折しそうになりましたけど。

吉川さん(三菱)パナソニックさんの特徴である両面グリル皿がとても素晴らしいと思うんですけど、とても熱くなるような気がします。触るときはミトンを使うのだと思うんですが、安全性の確保はどうされているんですか?

井上さん(パナソニック)本体にミトンを付属しているので、まずはミトンを推奨しています。あとは両面グリル皿の裏の取っ手部分が少しせり出していて、熱い部分が直接テーブルに着かないように設計しています。置くと空間ができるようになっているので、グリル皿をそのままテーブルに置いていただいても大丈夫なようになっています。

両面グリル皿の左右の樹脂部分がちょっと立ち上がっているのがわかるかと思います。真ん中のちょっとゴム状のところがものすごく熱くなるんですね。

ギズ:あ、柔らかい。

井上さん(パナソニック)そのゴム状のところがテーブルに着かないように、左右の樹脂部分を少し上げています。

ギズ:表面は鉄なんですか?

井上さん(パナソニック)はい、鋼板ですね。それだけですとマイクロ波は使えないんですけど、下にフェライトという、柔らかいゴムのような部分が一気にマイクロ波を吸収するので、金属に悪影響を及ぼさずに熱くできます。

ギズ:ビストロは、複数の調理機能、スチームレンジやヒーターなどを併用する形なんでしょうか。それともZITANGさんのように順番にやっていくのですか?

井上さん(パナソニック)メニューによってですね。いろいろな方法を使い分けています。マイクロ波と、ヒーターとかスチームを同時に出していることもあります。

ギズ:ZITANGは、レンジ→グリルは順番に進めるのですか?

吉川さん(三菱)はい、レンジ→グリルの順番ですね。

最初のアイデアは自分たちで

川尻さん(シャープ)パナソニックさんの商品って、いつも視点がお客様目線だなと思ってすごく勉強させていただいています。どういう目線で企画されているんでしょうか。

井上さん(パナソニック)カスタマーサポートに寄せられる声はもちろんですが、まず担当しているメンバー自らがターゲットユーザーなので、自分たちで感じていることをどうやったら実現できるかというアイデアを出していきます。ただ、いくらアイデアを出してもそれが技術的に開発できなければいけないので、それを早めに技術者に伝えて、できることできないことをやりとりして試行錯誤しながら作っていきます。

ただ、自分たちの目線だけではダメなので、本当にターゲットユーザーの要望に叶っているかということを検証しながら作っています。ハードがあるから、という考えは違うよねというところで、お客様が求めているものからスタートしてやっているつもりでございます。シャープさんはどうですか?

川尻さん(シャープ)すごく共感しました。本当におっしゃるとおり、調理家電は家事の楽さに直結しますので、自分が欲しい商品が作れるというところが、調理家電の商品企画部にいることの幸せのひとつかなと思って仕事をしています。

庫内の3つのスライドはどう使う?

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ビストロの庫内はトレーを差し込む段差が多いです。

ギズ:ビストロは庫内にトレーを差し込むスライドが3つありますが、3つ差した状態で調理はできるんでしょうか?

井上さん(パナソニック)いえ。オーブン調理の場合は、他社さん同様2段だけ使えます。2段の場合は上の段と下の段を推奨しています。真ん中はなんのためにあるのかというと、グリルメニューやスチームという蒸し機能があるんですけど、茶碗蒸しなどを蒸す場合、上の段だと狭すぎるし、下の段だと庫内が広すぎて熱の回りが遅くなってしまうので、中段がちょうどよくなっています。

ギズ:なるほど。真ん中に仕切りをいれることで擬似的に庫内を狭くする効果が得られるということでしょうか。

井上さん(パナソニック)そうですね。スチーム機能では特に効果的です。

オーブンレンジに未来はあるのか?

ギズ:オーブンレンジというプロダクトは、かなり普及して家電のスタンダードのようになっていて、傍目には成熟している気がするんですが、今後何かブレークスルーがあるとしたらどんなところなんでしょうか。

川尻さん(シャープ)私たちは過熱水蒸気から発展したヘルシオというものをもう1段階高めるために、2016年よりAIoTに取り組んでいますが、オーブンレンジという分野のなかではまだ芽が出たところかなと思っておりますので、そこがもっと発展していくだろうなとは思っています。

それによって、オーブンレンジ自体が、単なる人が使う道具としてのオーブンレンジではなくて、 いろんな人たちが作ったレシピを、家にいながらにして調理できるという風に広がっていくんじゃないかなと思います。 AIoTという技術を活かしていくことで、オーブンレンジ自体が今までとは違う存在になるのではないかという考えを持っています。

吉川さん(三菱)難しいところだと思うんですよね。オーブンレンジが出てきてから大きな変化というのはなかなかない中で、私達もいろいろな機能を追加してきたとは思います。先ほどシャープさんがおっしゃったようなIoTですかね。そういうところを活用して、お客様の使い勝手がよくなるような、そういう工夫をいろいろ取り込んでいけたらと思っているくらいですね。

井上さん(パナソニック)私もシャープさん、三菱さんと同じ意見ですが、IoT化によって、レンジももちろんですけど、つながることで家全体の家電も含めての位置付けというものが変わるのではないでしょうか。単体のレンジというよりは、お家のなかで家電がどのようにお客様に貢献できるかという世界を、IoTから変えていけるんじゃないかと思っています。

初川さん(東芝)皆さん言われている通りだと思うんですけども、なかなかアイテムがわからないというのがぶっちゃけたところの本音です。

ギズ:アイテムとは?

初川さん(東芝)多分シャープさんの方が詳しいんですけど、シャープさんはインターネットにつながったレンジを出されたのが確か1990年代なんですよね。

川尻さん(シャープ)そうですね。

初川さん(東芝)今から二十数年前に、レシピを見たりといった機能はあったんですよ。確かパナソニックさんもSDカードに大量のレシピを入れたものを出されたのが、2000年くらいなんですよ。

井上さん(パナソニック)はい、やっておりました。

初川さん(東芝)今から20年以上前に、IoTのはしりみたいなことはやられているんですけども、いまだにブレイクしていないというところから考えると、お客様の望まれていることと我々の提供するところがマッチしていないのではないかというところで、悩んでいるのではないかと僕は思っています。

学習機能的なところとか、あるいは一昔前に流行ったディープラーニングみたいな、お客様の嗜好に合わせたみたいな、そういうところまで入っていければいいんですけど、まだまだそこまでは到達してないところはあると思います。

ギズ:現状としては、みなさんIoT化というのが今のところのキーポイントだと認識しているわけですよね。

初川さん(東芝)何かできるんじゃないかと期待はして、いろいろ模索はしているんですけれども、というところかなと。弊社としては。

ギズ:オーブンレンジ本体の機能が新しくなるというところはあるのでしょうか。過熱水蒸気の話のように、まったく新しい技術で料理を変えるとか。

井上さん(パナソニック)ここでお話しするのはみなさん難しいのが現状だろうとは思いますが、たとえば低温調理*などは他社さんも含め、今まで家庭のなかで温度を保つということがなかなかできなかったのが、オーブンレンジで低温から高温まで対応できるようになったのは、ハイクラスのオーブンレンジの特徴だと思います。

*60~70℃程度の温度を長時間キープする調理方法。高温による食材の変質を防げるが、調理には専用の機材が必要。

お肉が柔らかくなったり、甘酒やヨーグルトが作れるというのは、ここ数年のオーブンレンジで一般化しているのは事実で、家庭の調理方法としては新しい分野を切り開けていると思います。

一方で、オーブンレンジを買っても、今日ギズモードさんにやってもらったような調理さえやったことがないというお客様はまだまだいらっしゃいます。現在は、オンラインの動画やアプリを通じて、調理機会を増やしてもらう、オーブンレンジを最大限に使ってもらうというインフラがやっと整ってきた状態なので、そこをまず各メーカーさんが頑張ってやっているなと感じています。なんせ唐揚げでさえ、オーブンレンジで作れるということをどれだけの人が知っているのかというのが今のオーブンレンジの現状です。

何かしらみなさん考えているとは思いますが、その先はまだ言えないと思います。

ギズ:オーブンレンジにもまだまだ未来はあると。

井上さん(パナソニック)そうです。やっぱり食は永遠に続きますし、家族構成も変われば環境も変わります。それにあわせてよりよい提案を、というのは日々研究しているところです。

高機能だからOKといかないところが難しいところ

ということで、今回の「ガジェットメーカーさん、いらっしゃい!」はここでお開きです。オーブンレンジは、もう存在が当たり前すぎてあまり気に掛けたことがなかったんですが、ここ20年くらいの間のかなり急激に進化していたんですね。

過熱水蒸気調理にせよ低温料理にせよ、プロの現場のものがだんだん一般家庭に組み込まれていってますから、ひょっとしたら今はプロだけが使っている調理方法が、オーブンレンジに組み込まれることもあるかもしれません。もしかしたら、もうメーカーさんたちは何か企んでるかもしれませんしね

それにしても、オーブンレンジの世界って思った以上に奥深いものでした。科学的な側面もあり、人間のフィジカルな部分・メンタルな部分に関する側面もあり。高機能だからOKというわけではないのが、家電を含めたガジェット全般の難しいところなんでしょうね。

さて、次回はどんなメーカーさんをお呼びできるでしょうか。ではまた次回!