米が臓器移植年間4万件の新記録。ヒトへの豚の腎臓移植にも2度成功

  • author satomi
米が臓器移植年間4万件の新記録。ヒトへの豚の腎臓移植にも2度成功
Photo: Getty Images

日本と桁が違う…!

連日コロナのニュースで埋もれてしまってますが、医療の世界はブレイクスルー続き。アメリカでは、昨年1年間で臓器移植の実施件数がクリスマスの1週間前に4万件の大台に乗って、2019年の約3万9700件をしのぐ過去最高に達しました。最終的には年間41万5000件前後となる見込みで、1日に114人の命が救われた計算です。

アルゴリズムがドナーと患者をマッチング

これだけの数を裁くのは容易なことではありません。移植先進国アメリカですら1954年の肝臓移植初成功からずっと30年も移植はだいたい同じ病院で繰り返されていました。近隣で移植待ちの患者さんが見つからなければ臓器はポイ、だったのです。

転機が訪れたのは1984年。全米規模に拡大してマッチングを民間NPOに一任することが国会で決まり、UNOS(全米臓器分配ネットワーク:United Network for Organ Sharing)というところが全米57のOPO(臓器調達機関:Organ Procurement Organization)と病院からデータを集めて、アルゴリズムでレシピエント選定(血液型や抗体反応、大きさといった適応条件のすりあわせ)を進めるスタイルになって規模が拡大しました。2004年から2012年までは2万8000件前後で横ばいだったのが、2013年から50%近く急増。2020年には8週間移植できない期間があったので減少に転じましたが、それを取り返したかたちです。

UNOSの地元メディアのRichmond Times--Dispatchが気になるマッチングの流れをくわしく取材しているのですが、アルゴリズムは常に改善していて、改定時には44人から成る理事会が審理にかけて承認しているんだそうですよ。アルゴリズムで考慮するのは、移植でどれくらい延命できるか、移植に持ちこたえられる体かどうか。有名人、金持ち、いい保険に入ってる人が優先されることはないとのこと。

さらに次のようなデータまで追跡しています。

・臓器待ち患者の数

・臓器到着前に死亡する患者の数(病院別)

・若い臓器、健康な臓器を選り好みする病院・医師

・断られた臓器のその後(ほかの病院で移植に活用されたか)

・臓器移植しない場合の患者の余命

医師が臓器を引き取りに行って直に検分しなくてもいいように、写真や映像で事前に臓器の状態を確認できるしくみも準備中。いろいろすごい。

国民の過半数がドナー

アメリカでは運転免許をとるとき「死後献体します」っていう項目を選ぶと、免許証に表示されて救急車の人がひと目でわかるようになっています。そんな手軽さもあってか、UNOSのBrian Shepard CEOによると、献体登録しているアメリカ人は5割をちょっと出るほどもいるんだとか。なんと国民の過半数がドナーだったのです! そういや訳者も永住組だけど、献体はYES選んでますもんね。

ちなみにオピオイド鎮痛薬中毒で2019年だけで5万人が死亡したアメリカですが、薬物過剰摂取による死亡者(2020年は9万3331人)は献体増加分の1%ぽっち。COVID-19による死亡者も献体はできないので、やはりこんなどん底の混乱のなかで人の役に立ちたいと考える健康体ドナーが増えたことが大きいみたい。

秋にはブタの腎臓を脳死患者に初移植、しっかり尿ができた!

しかしまあ、これだけ国民の理解と協力、関連団体の尽力があっても1日約110人が移植待ちで、うち30人は臓器を待ちきれなくて死亡・病態悪化しているのが現実です。圧倒的な臓器不足。

これをなんとかしようと医師らが目を付けたのがブタの臓器で。昨年9月にはニューヨーク大ランゴン移植研究所が初の移植手術に成功し、11月下旬の2度目の手術にも成功、大きな希望の光となりました。

気になるレシピエントは次の2人の方々です。

・9月:生命維持装置を外す直前の脳死患者。家族は「研究のためになるなら」と同意。

・11月:人工呼吸器を外すと体機能を維持できないドナー希望者。NY一円に登録ドナー650万人を抱える非営利団体LiveOnNYの協力で探し当てた。

腎臓は元の部位ではなく上腿の血管につなげて保護材でカバーしながら54時間経過を観察したのですが、2回とも拒否反応は出なくて、人間の臓器移植と同量の尿がすぐできました。手術を率いたRobert Montgomery医師は声明のなかでこう喜びを語っています。

「2回目も初回手術の結果を再現できました。これにより、(拒否反応が出ないよう)遺伝子操作を加えた臓器が、命のギフトを待ちわびる世界中の人たちへの再生可能な臓器の提供源になりうることが引き続き示されたことになります」

ほかの哺乳類と違って、人の臓器はα-gal(アルファガル)という糖分を生成できません。なので、生成できる臓器をできない臓器に移植するとどうしても拒否反応が出てしまうのですが、同大が移植で使ったブタの腎臓はα-galを生成しないように遺伝子が操作された臓器(遺伝子操作の部分はユナイテッド・セラピューティクスの子会社Revivicorが担当しました)。だからアレルギーを引き起こす心配がないというわけです。

動物の臓器には抵抗を感じる人もいるかと思ったら、意外と世論調査では大多数の人が「広まれば支持する」と答えているのだそう。異種移植の実用化はまだ先のことだけど、臓器を待ちながらこの世を去る人がひとりでも減ってくれるのならこんなに励まされるニュースはありませんね!

Sources: Richmond Times--Dispatch NYU Langone HealthGizmodo US

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