恐竜絶滅の原因となった天体衝突、タイミングも最悪だったっぽい

  • 33,357

  • author George Dvorsky - Gizmodo US
  • [原文]
  • 山田ちとら
  • Twitter
  • Facebook
  • LINE
  • はてな
  • クリップボードにコピー
  • ×
  • …
恐竜絶滅の原因となった天体衝突、タイミングも最悪だったっぽい
巨大な隕石が地球に落下しているイメージ画 Image: SWRI via Gizmodo US

6600万年前に大量絶滅を引き起こした天体衝突って、一体どれぐらいのインパクトだったの?

これまでの研究からは、チクシュルーブ衝突体が最悪な場所に、しかも最悪な角度で降ってきたらしいことがわかっていました。それに加えて、どうやらタイミングも最悪だったみたいです。

新たな研究によると、衝突は春の終わり頃に起こった可能性が高いそうです。だとすれば、ちょうど北半球の植物が新芽を出し、動物が繁殖期を迎えた矢先のことだったはずで、インパクト・ウィンター(天体衝突によって引き起こされる気候変化)の破壊力はほかのどのタイミングにも増して大きかったのではないかと推察されています。

最悪の絶滅イベント

およそ6600万年前、当時は炭酸塩岩や硫酸塩岩が厚く堆積する浅い海が広がっていたユカタン半島に、直径10kmほどの小惑星が衝突しました。衝突の角度は45度から60度ぐらいと推定されており、地平線に対して鋭利な角度で切り込んできたため「最悪のシナリオ」になったと考えられています。

衝突のすさまじいインパクトが大量の粉塵や硫酸エアロゾルを大気中にまき散らし、太陽光を遮断したため、植物は光合成を行なえなくなりました。さらに、衝撃波の爆風にあおられて大規模な森林火災が発生し、煤や粉塵が大気中に停滞したほか、地震、津波、酸性雨、有毒物質の海洋への流入、二酸化炭素の放出による温暖化など、さまざまな短期的・中長期的な環境の乱れが生じたと考えられています。

結果、チクシュルーブの天体衝突は鳥類型以外の恐竜を根絶やしにしただけでなく、当時地球上に存在していた生物の75%を絶滅に追いやりました。

葉っぱの化石の虫食い痕から季節を特定

これだけの大量絶滅に繋がった背景には天体衝突が起きた季節が深く関っているそうで、最近「Scientific Reports」に発表された研究では春の終わり頃だったとしています。

季節には生物学的機能を司る大切な役割があり、生殖・給餌・寄生生物と宿主との相互関係・休眠期間・繁殖期間などに関係しています。

ですから、天体衝突のような地球規模の災害がどの季節に起きたかが、生物へのインパクトに大きく影響してくるのは当然のことです

とフロリダ・アトランティック大学のデ・パルマ(Robert DePalma)非常勤教授はプレスリリースで説明しています。

こう聞くと「なるほど、当たり前じゃん」と思いますが、実は衝突がどの季節に起きたか、しかも季節のどの段階だったかを正確に特定するのはものすごく大変な作業みたいなんですね。まず、デ・パルマ教授のチームは発掘した化石から成長パターンを割り出したそうです。たとえば魚の化石であれば、その魚がいつ死んだか(いつ粉塵に生き埋めにされたか)を調べます。そして、そこから逆算してその魚がいつ産卵期を迎えたかを推定したそうです。

昆虫の化石も同様に調べることで、カゲロウの成虫がいつ羽化したかを推定。また、葉っぱの化石についていた虫食いの痕から昆虫の繁殖期間を割り出したケースもあったそうです。こうしていくつもの化石の精密な年代測定を行なった結果、天体衝突が起こったのが春の終わり頃だったという点で一致したそうです。

現場データを丹念に分析したことで、約 6600万年前の白亜紀-古第三紀境界(K-Pg境界)でなにが起こったのかを詳細に知ることができただけでなく、いつ起こったかを特定できたのは大きな成果でした。

このようにいくつもの独立したエビデンスがすべて明白に同じ季節を示したことは、驚異的と言わざるを得ません

と論文の共著者でフロリダ・アトランティック大学准教授のオレイニック(Anton Oleinik)さん自身も驚きを隠せない様子です。

残酷な春

では、なぜ春の終わり頃だと天体衝突のインパクトが助長されてしまうのでしょうか。

春は、本来ならば繁殖の季節です。ですから、春に幼体が大量死すると、繁殖期を迎えるまで長い年月を必要とする種や、特殊な状況下においてのみ繁殖期を迎える種にとっては大打撃なのだと研究者たちは指摘しています。さらに、春が終わらないうちにインパクト・ウィンターの急激な冷え込みが始まったため、季節の変動に敏感な生物にとっては過酷な環境だっただろうとも推察しています。

今回の研究結果が正しければ、チクシュルーブ衝突体によってもたらされた大量絶滅は、北半球と南半球とでは異なるパターンで展開したはずだとも考えられるそうです。

極秘だった調査現場

ところで、この研究の現場となったのは「タニス発掘調査現場」と呼ばれる米ノースダコタ州にあるヘルクリーク累層の一部でした。タニス発掘調査現場には白亜紀後期と暁新世の地層が年代順にクッキリと現れていて、特に下の2層はチクシュルーブ衝突から発生した粉塵と、その日絶命した植物・樹木・動物などの化石の宝庫となっているそうで、今回の研究にはうってつけの調査現場でした。

興味深いことに、このタニス調査現場は個人が所有している土地だそうで、所有者と独占的に契約を結んでいるデ・パルマ教授しか発掘できませんし、発掘された化石の調査も他者が自由に行なえないようになっている上、過去には場所を特定されないよう非公開にしていた時期もあったそうです。

せっかくデ・パルマ教授が丹念に調べ上げた結果も、第三者によって再調査されないことには確証を得るのが難しいですね。このように調査現場を独占する行為をよしとしない科学者もいるようですが、デ・パルマ教授側の言い分としては「今では場所を公開しているし、科学的に貴重な原材を守るためには必要な措置だった」そうです。

デ・パルマ教授の結論を裏付けるような独立した調査結果が待たれます。

Reference: Scientific Reports, Nature (1, 2), 地質学雑誌