赤色超巨星の激しすぎる最期が明らかに。超新星爆発の直前に見られた予兆とは

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  • author George Dvorsky - Gizmodo US
  • [原文]
  • 山田ちとら
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赤色超巨星の激しすぎる最期が明らかに。超新星爆発の直前に見られた予兆とは

超新星爆発の観測がアツい!

2020年4月、NASAのハッブル宇宙望遠鏡をはじめ複数の望遠鏡が、観測史上初めて超新星爆発の様子をリアルタイムに観測したことはすでにこちらでお伝えしていました。

さらに同年9月、別の研究チームが赤色超巨星の超新星爆発をリアルタイムに観測することに成功しました。その際、爆発に先駆けて放射が確認され、超新星爆発の常識をくつがえす大発見となりました。

というのも、これまで観測された赤色超巨星はなんの前触れもなくとつぜん爆発していたそうなんですね。今回のように超新星爆発が起こる前から激しく放射していたケースは初めてだったそうで、星の内部でまだ解明されていない謎の変化が起きていたことを示唆しているそうです。

超新星爆発とは

まずは超新星爆発をについてちょっとおさらい。

夜空にきらめく星のほとんどは水素の核融合反応により輝いています。そうやって何億年も核融合を続けていくうちに、燃料である水素は減り、かわりに中心部分に核融合反応でできたヘリウムが溜まっていきます。

やがて水素を使い果たしてしまうと、核融合反応が弱まって自重に耐えられなくなり、星の中心部分がつぶれ始めます。すると、中心に残されたヘリウムが圧縮され、温度が上がります。ある一定の温度を超えると今度はヘリウム同士の核融合反応が始まり、炭素・酸素などがつくられます。と同時に大きなエネルギーがつくり出されるために星がふくれ上がり、巨星となります。

太陽より8倍以上重い星の重力はさらに中心部分を圧縮し続けるので、次第に炭素同士、酸素同士が核融合反応を起こしてネオン・マグネシウム・ケイ素などができて、最終的には星の中心部に鉄の核ができあがります。しかし鉄同士では核融合反応が起きないので、ここで星の核融合炉は停止。すると自重で急激に縮みはじめ、鉄の核はつぶされてほとんどが中性子に変わります。この反応で大量のニュートリノが星の中心から噴き出し、星がこっぱみじんに砕け散ると考えられています。これが超新星爆発と呼ばれているもので、事実上星の死を意味しています。

目の前で星が爆死するスペクタクル

2020年9月に観測された赤色超巨星の超新星爆発は、史上初のリアルタイム観測でした。しかも爆発する数ヶ月前から観測し続けていたという徹底ぶり!

赤色超巨星の異変を最初に見つけ出したのは、カリフォルニア大学サンタクルーズ校に設置されている「Young Supernova Experiment」が運営している超新星サーベイでした。2020年夏、マウイ島のパンスターズ (Pan-STARRS)が1億2000万光年先のNGC 5731銀河にある赤色超巨星から異常な量の放射を観測。その後130日間に渡って観測し続けました。研究チームの上級研究員であるカリフォルニア大学バークレー校のRaffaella Margutti准教授曰く、「まるで時限爆弾を見ているよう」だったそうです。

そして9月16日、ついに超新星爆発が起こり、ハワイ島のケック天文台の低解像度統合分光法を使って最初の閃光とそのスペクトル、そして爆発後の動向までの一部始終を詳細に捉えることに成功しました。「目の前で赤色超巨星が爆発したのを観測できたんです!」とWynn Jacobson-Galánポスドク研究員はケック天文台が発表したプレスリリースで語っています。さらに、Marguttiさんは

これまで観測した赤色超巨星の最期に、これほどまでに眩しい閃光や、その後の崩壊、燃焼においても激しい活動が見られたのは初めてのことです。

とも語っています。

Jacobson-Galánさん、Marguttiさんらを筆頭とする研究者チームは、これらの観測を研究論文にまとめ、Astrophysical Journalにて発表しています。

くつがされた常識、そして新たな謎

「SN 2020tlf」と名付けられたこの超新星爆発は、これまで観測されてきたどのII型超新星爆発とも異なっていました。

通常、赤色超巨星が超新星爆発を起こす前は比較的不活発で、その後に続く激しい爆発や強烈な閃光を予期させるような動きは見られないそうです。ところが、SN 2020tlfは爆発する数ヶ月前から強烈な放射線を放っていました。さらに、爆発前から爆発時まで濃い星周物質に取り囲まれていました。

これらの観測は、すべての赤色超巨星が同様に最期を迎えないこと、そして少なくとも赤色超巨星のうちのいくつかは爆死に至るまでに内部構造に大きな変化をきたすことを示唆しているそうです。同時に、爆発前の「前駆放射(precursor emission)」と星周物質の存在は、赤色超巨星の質量がなんらかの星の内部のメカニズムによって失われ、同時にエネルギー(光)となって放射されているとも考えられるそうです。予測不可能と考えられていた超新星爆発を知らせてくれる予兆として、今後有用な手がかりとなってくれるかもしれません。

Jacobson-Galánさんはプレスリリースで、

今回の発見により、超新星爆発について解き放たれた「新たな謎」に最もワクワクしているところです。

SN 2020tlfのような天文学的なイベントの観測を今後も続けていけば、星の進化の最終段階についての理解を劇的に深められるでしょうし、巨星がどのように一生を終えるのかというミステリーが明かされることにもなります

とコメントしています。今までの常識をくつがえすぐらいドラマチックな超新星爆発が、今度またいつ観測されるのか楽しみになりますね。

ちなみに、SN 2020tlfの元となった赤色超巨星は、太陽の10倍から12倍の質量を持っていたと推測され、ベテルギウスとほぼ同じサイズです。ということは、ベテルギウスも同じように華々しい最期を迎えることになるのでしょうか…? 変形したり、減光したりと、最近やや不規則な活動が見られているベテルギウスだけに、こちらも気になるところです。

Reference: Astrophysical Journal, Keck Observatory, 天文学辞典