カメラのノッチも突起も一発解消、フラットな「メタレンズ」

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  • author Andrew Liszewski - Gizmodo US
  • [原文]
  • 福田ミホ
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カメラのノッチも突起も一発解消、フラットな「メタレンズ」
Image: Metalenz

偏光を使ったセキュアな認証も。

iPhoneのFace IDは素早く認証ができますが、利便性の裏には欠点もあり、たとえば画面のノッチをやめられないのはそのせいです。米国ハーバード大学からスピンオフした「Metalenz」は、顔認証のもっとスマートな方法を提案しようとしています。彼らはスマホで使える偏光レンズを開発して、セキュリティが高くかつノッチを必要としないスマホカメラを実現しようとしています。

カメラレンズを変革するかも

Metalenzはその社名が表す通り、「メタレンズ」または「メタサーフェス」などと呼ばれる比較的新しい技術を元に立ち上がりました。メタレンズは、今まで150年以上続いてきたカメラやレンズ作りのアプローチを革新する技術だとされています。

カメラはたいてい、スマホの前面・背面に付いてるものも含めて、複数のレンズ素子が積み重なってできてます。それぞれのレンズ素子は、被写体からの光を屈折させてセンサーに集めるのですが、その際の歪みや収差を最小限に抑えられるように形成されています。このアプローチにより非常にクリーンでシャープな画像ができますが、レンズ全体が大きくなるという欠点もあります。レンズ素子が増えるほどに画質は高まりますが、だからプロが使う一眼レフカメラのレンズが巨大だったり、最先端のスマホに出っ張りができたりしてるのです。

カメラレンズの製造には精巧さが求められ、各レンズ素子は完璧な角度に曲げられ、磨かれています。だから良いレンズは何十万円もするんです。が、メタレンズはこの問題にまったく違うアプローチで取り組んでいます。メタレンズは薄くフラットですが、表面には数千もの細かなナノ構造が無数の同心円のように並んでいます。このナノ構造が従来のレンズの曲面とまったく同じように作用して、光の向きを変えるんです。そこには複数のレンズ素子でなくメタレンズ1枚あればよくて、その結果従来のレンズより良い画質というわけでもないですが、同じ程度の画質で撮影することができます。

メタレンズを使うメリットはたくさんあります。大量生産が可能で、必要な設備はマイクロチップを作るのと同じなので、スマホのようなコンシューマーデバイスへの実装も今よりずっと安くできます。レンズ1枚で済むということは、カメラのセンサーに届く光も多くなり、暗い環境での撮影性能も高まります。でも、さらに大事なのは、メタレンズがスマホのカメラの出っ張りとか画面上部のノッチをなくせることです。

偏光情報でよりセキュアに

Metalenzが発表したのは「PolarEyes」という新たなメタレンズ技術で、従来のカメラが通常無視してきた偏光情報をセンサーに伝達します。偏光を捉えるカメラは前からありますが、それは高価で、研究とか工学、医療の分野で、大気汚染や乳がんの検知、モノの強度検査といった目的で使われてきました。Metalenzは最終的にメタレンズをスマホに入れられる程度に小型化し、コンシューマー向け製品に役立てたいと考えています。

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顔が半分しか見えない人も、偏光を使えばより正確に認識できます
Image: Metalenz

多くのスマホの顔認証機能は、よくできた仮面とか、印刷した顔の画像でさえもだまされてしまうことがあります。でも、人間の顔の皮膚が反射する偏光は、シリコンの仮面や写真の紙から反射する光とはまったく違っていて、難しい画像認識アルゴリズムや専用プロセッサーがなくても簡単に判別できます。

Apple(アップル)のFace IDはTrueDepthカメラを使ってるので、他の顔認識システムよりだまされにくいです。TrueDepthカメラはユーザーの顔に見えない光を投射して、3D構造を把握することで認証しています。でも、その解像度は低いし、最近ではマスクで顔半分が隠れているとFace IDは使えないことも判明しました。マスクをした顔でも認証しようとすると、結果的にセキュリティレベルを下げることになってしまいます。

MetalenzのPolarEyesを使えば、Face IDのような顔認証機能をより安全にできる可能性があるし、マスクで顔の一部が隠れてるときでも使えそうです。さらにiPhoneのTrueDepthカメラは、センサーひとつと、画面下に隠せる小さなメタレンズで置き換えられるかもしれません。そうすればあのノッチもなくせて、Face ID機能をノートパソコンにも入れられるかもしれません。現在はノートパソコンの画面は薄すぎて、TrueDepthカメラが入らないんです。

メタレンズ技術には多大なポテンシャルがあり、ハーバード大学などが研究レベルから実用レベルへと進めようとしているんですが、それがスマホに載るのはいつかといったスケジュールはまだはっきりしていません。スマホだけじゃなく、コンシューマーデバイス全体で見ても、Metalenzの技術が載る時期は曖昧で、特に今コロナ下でサプライチェーンが混沌としてる状況では見通しが難しいです。でも、いつかスマホが高価なデジタルカメラさえ代替でき、しかもそのスマホにはノッチもない、そんな日が来るのかもしれません。