NASAの火星探査車「パーサヴィアランス」が、サンプルチューブを本体内部のストレージに移せないというトラブルに見舞われています。この岩石サンプルは12月29日に採取されたもので、NASAはさらなるサンプル採取へと進む前に、原因と思われる岩石の砕片を取り除く作業に取り掛かります。
センサーが通常より高い抵抗を検知
NASAのジェット推進研究所(JPL)でサンプリングとキャッシング部門のチーフエンジニアを務めるLouise Jandura氏は、サンプルチューブがドリルビットと共にロボットアームの先端から車体内部の格納場所ビットカルーセルへと移される際に問題が起きたと、NASAのブログに綴っています。サンプルを保持しているコアリングビットがカルーセルに接触するとパーサヴィアランスのセンサーが抵抗を検知するのですが、今回は通常時よりも高い抵抗を検知したそう。
そこでパーサヴィアランスのチームはデータと画像を取り寄せ、カルーセルからドリルビットとサンプルを取り出すよう探査車に指示を出しました。その作業が1月6日に行なわれ、NASAは1月7日にデータを受信したのです。
探査車の画像から、カルーセル内に表土と小石が落ちていたことが判明しました。それらは採取された岩石の一部であって、サンプルチューブを受け渡す過程の途中で落ちてしまい、そのせいでドリルビットがカルーセルに入らなくなっていると推測されています。
Jandura氏は岩石の砕片が邪魔になっていたとしてもパーサヴィアランスはサンプルを格納できると記していましたが、火星に到着してまだ日の浅い27億ドルの探査車にはたくさんの科学ミッションが控えていることから、チームはミッションを継続する前に小石を取り除きたいようです。
原因となったのは貴重な岩石サンプル
問題となっている岩石サンプルは、Séítah(セイタ)という領域にあるIssole(イソル)と名付けられた露頭から採取されました。Séítahは大きな砂丘があり航行しにくい一帯で、チームはクレーターの底のサンプルを一対採取したいと望んでいます。Séítahの岩石は特に科学的に興味深いようで、昨年11月のNASAのブログには「層が傾斜した方向を研究していって、Séítahの岩石はジェゼロ・クレーター内で露出した岩石の中でもっとも古いものだろうと私たちは判断した。それゆえSéítahは手に入る地質学的な記録の第一歩であって、ミッションに1度あるかないかという地形の進化の全容を探査する好機をもたらす」と書かれていました。

やがてパーサヴィアランスは、干上がった河川デルタだと考えられているジェゼロ・クレーターの東端に到達するでしょう。地球に存在する微生物の化石を根拠に、このクレーターが古代の火星の生命の痕跡を探すのに最適なロケーションだとパーサヴィアランスのチームは考えています。
パーサヴィアランスは火星に43本のサンプルチューブを持ち込んでおり、そのうち7本にはサンプルが入りました。1本目と2本目は空っぽでしたが、その後は成功しています。NASAは2020年代末に岩石サンプルを地球に持ち帰って、その後は数年間にわたって分析するつもりです。
そのためにもまずこのトラブルを解消する必要がありますが、探査車はその名のとおり「忍耐」強く待つのでしょう。
Source: MARS NASA Solar System(1, 2), Planetary Society,