すごいぜ、中学生。「Ableton Live」での音楽制作を通して"自分を知る"授業とは?

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  • author K.Yoshioka
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すごいぜ、中学生。「Ableton Live」での音楽制作を通して"自分を知る"授業とは?
Photo: Martin Holtkamp

こんな授業受けたかった。

みなさん、「Ableton Live」ってご存知ですか? ドイツのAbleton社が開発する音楽制作ソフトで、自由度の高い操作性や洗練されたUIで愛用者も多くいます。

ギズモードは、昨年の12/21-22に開催された「Ableton Live」を使った音楽制作のワークショップに参加してきました。会場は大阪府にある追手門学院中学校。実は今回のワークショップ、この学校の中学1年生の授業として行なわれたものなんです。

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Photo: K.Yoshioka

「授業で音楽制作」=音楽科目?かと思いきや、NO。追手門学院中学校の特別教科「探究科」の授業として開催されたもので、「Ableton Live」×中学生という珍しい組み合わせに新たな発見がたくさんありました。

教育に対する考え方が変わるくらい面白い取材だったので、そもそもの「探究科」の説明から、ワークショップの様子までご紹介します。

さらに今回は動画でも取材しているので合わせてご覧ください!

Video: ギズモード・ジャパン/YouTube

「探究科」ってどんな科目?

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Source: O-Drive

探究科は、追手門学院中・高等学校の教科として2020年に発足。学習指導要領における中学「総合的な学習の時間」、高校「総合的な探究の時間」を担っています。

これまでの正解を求める教科とは異なり、「自己の在り方・生き方」「課題を発見、解決すること」を学ぶ教科として、学習指導要領をベースにしつつ先生たちが独自にカリキュラムを考えています。探究科の主任・池谷陽平/タイソン先生はこの教科の目的について、以下のように仰ってました。

日本人の子どもは自己肯定感が低いだとか、自殺してしまうとか、そういうことが教育の場で起こってはいけないと思っています。必ずしも、自己肯定感が高くなければならないとは思っていませんが、小さな自信やそういう何かを持っていって欲しいというのが、一番大きな目的としてあります。

自分はこういう表現ができて、人とは違うけれどもそれを生かす場があるとか、そういった細かいことをたくさん続けていくと、ちょっとずつ自信を持てて、ちょっとずつ表現ができて、単純な言葉ではない、自分の複雑さを出せるようになるのではないかと思っっています。

中学1年生のテーマは「自分」。五感を通して、自分を見つめていく授業を行っています。これまでの授業では、お面を作ったり、街のジオラマを作ったりと、聞いてるだけで楽しそうな授業ばかり。

今回のワークショップでは、Ableton Liveを使って視覚、聴覚、触覚を使った曲作りを学びます。

「探究科」についてもっと詳しく知りたい方は、探究科のオウンドメディア「O-DRIVE」をご覧ください!

中学生のクリエイティビティに迫る!

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Photo: Martin Holtkamp

ワークショップは、2〜4人くらいのチームに分かれて行なわれました(第1回目は10月に開催され、今回は第2回目)。各テーブルにはAbleton LiveがインストールされたMacBookProと、Ableton Liveを直観的に操作できる専用コントローラーPush 2がセッティングされてました。講師は、Ableton認定トレーナーの岡村綾子さんが務めます。

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Photo: K.Yoshioka

ワークショップでは、Ableton Liveの中に用意されているメロディやパターンに加え、彼ら自身がフィールドレコーディングしてきた音声をサンプリングして楽曲制作します。どんな音を録ってきてるのか聞いてみると、友達のミッキーのモノマネ声、コップに氷を入れる音、iPhoneの着信音、時報の音声だったりと本当にさまざま。

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Photo: Martin Holtkamp

さらにPush 2を使いながら、リアルタイムで演奏したり、エフェクトをかけたりと、制作はかなり本格的。みんな抵抗感もなく、自由に操作しており、「これ足そうや!」 というノリで、どんどん曲が出来上がっていきます。特にPush 2のようなコントーローラーを使った操作は、直観的に変化を感じれるので中学生たちもテンションが上がっていました。

曲作りが進む中、講師の岡村さんから「制作した音楽に対して生徒たちが思い浮かべたイメージの画像を用意してください」との指示が。どうやら、発表会の時に音楽と合わせて映像も披露するとのこと。いわゆるVJですよね。音楽制作という手法をただ学ぶだけではなく、発表して伝えるということを目的にすることで、「表現とは何か」をいろんな角度から学べるのは、とても重要なことだと感じました。表現に決まった形式はないので、いろんなアプローチを知ることで可能性も増えるように思います。

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Photo: K.Yoshioka

ワークショップの最後は、チーム内で曲の説明をする人、音楽を流す人、映像を流す人に分かれて発表します。

楽曲はどのグループによって様々で、アブストラクトなものからアンビエントっぽいものまで、正直中学生が作ったものとは思えない完成度の曲ばかり。中学生1年生の頃ってまだ音楽ジャンルとかも意識せず聞いていることが多かったし、そういう意味で限りなく先入観のないまっさらな状態で作られた音楽のように感じました。

映像に関しても、具体的なもの(自転車や電話、キャラクター)からもっと壮大な自然や宇宙をイメージしたものまでさまざま。当たり前なことですが「全員が違う感性を持っている」ということを実感します。

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Photo: K.Yoshioka

さらに驚いたのが、すべてのチームがPush 2を使ってリアルタイムでエフェクトをかけながら流す、いわばDJ的な発表の仕方でした。何よりも、みんな全く躊躇せず操作しているんですよね。自分の場合だと失敗を恐れて下手なことはできないなと思っちゃうんですが、そういう躊躇がみられませんでした。

「正解」がないからこそ、間違いも恐れない。これこそ「探究科」という授業の中で身についた力のように感じました。

「表現」を通して自分を知る

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Photo: Martin Holtkamp

今回のワークショップを通して、中学生たちは何を学んだのでしょうか。もちろん、ソフトの使い方、音楽の作り方は学びだったと思いますし、それ以上に表現という「正解がない」価値観を学んだことが大きいように感じました。

既存の教科ではどうしても正解を求める癖がついてしまいますが、実社会では正解がないことも多いです。たとえば、人とのコミュニケーション、自分が何をしたいか、どう生きるかなど、正解が決まってることのほうが少ないんじゃないでしょうか。

中学生の頃から、「正解はない、ありのままの自分でいい」という価値観を身につけることで、この世界はもっと生きやすく楽しくなると思います。

そしてこの教科では、生徒たちを評価していません。正解のない教科だからこそ当たり前のことではありますが、学校という枠組みの中で「評価をしない」という決断をするのは難しいこと。それだけ生徒たちと真剣に向き合っているのだなと感じました。

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Photo: Martin Holtkamp

あとこれはとっても個人的な話ですが、自分も趣味で音楽作りをしていて、それによってすごく人生が豊かになりました。作ること自体が楽しいし、ずっと続けてきたことで音楽友だちも増えました。

僕の場合は、小学生の頃に家で流れていたMTVをきっかけに音楽が好きになりましたが、大人たちが何かしらの形で表現に触れるきっかけを作ることは大切な気がしています。それがメディアであっても教育であってもいいと思います。

ものを作る・作らないに関わらず、10代のうちから表現という選択肢があることを知れっていれば、未来はもっと明るくなるかもしれません。だって彼らには可能性しかないですからね!

Abletonでは、音楽制作をつうじて音楽に対する生徒の学習意欲を高めるお手伝いを"Ableton for the Classroom"といったプログラムのもと日々行なっております。学校の授業で機材面をサポートしたり教材を提供するなど教育現場をサポートしているので、ご興味のある先生の方々はぜひこちらより詳細をご確認の上、専用のニュースレターに登録してみては?

https://www.ableton.com/ja/classroom/


Abletonドキュメンタリー"音楽教育の新たな道を切り開く教師たち":https://www.ableton.com/ja/blog/creative-element-three-music-teachers-forging-path-music-education/

Ableton Liveについて:https://www.ableton.com/ja/live/

Ableton Pushについて:https://www.ableton.com/ja/push/

Ableton JP公式Twitter:https://twitter.com/AbletonJP

Source: Ableton, O-DRIVE