「必要なのは、今持っている機材と、想像力」。
先日公開されたとある映像作品を観て、そんなことを考えました。
その作品とは、東京をベースに活動するアーティスト・Friday Night Plansの2021年作『When I Get My Playground Back』全曲を、クリエイター・Leo Youlagiが映像化したオーディオビジュアル。
『When I Get My Playground Back』自体が、レコードのパチパチと鳴るサーフェスノイズを収めたアンビエント「Intro: Squall」など、ノスタルジックな感覚を呼び起こす全7曲を収録した作品だけに、本作もフィルターをかけた記憶を映像化したようなルックが全体として印象的。
そして、7曲それぞれに異なるヴィジュアルを提示しながらも、断片的にリンクを感じさせる演出は“全曲を映像化”ならではの魅力であり、自分、あるいは他人の人生を追体験するような感覚すらあります。
特別な機材は何も必要ない

さて、そんなオーディオビジュアルですが、ギズ的に注目したいのはこの作品制作に使われた撮影機材。
それはiPhone 12 Pro Max、ソニーのa7SIIIと純正GM 24-70mmレンズ、数種類のフィルター、そしてマンフロットの三脚。それだけなんです。
a7SIIIとGMレンズはそれなりに高価ではありますが、いまや多くのYouTuberが使っているようなスタンダード機材。そして、誰もが持っているiPhoneですよ。
庵野秀明監督が『シン・ゴジラ』『シン・エヴァンゲリオン劇場版』で活用し、かのスティーブン・スピルバーグ監督も『ウエスト・サイド・ストーリー』において自らiPhoneでビデオコンテ用の撮影を行なっていたというエピソードがあるように、iPhoneはもはやプロの現場でも珍しい機材ではありません。
もちろん、本作『When I Get My Playground Back』においては、パーソナルな手触りを大切にした映像作品を狙っての機材選択でしょうが、それと同時に機材の高性能化・小型化に伴い、業務用機と民生機の境がなくなりつつある現代を象徴するようなセットでもあると感じました。

乱暴に言ってしまえば、この『When I Get My Playground Back』オーディオビジュアルと同じような作品を、多くの人が手持ちの機材で撮影できるというわけでもあります。
いつも使っているスマートフォンと、ちょっとしたミラーレスカメラ1台、そして想像力さえあれば、自分のお気に入りの音楽作品を映像化できちゃうんです。
もちろんそれを広く発表するには楽曲の著作権上の問題は出てくるでしょうが、私的な制作や練習であれば誰にも文句は言われません。
なんなら「自分なら『When I Get My Playground Back』にこんな映像をつける」とチャレンジしてみてもいいかも。
あとは一歩踏み出すか、出さないか。本当にそんな時代が来たんだなと、この映像を観て実感させられました。
Source: YouTube