暗号通貨と環境問題。
ビットコインマイニング(採掘)には大量の電力が必要になります。電力消費で二酸化炭素発生からの地球温暖化は、ビットコインの話題がでるたびセットで指摘されていることです。一部では、マイナー(採掘者)がアメリカに行けば、炭素排出量を減らせるのではという議論がありましたが、どうやらハズレのようです。マイニングの主戦場だった中国が仮想通貨禁止になり、マイナーたちは大移住。結果、マイナーたちの新たな生活の場となったアメリカでは、昨年8月の炭素排出量が2020年の平均値を17%も上回る結果になってしまいました。
安い電力
ビットコインマイニングとエネルギー消費についてのレポートをまとめたのは、Bitcoin Energy Consumption Indexを運営するAlex de Vries氏のチーム。チームは、英ケンブリッジ大学オルタナティブファイナンスセンターが提供する、ビットコインマイナーたちのIPアドレスをもとにロケーションマップを作成(ビットコインネットワーク全体の半分はマップデータに反映できている想定)。チームは、このマップを中国規制前後で比較し、各エリアでの化石燃料&再生可能エネルギー量のデータから、マイナーたちが使っただろうエネルギーを算出しました。
中国はグリーンな国とは言い難いですが、マイナーたちにとっては都合のいい場所で、夏は四川省や雲南省の安価な水力発電を利用し、冬は場所を変え石炭火力発電のエネルギーを用いるなど効率よく使い分けていました。しかし、中国が暗号通貨を規制を設けたことで、安価なエネルギーとはさよなら。マイナーたちは大移動し、去年の4月から8月のマイナー主戦場はアメリカになったのです。(アメリカの次はカザフスタン、そしてロシア。)
Alex de Vries氏はマイナーたちの動きに対してこうコメント。「彼らは環境なんて少しも気にしてないですよ。気にしてるのは安くて安定した電力を使えるかどうかだけ。使えるところがあれば、どこへでも行きますよ」
環境にやさしい?
アメリカ国内でも、特にケンタッキー州、ジョージア州、テキサス州にマイナーが多く移住しており、主な理由はビットコインマイニングを州が推奨(免税措置など)しているからだそう。問題は、これらのエリアのメインエネルギーが化石燃料、主に天然ガスだということ。中国での水力発電と比べると、天然ガスによるエネルギーでマイニングするビットコインはより炭素集約型であり、理想とするグリーンなビットコインとは真逆の方向に進んでいるのです。
ビットコインマイニングによって、新たなエネルギー開発が後押しされるのではという声もあるのですが、Alex de Vries氏はこれに懐疑的。「たとえばテキサスで2ギガワット多く必要になるとします。この過剰分は再生エネルギーから供給されるわけではないんです。過剰分は化石燃料で補われる。つまり、再生エネルギー開発を後押しされるわけではないんですね。マイナーたちが欲しいのは今日の電力です。5年後のことなんて気にしてません。今あるものを使うだけです」
今後さらなるリサーチが必要とはいいますが、どうやらマイナーたちがアメリカに行けばビットコインは環境に優しい存在になるという説は、今のところただの都市伝説だったようですね…。
Source: Joule