分断しまくりの米連邦議会が全会一致で法案を可決したことの方がサプライズだよ…。
米連邦議会上院が一部の州や地域を除く全米を夏時間だけにする法案を全会一致で可決しました。下院を通過してバイデン大統領が署名すると、2023年の春に夏時間になったらずっとそのまま、秋になっても標準時には戻らなくなります。それにしても、夏時間で固定するということは標準時間をキルしちゃうんですよね。なんてワイルドなことをするんだ。
夏時間ってなに?
夏時間は20世紀前半からあるにはあったんですけど、ちゃんと法制化されたのは、1966年に連邦議会で「統一時間法(Uniform Time Act)」が可決されてから。
その後、夏時間の期間延長などの変更を経て、現在は3月の第2日曜日の午前2時から、11月の第1日曜日の午前2時までを夏時間、それ以外の期間を標準時間としています。3月の第2日曜日には午前1時59分59秒の1秒後が午前3時に、11月の第1日曜日には午前1時59分59秒の1秒後に1時間戻って午前1時になります。
このヘンテコな現象を「Spring forward, fall back(春に進んで秋に戻る)」と表現しますが、個人的には春に奪われた1時間を利息なしで秋に返してもらうという感覚です。この法案が施行されると、来年の春に奪われる1時間は永遠に返してもらえないことに……。
全米が夏時間を採用しているわけじゃない
冒頭で「一部の州や地域を除く」と述べましたが、夏時間を採用していない州や地域もあるんです。州単位だと、ハワイには夏時間がありません。アリゾナ州はややこしくて、州自体は夏時間を採用していないのですが、ナバホ族の保留地は夏時間を採用しています。そのナバホ族の保留地に囲まれているホピ族は夏時間を採用していません。また、米領のアメリカサモア、グアム、北マリアナ諸島、プエルトリコ、米バージン諸島でも夏時間は採用されていません。
夏時間には弊害も
なんのための夏時間なのかは、いまだに納得できないままです。夕方の明るい時間を長くすることで屋外での活動が増えれば、家庭での消費電力が減るから電気代の節約になるという説がもっともらしく唱えられていますけど、それを裏付ける根拠はありません。
ネガキャンをするわけじゃありませんが、春と秋に時間を進めたり戻したりすることでシステム管理の手間やコストはかかっちゃうし、健康にも良くありません。米バンダービルト大学の神経学者によると、夏時間によって睡眠障害や脳卒中、心臓発作の発生件数が増加するそうです。確かに、時間が変わったあとは生活のリズムが狂って睡眠不足になったり体調がおかしくなったりすることがあるわ…。
夏時間になると、筆者が住んでいるダラスでは日の出が7時半過ぎになるんですね。11月に1時間戻ると、冬至の日の出は7時半くらい。ところが、夏時間のままになると、来年の冬至は日の出が8時半頃になっちゃうんですよ。徒歩や自転車での通勤通学時に真っ暗って危なくないですか? 筆者は暗い時間帯に通勤で自転車をこいでいるときに自動車に当て逃げされてから、自転車も自分もめっちゃ光らせて目立つようにしたんですけど、それでもひかれそうになりまくったので、自転車で通勤通学する人たちの事故が増えないかちょっと心配になります。
下院と大統領がどう出るかは不明
上院を全会一致で通過した「Sunshine Protection Act(サンシャイン保護法)」が施行されるためには、下院でも可決されたうえでバイデン大統領が署名しなきゃですが、下院で多数を占める民主党のナンシー・ペロシ下院院内総務と大統領はまだ姿勢を明らかにしていません。
ここテキサス州では、州議会に「夏時間のままにするか、標準時間のままにするか、州民に住民投票で決めてもらおう」とする法案が過去に提出されていますが、一度も議会で可決されたことがありません。
時計を進めたり戻したりするのが面倒と言う人もいますけど、我が家ではそれとは比べものにならないくらい面倒な「秋に時間が戻ったときに猫たちが1時間早くご飯を要求してくる問題」が解消されそうなので、どっちかに固定されるのはウエルカムです。
できることなら標準時間で固定してほしいところですけど、時間が変わったあとの睡眠不足と体調不良がなくなりそうなのはうれしいかも。
Reference: Reuters, 米運輸省, BloombergCNN, The Conversation, WFAA