遺伝子組み換え蚊20億匹が野に放たれる。米環境庁がGOサイン

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遺伝子組み換え蚊20億匹が野に放たれる。米環境庁がGOサイン
Photo: Shutterstock

蚊減らしの尖兵 。

英Oxitec(オキシテック)社が開発した遺伝子組み換え蚊(GMO蚊)「OX5034」 が米環境庁(EPA)の認可を取得し、いよいよフロリダ州と並んでカリフォルニア州の一部地域でも野に放たれることになりました。

噛まない蚊だけになるメカニズム

この蚊はネッタイシマカ(Aedes aegypti、写真)のオスに操作を加えたもの。このオスと天然のメスが交配して生まれたメスの幼虫は、成虫になれず死んでしまうよう、遺伝子に細工がしてあります。人間の生き血を吸うのは産卵前の栄養補給が必要なメスだけなので、このオスが広まれば、もう蚊に噛まれて病気をうつされることもなくなるってなわけです。

認可の内容

昨年、EPAと自治体の許可を得て行なったフロリダの実証実験では、フロリダキーズ諸島蚊駆除区と協業し、州内一部地域で数百万匹の遺伝子操作蚊を放ちました。今回はフロリダの実験を継続しながらカリフォルニアに拡大、2州で計20億匹放ってOKとGOサインが出たかたちです。

「EPA認可取得の坂をまた乗り越えることができて大変光栄です。これもひとえに国・州・地域の関係各所との強固な連携の賜物です」とGey Frandsen CEOは声明で語っています。

地元には不安の声も

種を根絶やしにする害虫駆除は俗に「不妊虫放飼法(Sterile Insect Technique: SIT) 」と呼ばれ、過去にもラセンウジバエの駆除で応用された実例があります。ですが、フロリダでは「GMO蚊の来襲」への住民の反対が根強く、環境や人体に与える影響は未知数だと抗議する団体もあり、また、国・自治体から事前に何も知らされていないという不安の声があるのは事実です。

「成虫するメスもいる」という論文は根拠希薄みたい

そんな不安を煽るかのように2019年9月には「Oxitec社の遺伝子操作蚊の交配から生まれたメスなのに、幼虫期に死滅することなく成虫してしまう個体もブラジルで確認された」「その遺伝子が残りの蚊にまで広まっている」とする論文が公開されて論議を呼びました。

ただ、この論文については、その後の査読ででだいぶ不明点が指摘されたようです。いま確認したら、根拠不明な表現を改めるよう編集部から修正を求めたのに、論文執筆者の間で意見が分かれて、修正に応じてもらえないままになっていると、2020年3月付けの編集後記で補足されていました。

リスクはないの?

いちおうOxitec社から公開されたデータでは、対象地域における蚊の個体数激減が示されています。これを見てブラジル政府も2020年には蚊の使用を正式に許可しています。気になる人体や動物、環境に与える影響ですが、「リスクはないと思われる」というのが米EPAの主張です。

媒介蚊がきたその日のために

地球温暖化が進むなか、媒介蚊は世界的に急増の一途です。遺伝子操作以外にも、細菌に感染させて生殖能力を失わせたオス蚊を野に放つ試みなんてのもあり、蚊の駆除やデング熱発症率を抑える面で同様の成果を挙げています。限定的な条件で実証を重ねて、使える手はなんでも使えるようにしておかないと、というのはわかるんですけどね。

蚊を放つには、国レベルのEPA認可に加え、各自治体の許可も必要。そちらはまだ許可されると決まったわけではありません。たとえばEPAの認可が下りたのに自治体の許可が得られなくて実現に至らなかったテキサスの例もありますしね。カリフォルニアはGO出すんかな…と思って検索してみたら、もう「こんな人類史上最大のGMO蚊のばら撒きには断固反対!」とバークレイの環境保護団体が反対運動してました。訳者の住む地域も同じアラメダ郡なので、住民運動のプロが集まってるバークレイに乗っかってるぶんには、ここも対象から外れそうです。

てか、よくよく当局に話を聞いてみると、そもそもここ、ネッタイシマカは1匹もいないので、放ちようもないらしい…。これは反対運動の人たちも知らなかったそうで、まさに「走りながら考える」状態。実証は大事なことなので、そちらは賛成、ここでやるのは反対、と改めてましたよ。

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