研究者「最新のトラッキング装置を取り付けたぞ!」 鳥「こんなのやだ!取っちゃえ〜!」

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  • author George Dvorsky - Gizmodo US
  • [原文]
  • 山田ちとら
研究者「最新のトラッキング装置を取り付けたぞ!」 鳥「こんなのやだ!取っちゃえ〜!」
今回の研究とは直接関係のないカササギフエガラス。幼鳥に親がエサを与えています。日本のカササギとは別種 Photo: Toby Hudson

オーストラリアの研究者たちが革新的なトラッキングデバイスを開発し、その性能を試そうとカササギフエガラスに取り付けたところ、ものの見事に出し抜かれてしまいました

学術誌「Australian Field Ornitology」に発表された研究によりますと、カササギフエガラス(Gymnorhina tibicen)の飛行距離や社会動学を研究するために取り付けられた最新の追跡装置は、カラスたちがお互い協力し合って装置を次々に外していくという予想外の展開となり、実験は続行不可能に。ただ、このことはカササギフエガラスが利他的に行動できる可能性を示唆しているとともに、非常に高度な問題解決スキルを持っている証拠にもなったそうです。

予期されていなかった「救助行動」

動物がお互いの苦境を察して、自分には直接なんの利益もないのに助けてあげる行為のことを「救助活動」というんだそうです。救助活動はアリによく見られるほか、セーシェルヤブセンニュウという鳥にはお互いの体からトゲミウドノキのネバネバした果実を取り除く行動が確認されているのだとか。

今回の研究は「カササギフエガラスの救助行動を初めて確認できたケースかもしれない」と研究者たちは話しています。もともと意図していた研究結果とはぜんぜん違ったんですけどね。

最新型の追跡装置

本来、この研究はカササギフエガラスの動向について調べる以外にも、新しく開発された追跡装置の性能を試す意図がありました。というのも、これまで鳥類研究に使われてきた追跡装置には改善の余地があって、小型から中型の鳥には大きすぎるし、かといって追跡装置を小さくするとデータ容量やバッテリー寿命が限られてしまったり、再使用できなくなったりといろいろ問題があったそうなんです。

今回導入された新型装置は、そういう意味で画期的でした。重量わずか1グラムほどにして、ワイヤレス機能が搭載されているため充電とデータの送受信がスムーズに行えるように。また、リュックみたいに背負うデザインに改良され、磁石の操作で着脱できるように工夫されているため、実験が終わった後に鳥たちをまた捕まえてトラッカーを外す、という面倒な作業も不要になったそうです。

もちろん耐久性も抜群。頑丈なので「磁石か、すごくよく切れるハサミ(研究者談)」なしでは簡単に外せない設計になっていました。この画期的な新装置を使えば、効率よく大量のデータを集められるはず!と、鳥類研究界の期待がかかっていたわけです。

いとも簡単に離脱

そこで、研究者たちはまず野生のカササギフエガラスを餌付けすることから始めて、そこから5羽にこの新しい追跡装置を取り付けることに成功しました。研究の雲行きが一気に怪しくなったのはそこからです。

5羽目に追跡装置を取り付け終えたものの10分後には、すでに成鳥のメスが自分より若い鳥の追跡装置を取り外そうと懸命に試行錯誤し始め、やがて成功しました。その後も同じようなパターンが続き、ついに3日目には最後の追跡装置がリーダー格のオスの背中から外されました。

これはすべて同じ鳥の仕業だったのか、それともほかの鳥も加勢していたかどうかはわからないそうなんですが、研究者たちはこれを救助活動の一例と解釈しているそうです。なにしろ、カササギフエガラスたちは「積極的に助けを差し伸べ、積極的に助けを受け入れられる(研究者談)」ことを見せてくれたわけですからね。

高度な知性が共同作業を可能に?

この行動は、カササギフエガラスの持つ高度な問題解決能力を示している、と研究者たちは論文内に書いています。

追跡装置を外すために、カササギフエガラスが装置の様々な部分を試し、最終的にもっとも弱い部分を集中的に狙ったのか、それともただ装置が壊れて外れるまで突き続けたのかは、明らかではありません。もし前者であったとすれば、認識の柔軟性共同作業の中で学びなから問題解決する能力を持ち合わせている可能性があります。今後さらなる研究を重ねない限りは、弱い部分を狙ったのか、ランダムだったのか、ある程度システマチックな行動だったのかについては確証を持てません。

しかしながら、カササギフエガラスの協力的な行動性を知るために、今後も認知的問題解決能力について、特に仲間を助けるという意味合いの中で研究を進めていくことが必要です。加えて、我々からの提言としては、今後高度な認知能力ないしに協調性を持つ動物の追跡を試みる場合は、その動物が協調性を以って装置を外すという可能性も考慮すべきと考えます

研究者は心してかかるべし

社会的な動物の多くには高度な知性と問題解決能力が見られます。このような状況下においてお互いに協力し合うのは個の生存に有利に働きますし、ひいては強い個体の集合体として集団全体の生存も有利になります。

十数羽の群れで暮らすカササギフエガラスの場合、縄張りを守ったり、雛を育てるために協調することは有利なのでしょう。おそらく、今回取り付けられた追跡装置はやっかいな寄生虫かなにかと思われたんじゃないでしょうか?群れにとって脅威になるから、みんなで協力し合って除外したのかもしれません。このようなカササギフエガラスたちの行動は、研究者たちが予期していないものでした。

でも科学の実験ってそこがおもしろいんですよね。今回の研究も当初望んでいたようなデータは得られなかったけど、結果的には興味深い発見がありました。

そうそう、研究者たちは今後のアドバイスとして、実験前に小規模の予備実験を行うことも推奨してます。必ずしも研究者の思惑通りに事が運ぶとはかぎりませんからね。

Reference: Australian Field Ornithology

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