火星の地表サンプルを持ち帰る計画、地球に届くのは2033年以降になりそう

  • author George Dvorsky - Gizmodo US
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火星の地表サンプルを持ち帰る計画、地球に届くのは2033年以降になりそう
地表サンプルを、火星の周回軌道で待つESA開発の宇宙船へと運ぶNASAのロケット『マーズ・アセント・ビークル』のイラスト|Image: NASA

リスク分散、大事。

火星の地表サンプルを地球に持ち帰るというNASAと欧州宇宙機関(ESA)の共同ミッションが、リスクを懸念して一部変更されることになりました。

NASAの科学ミッション本部のトーマス・ズルブチェン副本部長がこの件を発表したのは、3月21日に全米アカデミーズの宇宙科学部会で行ったプレゼンでのこと。NASAとESAが協力しているマーズ・サンプル・リターン・ミッションは、火星の地表サンプルを地球に持ち帰って分析するという人類史上初の試みです。このプロジェクトは既に進行中で、NASAのローバー「パーサヴィアランス」が既に10個のサンプルを火星のジェゼロクレーターから採取しています。

当初は2026年に新たなローバーとアセント・ビークルを1機のランダー(着陸機)で運ぶという計画でしたが、NASAとESAはリスクを減らすためにそれらを2つの異なるランダーに分けて送るという判断を下しました。このアプローチではランダー2機の打ち上げが2028年、火星サンプルの帰還が2033年とスケジュールは後ろ倒しになります。なお、ESA開発のオービター(周回機)は2027年に打ち上げられる予定。ズルブチェン副本部長は予算についてコメントしませんでしたが、44億ドル以上かかることになるかもしれません。

上記の変更点を除けば、ミッションの内容はさほど変わっていません。着陸に成功した新たなローバーがパーサヴィアランスの保存していたサンプルを回収して、改定案のとおり別々に到着していたマーズ・アセント・ビークル (MAV) 内に詰め込みます。サンプルはロッキード・マーティン社開発のMAVによって火星の周回軌道に打ち上げられ、ESAの地球帰還オービターに回収されて地球へ運ばれるという流れ。ミッションアーキテクチャの変更は、プロジェクトのあらゆる面が固まっていない開発のまだ初期段階にあったため大した問題ではありません。

計画が見直されたのは当然のことでしょう。というのも2020年11月には独立した審査委員会が、開発にかける時間を増やすために打ち上げを遅らせるべきで、ESAとNASAはサンプル回収ランダー(回収ローバーとMAV)を2つのミッションに分割すべきという勧告を提出していたからです。

ズルブチェン副本部長は前述の勧告を、宇宙科学部会での話の中で繰り返していました。彼のプレゼンによると「代わりのランダー2機のアーキテクチャはプログラムの技術的な成功確率を大いに向上させるだろう」、一方で回収ローバーとMAV両方のコンポーネントを1機のランダーで届けようとする計画は「突入、降下、着陸(EDL)の伝統を壊しハイリスクである」そうです。

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改訂された、今後のミッション図解
Image: NASA

確かに1機のランダーで済ませる案だと、NASAはリスクを背負うことになります。ズルブチェン副本部長は、「大型単一ランダーアーキテクチャは、直径の大きなヒートシールドを収容できる幅の広いペイロードフェアリング、証明されていないEDL性能、そしてクルーズ・ステージでの電気推進を要する」と説明していました。その一方、「2機ランダーアーキテクチャはパーサヴィアランスの成功を基に作られ、2020年代のうちに完成できる」とのこと。ミッションを分割してランダーを2機用いる見直し案には、2021年2月18日にパーサヴィアランスの着陸を成功させたのと同じテクノロジーを活用できるのです。

独立審査委員会は2020年の報告書に、NASAの当初の予算30億ドルはあまりに低く、マーズ・サンプル・リターン・ミッションは38~44億ドル近くになる可能性があると記載していました。ズルブチェン副本部長はプレゼンの中でコストについて触れなかったので、このミッションの予算は不明のままです。

ようやく形になり始めたこのミッションが史上もっとも複雑なものになるのは確実ですが、その価値はあります。科学者たちは火星の地質学について学ぶだけでなく、ジェゼロクレーターから採取したサンプルを間近で研究し、生命の痕跡を探せるのですから。

Source: National Academies, NASA(1, 2),