自然に分解されて素材として再利用できる。ゴールドウインが開発したタンパク質素材のフリースやデニムがかっこいい!

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  • author 山田ちとら
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自然に分解されて素材として再利用できる。ゴールドウインが開発したタンパク質素材のフリースやデニムがかっこいい!
Photo: 山田ちとら

循環する社会をめざして。

株式会社ゴールドウインが、環境に配慮したフリースデニムテクニカルアウターウェアを発表しました。特別な人工タンパク質で作られているため、生分解されるそうです。しかも綿などの天然素材よりも分解されるのが早いらしい!

ゴールドウインといえば、2019年8月に同じくタンパク質由来の素材を用いた「MOON PARKA」を発表したのが記憶に新しいところ。その後もTシャツ、セーターなどの製品を次々と発表し、今回の新コレクション「Goldwin0(ゴールドウインゼロ)」に至るまで、一貫して環境になるべく負荷をかけないアパレルをデザインし続けてきました。

理想的な繊維を遺伝子レベルから設計

Image: Spiber Inc.
Brewed Proteinポリマーと各種加工工程で成形された素材の例

特別なタンパク質の名は「ブリュードプロテイン(Brewed Protein)」。微生物に植物由来の糖を与え、発酵させることで作り出される超高機能構造タンパク質を用いた新素材です。ゴールドウインとバイオベンチャー企業のSpiber(スパイバー)株式会社が共同開発しました。

Image: Spiber Inc.
本社ラボにおける小規模微生物培養装置

そもそもタンパク質はたった20種類のアミノ酸でできていて、アミノ酸の配列が変わるだけで筋肉・爪・毛髪・免疫の抗体・ホルモンなど、何万種類もの物質を形作ります。

Spiber取締役兼代表執行役の関山和秀氏(中央左)とゴールドウイン代表取締役社長の渡辺貴生氏(中央右)

そこで、Spiber取締役兼代表執行役の関山和秀氏とゴールドウイン代表取締役社長の渡辺貴生氏は考えました。クモの糸(これもタンパク質でできています)を徹底的に研究し、アウトドアウェアに望ましい性質だけを持つタンパク質を合成できれば、理想的な繊維を作り出せないか?と。

Spiber社はクモの糸の性質とそれに関連しているアミノ酸配列、それをコーディングしている遺伝子情報を調べて、膨大なデータベースを作り上げました。その中から「軽さ」「強靭さ」などの望ましい性質だけを持ち、かつ生産性が最適化されたアミノ酸配列を持つタンパク質を設計して微生物に培養させることで、ついにブリュードプロテインを作り出すことに成功しました。

資源として再利用できる素材

ブリュードプロテインと綿の環境分解性を比較した実験結果。ブリュードプロテイン(真ん中の線)は30日以内に70%以上が生分解されています

タンパク質は土に埋めたり、海に沈めたりしても微生物が「食べて」くれるので自然に分解されます。さらに、生分解されてバラバラのアミノ酸になれば新たなタンパク質の材料として再利用できるメリットもあり、まさにいいことだらけ

テストした結果、ブリュードプロテインは自然由来の綿糸よりも生分解性が高かったそうで、たとえ海や山に捨てられたとしても微生物が分解し、いずれはアミノ酸に還るそうです。

このようなタンパク質の特性を巧みにを用いた「Goldwin0」のウェアは、あらかじめ分解されることを前提に設計されています。自然の循環システムに組み込まれるのでゴミになりませんし、サステナブル。

新しいフリース素材はふわ気持ちいい

そして、ファッショナブル!

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実際に触れてみたブリュードプロテイン製のフリースは、従来のフリースとは似て非なるものでした。空気を編み込んだような弾力性があり、見た目はブークレニットのようで手触りはふんわりなめらか。実際に着てみたらとても暖かそうでしたし、洗ってもマイクロプラスチックを排出しないので罪悪感フリー。純粋に欲しくなりましたね。

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デニムジャケットは横糸がブリュードプロテイン、縦糸が綿糸で織られた素材で作られていて、内側のタグを見ないかぎりは従来のデニム素材とまったく見分けがつきません。こちらも手触りがなめらか。デニム特有のゴワゴワ感はありませんでした。

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テクニカルアウタージャケットはあえて色を染めないことで、ブリュードプロテインが本来持つ絹のような光沢と、美しい生成色が活かされています。表面素材にはちょっと硬さがあって、繊維の密度が高い感じ。撥水加工も施され、機能性においても従来のテクニカルウェアと遜色ないそうです。

唯一の弱点はコスト

「Goldwin0」コレクションは楽天ファッションウィークでも発表され、注目を浴びました

これだけいいことづくめのブリュードプロテインなんですが、目下の課題はコスト。ジャケット1着がおよそ15万円という価格帯です。もちろん今後量産化が進んでいけばコストは下がるでしょうし、実際Spiber社は海外にも工場を建設中です。

そして何より、今後社会全体が循環型に転換していくことができれば、今までゴミとして捨てられたり燃やされていたモノ(コットンや麻など自然素材の衣類 )を分解して糖を作り出し、それを原料としてブリュードプロテインを作り出すことで、さらなるコストダウンが期待できます。

循環型社会を実現するキーテクノロジー

2022年4月1日から「プラスチック新法」が始まりましたね。プラスチックが作られる・使われる・捨てられる段階すべてにおいて3つのR(Reduce, Reuse, Recycle)を促し、さらに再生可能な資源として活用(Renew)することで、海洋プラスチック問題気候変動問題に立ち向かっていこう!という社会全体の取り組みとなりそうです。

プラスチックは衣類にも多く使われています。ポリエステル製の合成繊維はシャツやブラウス、フリースなんかにも使われている身近な素材である一方で、着ているだけで大量のマイクロプラスチックを放出しているとする研究結果もあるぐらい、環境に大きな負荷を与えています。そのせいもあってアパレル産業は「世界2位の環境汚染産業」とも言われているぐらいです。

なんとか合成繊維に頼らずに服を作れないか?この問題にいち早く取り組んできたゴールドウインが手に入れた理想の繊維、ブリュードプロテイン。

これから30年後ぐらいの未来には、「昔は服ってゴミとして捨ててたらしいよ」「うっそ、ありえなーい!」みたいな会話があたりまえに交わされる時代が来るのかもしれません。人間が作りだすモノが自然の循環の中に組み込まれ、ゴミが資源となる世界を目指して、今後もゴールドウインとSpiber社の躍進は続きそうです。

Reference: Goldwin, Spiber Inc., 環境省
Photos: 山田ちとら