どっちに転んでもポイズンピル。イーロンの買収提案でどうなるTwitter?

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  • author satomi
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どっちに転んでもポイズンピル。イーロンの買収提案でどうなるTwitter?
受けるも地獄、断るも地獄
Image: Shutterstock.com

420(フォー・トゥエンティ)の冗談で終わるのならいいけど…。

「1株=54.20ドル、総額430億ドル(約5兆4400億円) で全株買うから非公開会社にするってのはどう?」と長者世界一のイーロン・マスクから買収提案が舞い込んで、大揺れのTwitter(ツイッター)。

提案がツイートで14日早朝公表されるなり、ツイッターは緊急役員会を招集。同じ日の午後2時にはパラグ・アグラワルCEOが全社ミーティングを開いて、「会社が人質に取られたわけではない、落ち着こう」と語り、動揺を鎮める作業に追われました。

株は14.9%以上買わない条件で、取締役指名を受け入れて円満だったのはなんだったのか…? 証券取引委員会(SEC)への提出書類も、13G(経営に関わらない意思表明)という種別から13D(経営に関わる意思表明)に書き直して罰金を免れたイーロンでしたが、指名が正式になる9日の朝になって取締役やっぱやめるわーと、まさかのドタキャン。次の瞬間には買収提案ですからねぇ…。

こんなローラーコースターな毎日では、落ち着けってほうがムリですよね。

ポイズンピルで時間稼ぎ

取締役会が全会一致で採択した乗っ取り対抗策は、期限付きの「ポイズンピル」。これは毒薬条項、ライツプランとも呼ばれ、既存株主に時価以下で新株を大量購入できる権利をあらかじめ与えて予防線を張っておく作戦をいいます。

権利が行使されるのは、イーロンが取締役会に無断で15%以上取得した場合。安く新株がどひゃっと出回れば、イーロンの持ち株比率と株式価値が下がるので、うかつに手は出せないってなわけですね。

ツイッターはこの作戦でとりあえず時間を稼いで、買収提案を受けるかどうかを慎重に話し合いたい考えです。

筆頭株主早くも交代

イーロンは今回、株を買い占め始めた1月下旬の水準の54%増しの価格を提示してきました。これは買収提案公表前の価格に18%ほど上乗せしたプレミアム価格。これに釣られてほかの投資家が参加してくれば、値上げ合戦になることも考えられます。

すでに世界最大の資産運用会社Vanguard Group(バンガード・グループ)が、イーロンの9.2%に対抗して10.2%まで買い増しして筆頭株主の座を奪ったとも報じられていますし、ツイッター上空を大口投資家が機を伺いながらブンブン飛び回っているような状態。

また「420」のジョーク?

ではあるのですが、先週末の値動きを見る限り、イーロンの提示価格までは株価が上がっていないので、一般投資家は少し様子見しているようです。

なんせ提示価格は54.20ドルで、また「420(大麻を指す符牒)」が入ってます。イーロンは2018年にも「Tesla株を1株420ドルで100%買って非公開会社にする」ってツイートして株価の急騰を招き、取引が一時中止になるほどの大狂乱だったのに、後で「購入資金は用意した」というのが嘘だったという疑惑が浮上。SECに罰金4000万ドル(約50億6600万円。2000万ドルと思われていましたが、実際にはその2倍)払わされていますから、今回も半分本気じゃないと警戒されているんでしょう。

アメリカの反応

イーロン・マスクはパンデミック中に資産が1080%も増えており、世界の長者のなかでも伸びが突出しています。たまたまそれが15日に発表になったこともあって、「金の使い道に困ってこんなことしてるのか!」という呆れた反応がアメリカでは目立ちました。

「言論の自由を守る」という買収目的についても、「なんでも自由に物が言えた90年代のインターネットとはもう時代が違う」(Reddit元CEO)と言われてますし、一連のツイッター騒動を喜んでいるのはデマ拡散でツイッターを追放された右翼とその信奉者、あとはツイッターのAPI廃止で冷や飯を食わされたクライアントソフトの開発者くらいな印象です(風穴を開けてくれるかもという期待感で)。

まあ、暗号通貨界隈ではイーロンによる乗っ取り支持が73%もいて、これにはイーロンもご満悦ですけどね。

イーロン・マスクにツイッターを購入してもらいたい?

「ツイッターをオープンソースにしてコードをGithubで公開する」というイーロン。そういうテクノロジスト的な面だけ見ると、イノベーションが止まってるツイッターにとって悪い話じゃない気もするんですが、投機的な面やMAGA(トランプ支持層)寄りな面、富裕層課税推進のバーニー・サンダースやエリザベス・ウォーレン議員とツイートで戦闘状態なこと考えると、言論メディアのオーナーには不向きと感じるし…。

イーロンの会社になったら、ツイッターやめる人も相当数出そう。かといって、買収を断ったらイーロンが株を手放して株価暴落だし、どっちもどっちです。

イーロン自身は「脅迫ではない」と言ってます。単にツイッターが好きすぎて、過去累々の違反発言で垢バンされたら生きていけないからまるまるお買い上げ…なのかなとは思いますが、どう見ても敵対的乗っ取りですよね。

イーロンは最近とにかくSECと険悪で、買収提案当日も「あのバスターズ(クソ野郎ども)め」と口汚く罵ってニュースになっていました(「420のTesla株爆上げツイートの件では、全株買い上げる資金があったのに詐欺と疑われた。認めないと銀行から資金が止まって、Teslaが倒産の危機だったので、仕方なく示談に応じたのだ」と主張)。イーロンの買収に反対する大株主のサウジの王子ともツイッター上で喧嘩中。多忙を極めています。

「大量保有の申告を遅らせて株を安く買いためて何百億円も儲けた」と批判されてるし、申告が遅れた間に株を手放した投資家からも訴えられてます。それやこれやで、SECは今回の買収提案、かなり注意深く見守っていますよ。

Source: SEC, Reuters, WSJ, Twitter (1, 2, 3), Forbes Japan