Giz Asks: ライトセーバーは実現しません

  • author Daniel Kolitz - Gizmodo US
  • [原文]
  • 山田ちとら
Giz Asks: ライトセーバーは実現しません
Illustration: Benjamin Currie/Gizmodo via Gizmodo US

2021年8月22日の記事を編集して再掲載しています。

何色がいい?

『スターウォーズ』ファンであろうがなかろうが、ライトセーバーはほとんどの方が知ってるはずですし、もしかしたらライトセーバーを模したおもちゃなんかで遊んだことだってあるかもしれません。そして、そんなおもちゃのライトセーバーを振りかざしながらみんな一度は思うのは、「もしこれがホンモノだったなら…!

もしホンモノのライトセーバーが開発されたなら、犯罪に悪用される懸念はひとまず置いておくとして、一大ブームになり得ますよね。でも真剣な話、ライトセーバーって科学的に実現可能なんでしょうか?

というわけで、ライトセーバーの是非についてプラズマを専門に研究している科学者たちにガチで聞いてみました。

おもしろそうだけど、残念ながら現実離れしている

Dennis K. Killinger(サウスフロリダ大学物理学名誉教授)

『スターウォーズ』の世界に登場するライトセーバーは、レーザーかレーザー光線の一種と解釈されることが多く、焼いたり、切ったりしてどんな物や敵にもダメージを与えられるようです。

1960年に発明されて以来、レーザーはこれまで様々なタイプが開発され、様々な用途に使われてきました。たとえば0.001ワットの赤いレーザーはスーパーのレジなどで商品をスキャンするのに使われていますし、目に無害な1ワットの赤外線レーザーは建物や道路をマッピングするためのLiDAR(Light Detection And Ranging=光による検知と測距)技術に、またさらに大きなスケールではオゾンホールの大きさや大気中の二酸化炭素濃度を計測するリモートセンシング技術に使われています。焼く/切るというところでは、すでに車のボディーを溶接したり、金属プレートを切断したりするのに工業用レーザーが使われていますね。あと、すでにたくさんの色と波長のレーザー光線が開発されていますから、ここは実用化できそうではあります。

ただし、これらのレーザーにはスーツケース大で重さ20kg超のバッテリーが必要となってくるので、ライトセーバーのように縦横無尽に振りかざす用途には向いていないでしょうね。

ライトセーバーが実現不可能だと思われるのは、質量を持った棒ないし剣が敵を物理的に「打ったり」「切ったり」できる点です。それから、映画ではライトセーバー同士が鎬を削ったり、ぶつかり合ったりするアクションが音響によって演出されていますよね。独特の「ブウゥーーン」という音が鳴り、ぶつかり合う時も音でわかるようになっています。

しかしながら、2本の懐中電灯が放つ光の筋をどんなに交差させたところで、音が出るわけでも、物理的な力が働くわけでもありません。光子には質量がないため、レーザーや光の筋にも質量がないからです。これを説明するためによく私が話すのは、「光のビームを使って釘を打つことはできない」というたとえです。この考え方から、2本のレーザー光線がお互いを物理的に「打つ」ことなどできないことが導かれます。

ひとつだけ、科学的に認められた例外があることはあります。2018年にノーベル物理学賞を受賞したアーサー・アシュキン(Arthur Ashkin)が発見したように、特定の条件下においてはレーザーをピンセットのように使ってバクテリアのようなごく小さいものを捉えたり、動かしたりできるのです。ただし、この作用が『スターウォーズ』のトラクター・ビームに似ているとしても、バクテリアを動かすのと宇宙船(SpaceXの「スターシップ」など)をたぐり寄せるのとでは何億も、ひょっとしたら何兆もケタが違ってくるというものです。

ここまでの話をふまえると、ライトセーバーはレーザー光線ではなく、プラズマないしプラズマで満たされた円筒状のものではないだろうか?と議論することもできるでしょう。プラズマとは5,000〜10,000℃、またはそれ以上まで熱されて電子とイオンに分離したガスのことで、たとえば蛍光管を満たしているガス、大気中をほとばしる稲妻や、オーロラを作り出している太陽風などはすべてプラズマです。

しかし、どうやったら棒状に安定したプラズマを空気中に出現させることができるのでしょうか? パワフルなレーザー光線を空気中の一点に集中させて、レーザー誘起ブレークダウン分光法(Laser-induced breakdown spectroscopy)の原理によりプラズマの球を作り出すのも一手です。そうすればプラズマ球は蛍光を発しますから、レーザーの向きと強度をうまく調整することでプラズマを棒状に引き伸ばすことは可能なのではないかと思います。このようなことがすでにラボ内で実行されているのも興味深いのですが、実験に使用されたのはフェムトセカンド(1000兆分の1秒)レーザー……。ですから、光るプラズマセーバーを作り出せるとしてもほんの1000兆分の1秒だけです。しかも、プラズマの性質上、このプラズマセーバーの利用価値も限られたものとなってしまいます。

まとめると、ライトセーバーを物理的に検証してみると、論理的には実現可能と思われる側面もあるものの、武器としての実用化は現実離れしているといって差し支えないでしょう。作ってみるのはおもしろそうですけどね。

レーザー光でできてるんじゃない?だとしたら、問題はいかに光子を空中で止めるかだよね

Mark Csele(ナイアガラカレッジ光通信学教授)

これまで何度この質問をされたことか!

まず私のお気に入りであるレーザーについて考えてみましょうか。ここにパワフルなレーザー光線があるとしましょう。レーザー光のおもしろい特徴のひとつに、視準が合っている=平行な光の束になっている、というのがあります。レーザー光はまっすぐに進み、ほとんど逸れません。ふつうの懐中電灯では、光源をどう調整しようと光は進んでいくとともに必ず広がりを見せますけど、レーザーのコヒーレント光線はびっくりするほど広がりません。すなわち、切る・破壊するなどのパワーを長距離にわたって持続できます(それが10cmであれ、1mであれ、100mであったとしても)。このような観点からは、ライトセーバーに適していると言えますよね。

問題は、光が空中でとつぜん止まったりしないことです。ライトセーバーを作るには、まず光子が1.5mほど進んだあとに、いきなり静止する必要があります。それって現代物理学ではちょっと理解し難い現象なんですよ。絶対に不可能だとは言いません(だって100年前は原子をバラバラにできるだなんて夢にも思われていなかったですから)。けれども、現代における物理学の知識からすると、到底可能だとは思えません。

だったら、光子以外の素粒子を使うのは?たとえばパイオン(パイ中間子)のように、ある一定の距離を進んだら崩壊する(そして「止まる」)素粒子はどうでしょうか?可能性としては、アリです。ただ、ある一定の期間だけ致死性を維持しつつ、とつぜん消えてしまうような素粒子は現在知られていません。もしかしたらいつの日かそんな素粒子を「デザイン」することだって可能になるかもしれませんが、今日では厳密にサイエンスフィクションの領域にのみ限られている考え方です。それにつけても、粒子加速器というのはバケモノのように大きく、何キロにも及びますからね。それだったら、セーバーのようなミニサイズのものにはレーザー光線のほうが適しているでしょう。

となると、現時点でのテクノロジーを考慮した上での最適解はプラズマかもしれません。高温に熱されてイオン化したガス状粒子が大きな磁場によって捉えられている状態のものですね。これにはガスの充填が必要となってきます。さらに、いかに磁場によってプラズマを閉じ込められるかどうかが難しいところです。巨大な磁場が必要となってきますし、巨大なエネルギー源も必要です。それらがするりと手の中に収まりきるとは思えませんけど、まあ、現時点でも論理的に可能ではあるということですね。

そうそう、レーザーに戻りますけど、問題は光が空中でいきなり止まれないってことでしたよね。これ、実はもしかしたらちょっとだけ可能かもしれないんです。いま現在我々が知っている物理学は、光子を結晶の中に「封じ込める」ことは可能だといっています。すなわち、もしこれを応用してセーバーの刃に当たる部分だけを光学的な結晶に封じ込めるのと同じ原理で空気中に封じ込めることができたなら、1m長の光のビームを空中で持続させることは可能かもしれません。加えて、もし出力が充分に高ければ、その光のビームに触れたものすべてを破壊することもできるかもしれません。

まあ、光子をいくつか結晶の中に閉じ込めてみる(すでに実証済)のと、手のなかに収まるサイズのライトセーバーを作り出すのはまったくの別物です。基本的な物理学的理論においては光子を閉じ込めることが可能だと言われてはいるものの、まだまだ理論と実用化のギャップには大きな隔たりがあります。

いずれにせよ、ライトセーバーが地元の武器屋さんに並ぶまでには時間がかかりそうですね(ここは『ターミネーター』でプラズマ銃を買い求めているシーンが目に浮かびます)。

ライトセーバーはプラズマ製。そして問題は磁場を使ってどうプラズマを封じこめるかです

Lorin Matthews(ベイラー大学物理学教授)

ライトセーバーというのは、ウィキペディアを見るかぎりでは磁場によって留められたプラズマなのだとか。これには納得がいきますね。ライトセーバーはあらゆる材質を切り裂くという点でもっとも威力を発揮するものであり、私たちはすでにプラズマトーチを使って分厚い鉄を切ったりしていますから。しかし、プラズマトーチはガス管から流れてくるイオンガスを燃焼する仕組みとなっており、プラズマ炎はせいぜい数センチしかありません。トーチ内部で放出されたイオンガスの粒子は、短距離を進むうちに空気中の中性ガスの粒子と衝突し、エネルギーを失ってしまうからです。

では、問題はどうやってこのプラズマ炎を持続させるかですね。プラズマガスの粒子がいかに空気中の中性ガス粒子と衝突しないように工夫して、よりプラズマのエネルギーが持続する距離を延長できるかにかかっています。

プラズマのように帯電している粒子は、磁気瓶に閉じ込めることが可能です。ただし、磁気瓶の両端において漏れが生じるので、プラズマはすぐに逃げてしまいます。現代における最新鋭の物理学は、磁場を使ってプラズマを閉じ込めることに成功しており、核融合炉はその顕著な例です。円筒形の磁気瓶は両端において漏れるので、それを防ぐために磁力線を曲げてドーナツ状にしています(端がない!)。ただし、ドーナツ状にしてもプラズマが全方位に漏れてしまうのを防ぐことはできません。さらに、そのように磁力線を曲げるには非常に複雑な磁場が必要となってきます(このことが理由でまだ核融合炉が完成していないわけですが、今とりかかっているところ)。

さて、ライトセーバーに話を戻しましょう。磁場が帯電している粒子を閉じ込めるとして、空気中の中性ガス粒子にはまったくなんの影響も及ぼすことはできません。このことがもしかしたらライトセーバーの長さの決め手となるかもしれませんし、ライトセーバーのプラズマの密度が手に近い柄のあたりでは非常に高く、鋒(きっさき)に向かうにつれて低くなっていく原因となるかもしれません。磁場は中性ガスの粒子には影響しないので、中性ガスが磁気瓶に入り込んできてしまうのを防げないのです。

プラズマの光の色は、イオン化されたガスの原子エネルギー準位によって決められます。ですからネオンガスのプラズマは赤い色ですし、アルゴンプラズマはピンクっぽい紫色で、酸素プラズマは緑色となることが多いです。ウィキペディアにはライトセーバーの色はカイバークリスタルによって決まるとありますね。これはレーザーに関しても同じで、レーザー光の色は結晶を構成している物質の電子遷移レベルによって決まりますが、プラズマに関してはそうではなりません。プラズマの色を変えるには、ライトセーバー内に充填されているガスの種類を変える必要があります。力のあるジェダイであればフォースを使って違う色にもできるんでしょうけど、地球の大気を占めているのは主に窒素であるため、紫がかった青に光るでしょう。とはいえ、オーロラの光はじつに多彩な色で輝きますよね。あれは太陽風プラズマが地球の磁場に導かれて大気圏に突入する時、異なる高度によって異なるガスの粒子と衝突するため。ですから、地球の大気圏でも多様な色のプラズマを作り出すことは可能です。

ライトセーバーのもっとも重要な特徴のひとつに、別のライトセーバーによってはじき返されるということがあります。この場合、プラズマは非常に高密度である必要があります。少なくとも鉄ぐらいは。となると、以前説明したとおり磁気瓶のプラズマをとらえておく精度がどれぐらい高いかが関係してきますね。プラズマを封じ込めておくだけでなく、周囲からさらにガス粒子を補填してプラズマの密度を上げられるかどうかが焦点となってきます。(素朴な疑問:ライトセーバーは深宇宙においては機能するのか?)ライトセーバーを司る磁場をうまく構築することによって、ライトセーバー同士の磁場がはじき合うこともあり得るのかもしれませんね。

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