こんなお墨付きなプロダクト、そうそうないですよ。
みなさん、休みの日はどうやって過ごしていますか? 家でのんびり映画やゲームなどのエンタメ時間に充てる人も多いのでは。そんな人に向けて、Bang & Olufsen(バング & オルフセン)からワイヤレスヘッドホン「Beoplay Portal PC PlayStation」が発売されました。
Bang & Olufsenならではの高音質と美しいデザインはそのままに、低遅延ワイヤレス接続に対応したことでゲームの世界にもどっぷり浸かることができる贅沢な一品。
ということで今回は、どっぷり浸かりたいゲームの筆頭『ファイナルファンタジー』シリーズの音楽を手掛け、世界にその名を知られる作曲家・植松伸夫さんにインタビュー。自宅スタジオで「Beoplay Portal PC PlayStation」を手にしながら、予想外のオフの日の過ごしかた、自身の暮らしの中での音楽の向き合いかたを語っていただきました。
植松伸夫
1959年生まれ。神奈川大学外国語学部英文学科卒業後、CM音楽や日活ロマンポルノ作品の音楽制作などを経て、1986年に坂口博信氏に誘われスクウェア(現スクウェア・エニックス)に入社。2004年に退社後も、精力的に楽曲提供やオーケストラコンサート、自身のバンドのライブ活動などを行っている。プログレが大好き。
オン・オフの境界がない生活
──早速ですが、植松さんが仕事をしない日、オフの日の過ごし方を教えて下さい。
それが、僕にはオフの日というものがないんですよ。
──え、ないんですか?
というのも、朝から晩までずーっと何かやっていて、そこには締切がある仕事もあれば、お金には結びつかない実験的な制作もある。なにかしら手を動かしてるんです。
──実験というのは、やはり音楽ですか?
そうですね。いつどこで発表できるかわからないような音楽も作ってます。最近は自分で書いた物語に音楽と絵をつけて、声優さんに朗読してもらうっていうのをやってます。好きでやってるだけで、具体的にどういうかたちで発表するかとか、まったく考えてないんですよね。
──制作活動そのものが生活の一部になっているのですね。そういう実験的に作ったものが仕事になったことはありますか?
物語に絵と音楽と朗読を付けるっていうアイデアは10年くらい前からやってて、それは『ファンタジアン』というゲームに採用されました。
──いわゆる制作をしない、のんびりした日はあまりないのですか?
僕は小学生みたいに時間割りで過ごしてる人間なんですよ。朝6時くらいに起きてこのスタジオに来て7時半まで仕事、一段落ついたら8時まで犬の散歩、8時からはコーヒー飲んだり新聞読んだりして、9時から12時まで仕事。12時から13時までお昼ごはん食べて、17時位まで仕事したらもうビール開けて店じまい、という感じです。
──おお、一日の流れがすごくルーティン化されていますね。
土日も同じような過ごし方です。なので、旅行とかキャンプみたいにどこかに行くような時は、何ヶ月も前から予定を立てています。

──インドアでのリラックス時間はどうでしょう? 映画をじっくり鑑賞したりすることはありますか?
これも悩ましくてねぇ。1日のうちで2時間とか、映画のためにまとまった時間を確保するのが難しくて…。だから、仕事の合間にNetflixとかAmazon Prime Videoで1日15分ずつ見て、1週間でやっと1本見てるって感じですね。
──ちなみにどんなデバイスで視聴されるのですか?
PCで再生してメインのディスプレイに映してます。スタジオにスクリーンもあるんですけど、どうしても仕事モードが途切れちゃうので。仕事の合間にちょっとだけ見るなら、やっぱりPCですね。

──仕事場で息抜きに鑑賞する感じですか。
はい。なので、僕はつまらない男なんですよ(笑)。キャンプに行ったり山中湖の別荘に行ったりはするんですけど、それは人生のごくごく一部で。ふだんは土日問わず、朝から晩まで仕事をしてる気分で過ごしています。
──でも、植松さんからはストイックな仕事人間のようなイメージがあまり無いというか、のびのびと過ごされてるような雰囲気を感じます。
仕事っていうとネガティブな感じがしちゃうけど、そもそも何か作ることが好きだからかもしれません。こないだもカカオ豆からチョコレートを作ってみたんですよ。丸一日かかってやっとチョコレートになったんですけど、ぜんぜん美味しくなくて(笑)。
──急にオフの日っぽいお話...! でも作ることへの好奇心が旺盛で、すごいです。
仕事で作る音楽、プライベートで作る音楽の違い

──映画を見てる時、音楽が気になって集中できないことはありますか?
しょっちゅうあります。職業病で、映画を観ていて「今のアンサンブル、どうなってるんだ!?」って思ったら、すぐに音楽ソフトで試したり。そういうこともあって、良い音楽の映画はあまり観たくない気持ちもありますね。だって僕、ジブリ作品は1つも見てませんよ。
──え、そこはあえてですか?
もう、久石譲さんの音楽には絶対に影響を受けるって確信してるので、ジブリ作品のDVDは全部揃えてるけど、内容は観てません。で、引退したら全部一気に観る予定です。

──音楽を作る側のとき、仕事の制作と、ご自身の音楽活動としてやっている制作とで、何か変えている部分はありますか?
心構えが違いますね。お仕事の時は、みなさんに気に入ってもらえるものを作らないとという意識が常にあります。ちなみに変拍子や転調のような動きが激しい音楽は仕事でしか使わないですよ。個人の制作では、わりとのんきなシンプルな音楽を作ってます。
──おぉ、植松さんといえばプログレのような動きがある音楽の印象があったので、ちょっと意外です。
RPGは60時間くらい遊んだりするじゃないですか。そうなると同じような音楽が流れると飽きちゃうので、バトルのBGMでも色々変えたりしてます。「中ボスが来たけど同じ曲なんだ」とか思われないようにね。
──違う曲だと「お、特別な敵か?」という気持ちになれますね。
じゃあアップテンポの曲であれば良いのかって言われたらそれも飽きてくる。なので、それまでなかったアイデアを盛り込んでみたり、民族楽器を使ってみたり、拍子や転調を加えてみたりしています。
ゲームをもっと良い音で楽しんでほしい

──「Beoplay Portal PC PlayStation」のように最近は高音質なヘッドホン・イヤホンが増えていて、ユーザーが音楽を聴く環境も多様化しています。そういうリスナーの耳の変化に、制作側としてなにか勘案していることはありますか?
うーん、考えなきゃいけないんでしょうけどね、本当は。でも電車に乗って周りを見てみると、iPhoneでゲームをプレイしててもイヤホンやヘッドホンをしてない人、けっこう見かけません?
──見かけますね…。
ですよねぇ。音楽を作っている人間からするとがっかりしちゃいますけど、とはいえハイエンドオーディオで聞いてもしっかり綺麗に聞こえる音楽を作りたいなとは思ってます。僕がゲーム音楽を作り始めた頃は電子音3音しかなくて、音質の良さなどを語れるレベルではありませんでした。それから段々と音質も向上してきて、サンプリング(録音した音源)が使えるようになってきて。でも圧縮率が高くて寂しい音源でしたね。PS2の頃からかな、スタジオで収録した音源をそのまま味わえるようになってきて、そのあたりからゲーム音楽を音質で語る人も増えてきた気がします。
──FFシリーズでいうと『ファイナルファンタジーX』がPS2でしたね。
サラウンドとか5.1chとか、オーディオの規格も色々と登場してきて、僕もアメリカの5.1chのスタジオを見せてもらったこともあります。でも、今もあまり定着してないです。そうこうしてるうちにスマホでゲームを楽しむようになって、電車に乗ってる人たちはサイレントでゲームを楽しむようになっている。電子音から始まって5.1chまでいって、最終的には聴かれないだなんて! ゲーム音楽とはなんなんだっていう(笑)。
──逆に、音楽を聴くユーザーが高音質なヘッドホンを使うことで、ゲーム体験や映画体験は変わると思いますか?
そりゃあもう変わりますとも。極論、映画でもゲームでも没入しきっちゃうと音楽は気にならないし、実際タブレットで映画を見ても感動できます。でも、没入にいたるまでのエネルギー、没入のきっかけになるのは、やっぱり質ですから。映像にしても音にしても、例えば映像が綺麗だったり、音の広がりを感じると、作品に入り込みやすいと思いますよ。
──最初の出会いが良い音だとハッとしますね、たしかに。
良い音とそうでない音は、やっぱり気持ち良さが違います。ずっとスマホでしか音楽を聴いたことがない人には、ちょっと良い音を聴いてほしいなって思っちゃいますね。
「見晴らしが良い音」がするヘッドホン

──今回、植松さんにはBang & Olufsenのワイヤレスヘッドホン「Beoplay Portal PC PlayStation」を使っていただきました。まず、率直な感想はどうでしたか?
音質については、見晴らしが良かったですね。僕は仕事用のモニターヘッドホンを使うとき、音を間違えてないか、楽器のバランスがおかしくないかとかをチェックするように使ってます。なので細部を分解して音を聴くようにしています。
──まさに"モニタリング"な聴き方ですね。
それに対して「Beoplay Portal PC PlayStation」は、高い地点から全体を見下ろしているようでした。いろんな音がよく見えるし、音の品が良い。上品な音と言っても良いかな。ワイルドに鳴るというよりかは、いろんな音が見えやすい。分解して聴こうというよりも、柔らかく肌触りが良い聞こえ方です。
──ご自身の曲も聞かれましたか?
『BRABRA』(『ファイナルファンタジー』の吹奏楽アレンジCD)を聞いてみました。やはり、凛とした空気感の中で各楽器の音が見えるかのようにクリアに聞こえてきます。かといってモニター用ヘッドホンほど分析的ではなく冷たい印象も感じません。とてもいい気持ちで聴くことができるヘッドホンですね。

──装着感などはどうでしょう?
まずデザインがかっこ良いし、パッドも柔らかくて良いですね。普通のヘッドホンよりも遮音性は高いと思います。ゲーミングにも使えるみたいですが、それでいてゴテゴテしていない見た目が僕は好きですね。
──余裕があるというか、高級な佇まいがありますよね。
落ち着いた雰囲気です。レザーの触った感じも良いですし、持っていて愛着が湧きます。

──ノイズキャンセリングもよく効くヘッドホンですが、植松さんは使われることありますか?
昔出張であちこち海外に行ってた時期があって、飛行機ではノイズキャンセリング必須でしたね。自分の疲れにも影響してくるし、音楽を聴くときはもちろん、なんにも聴かずにノイズキャンセリングだけ使ってもいいと思います。
──「Beoplay Portal PC PlayStation」は3.5mmジャックで有線接続も可能なので、無線の規格が古くなったとしても、長く使い続けられます。それもBang & Olufsenらしい美学かなと。
そういうものづくり、僕は好きですよ。

──いっぽうでスタンダードなBluetooth接続のほかに、ドングル(PlayStation用とPC用が付属)を使った2.4GHzの低遅延接続もできるのがミソです。植松さん的に、音楽と映像のズレや遅延についてはどんな考えがありますか?
やっぱり遅延が大きいと鑑賞には影響すると思いますよ。ライブ配信とかの映像でも音ズレするやつあるじゃないですか。歌ってる人の唇と声がズレてると、もう見る気がなくなっちゃいますもん。低遅延、大事ですよ。
音楽、映画、ゲーム。ぜんぶ任せられる、エンターテイメントヘッドホン
──「Beoplay Portal PC PlayStation」はゲーミングヘッドホンと謳ってはいるものの、その低遅延性や音質から、エンタメ全般をまるっと任せられる、エンターテイメントヘッドホン的な使い方が想定されています。ゲームも、そのゲームの中のBGMも、全部楽しみましょう、という感じです。
ゲームのためとかオーディオのためっていう決めつけ方をしてないんですね、なるほど。このヘッドホンを使ってゲームをプレイして、音楽からゲームの世界に入ってもらえるのなら、ゲーム音楽家冥利に尽きますよ。

──植松さんが「Beoplay Portal PC PlayStation」をオススメするなら、どんな人たちにオススメしたいですか?
ゲームやエンタメはもちろんですけど、オーディオ向けとしても充分使えると思ってます。気持ちの良い音が聴けますし、ロックとかクラシックとか色んなジャンルを試してみたんですけど、どれを聴いても音がよく見えました。オーディオが好きな人でも納得できるんじゃあないかな。
──見晴らしがよく、上品な音ですもんね。もし低音や高音がもうちょっと欲しいと思ったら、アプリからイコライザーでも調整が可能です。
あと、これバッテリーが42時間って書いてたけど、そこもスゴイと思いましたよ。飛行機などの移動にワイヤレス系を持っていくと、バッテリーが気になるんですよ。42時間もあればヨーロッパもブラジルにも行けちゃいますね。
※Bluetooth とアクティブノイズキャンセリング利用時、最大42時間 / 同梱ドングル利用時、最大19時間
自分でチョコレートを作り、キャンプを愛し、あえてジブリを見ない作曲家、植松伸夫。
いわば常にオンであり常にオフのような過ごし方でしたが、「Beoplay Portal PC PlayStation」が持つものづくり精神と、いくつも共通点があるように思えました。プロはプロを知る、じゃないですけど、良いものを作り続ける者同士は尊敬し合うものなんだなぁ、と。
お値段5万9900円と少し高級だけれど、ゲームや映画、オーディオなど色んな場面で使えて、かつプロダクトとしても長寿命。これらはガジェットとしてもプロダクトとしてもありがたい要素だと思います。漠然と「良いヘッドホンないかなぁ」と考えているなら、「Beoplay Portal PC PlayStation」を検討してみてください。きっと、あなたのオンとオフの両方を支えてくれる相棒になるはずです。
Photo: 小原啓樹
Source: Bang & Olufsen