まだ進化するのかい!?
米ギズをして非の打ち所がないと言わしめた、ソニーのフラッグシップワイヤレスヘッドホン「WH-1000XM4」。臨場感ある音質に超サイレントなノイキャン、そしてラグジュアリーなデザインなどなど、ノイキャンヘッドホンとはかくあるべしを体現した名機でしたね。
そんな名機の登場からおよそ2年。ついに後継機となる「WH-1000XM5」が登場しますッ! 正直、XM4の時点であらゆる要素が高水準だったし「どこがどう変わるんだ…?」という気持ちでした。
が、XM4とXM5を比較してみると、明らかに違うのです。さっそくハンズオンをお届けしましょう。
サウンドにふさわしいノイズレスなデザイン

カラバリはプラチナシルバーとブラック。デザインはXM4から大きく変化し、パッと見でガチャガチャ感が抑えめになりました。ソニーの人いわく、ノイズレスなデザインを意識したとか。

質感はプラチナシルバーとブラックでやや異なります。プラチナシルバーの質感はワイヤレスイヤホン「LinkBuds」に似た(同じかも?)素材で、ややザラっとした手触り。

ブラックはザラつきはなく、しっとりとしたマット感たっぷりな手触り。XM4のブラックに似てますね。

デザインの違いは並べてみるとよくわかりますね。 パーツ同士が接合する辺が少なく見えるというか、明らかにシンプル化している。

XM4からの可動部についての変更点としては、折りたたみ機構の廃止と無段階のヘッドスライダーの採用。可動部はガタツキを抑えるサイレントジョイントが意識してあります。重量は微減(254g→250g)。

首にかけた状態で見比べてみると…。

こちらも印象がだいぶ違う。イヤーカップの存在感が強調されていないせいか、ヘッドホンとしての主張が抑えめに感じられます。デザイン的にも洗練されていると見て良いでしょう。
バッテリーは最大約30時間(ノイキャンオフで約40時間)、コーデックはAAC、SBC、LDAC。Bluetooth 5.2採用で、3.5mmヘッドホン端子による有線接続にも対応します。
ヘッドホンを脱ぎたくなくなるほど、良い音がする

では、気になる音質のお話。「もともと良かったのにどこを良くするんだろう」って思ってたんですけど、XM5を聞いてからXM4を聞くと、その違いがハッキリと感じられました。XM5のほうが低音がシャープ=ボワっとしなくなり、高域の伸びが聞き取りやすくなってる。低音を聞いたとしても、どんな楽器で弾いているのかまでがイメージできるような感じです。音域全体のバランスはすごく自然になっていて、XM4は低音やボーカルがガツンと来てるなと感じました。
XM5では、新しく30mm径のドライバーを新規開発しています。このドライバーはエッジ部に柔らかなウレタンを、ドーム部に高剛性なカーボンファイバーを配置することで、低域の再現性と高域の感度を向上させているそう。ちなみにXM4では40mmCCAWボイスコイルが使われていて、ドライバー自体は小型化してます。でも低音が物足りないなんてことはなし。これは低音自体の量感の増減というより、不要共振を抑えつつ低音の倍音を再現できていることで、低音のハッキリ感が増してるんだと思います。アコースティックな曲を聞くと顕著でしたね。

リスニングに大きな影響を与えるイヤーパッドの素材には、新規開発のソフトフィットレザーを採用。これ、手触りすんごく良い! よくあるヘッドホンのイヤパに比べてモフモフ感が抑えられていて、柔軟性と反発性のバランスが良い塩梅になってます。見ての通りシワもできないので、音漏れもしにくいし経年使用での破れにも強そう。

同素材はヘッドバンドにも使われています。このヘッドバンドも付け心地すごく良くて、頭が痛くなりにくい。XM5を着けてからXM4を着けると、明らかに頭頂部への押し付け感を感じました。ヘッドバンドは地味ながら快適性に直結する要素ですよね。
人の話し声が、一段階遠くなった
お次はノイキャンのお話。こちらもXM4と比較すると、頭一つか二つ分ほど抜きん出た静寂を感じました。特に強まっていたのが、人の話し声に相当する中高域へのアプローチ。XM4のノイキャンでも充分に静寂を感じましたが、XM5では人の声がさらに遠くに行った印象です。一方で電車などのローノイズへの消音性には、そこまでの開きを感じませんでした(スピーカーからのノイズ再生で検証)。XM4の時点でほどんと消えてるからねぇ。

技術的な進化としては、まずマイクがXM4の左右2基ずつから左右4基ずつに増えたことで集音性が向上(合計8マイクとか多すぎでは…)。さらに、これまではQN1プロセッサーがノイキャンの制御を行なっていましたが、総合プロセッサーV1もノイキャンに対しての演算を行なうようになりました。他にもWalkmanで培った高音質化技術をふんだんに応用し、金入の高音質はんだを使ったり、銅メッキを施した抵抗を採用することで磁気ひずみを排除したり、そもそもの基板レイアウトから見直したりと、職人技な改善も多数。
地味な点ですが、ヘッドホン本体のノイキャンボタンを押してからの、ノイキャンと外音取り込みの切り替え時間が大幅短縮されています(アナウンス音声も流れなくなった)。外界と繋がるか静寂に集中するかが、よりシームレスに行き来できるようになったので、デバイスとしての使いやすさも向上しましたね。外音取り込みの音も極めて自然。
ケースはギュッと薄くできます

同梱のキャリグケースのデザインも大幅に変わりました。ヘッドホンのケースってラウンドした丸いシルエットがありがちですけど、こちらはフラットで面感がある見た目。大きさはXM4のケースよりも一回りほど大きいです。

XM5は折りたたみ機構がないため、収納時はこんなかたちで収めます。というのも、XM4の折りたたみはコンパクトでありつつも使いにくいという声が少なくなかったそう。まぁあの折りたたみ方って、右と左のどっちを曲げるかがわかりにくかったものね。このかたちならその心配もなし。

有線接続のためのケーブルは、ここに収納。また細やかな配慮として、イヤーパッドを収納する場所は、イヤーパッドが押しつぶされないよう高めにデザインされています。イヤーパッド寿命にも配慮した賢い設計ですな。

このケース最大の特徴は、ヘッドホンが入ってない状態であれば押しつぶせること。ケースの至るところに折り紙のような折り目が付けてあり、横から圧力がかかると薄くなります。これならバッグにも収納しやすいし、ヘコみを気にしてデリケートに扱う必要もなし。

端っこはこんな感じで折れ曲がります。デザイン的にも面白いし、かさばりがちなケースのソリューションとしても画期的なのでは?
いざ、さらなるノイズレスの世界へ
個人的に驚いたのは、音質が明らかに洗練されていた点。ソニーのワイヤレスと聞くとどうしても「ノイキャン最強!」をイメージしちゃうんですけど、ノイキャンよりも先に音質について語りたくなるほど気持ち良い音でした。あるいは中高域を消音することで今まで聞き取れなかった繊細な音まで聞き取れるようになったのか。音質とノイキャン、そのどちらもが優れているからこそ実現できたサウンドであることは間違いないでしょうね。
「WH-1000XM5」は、2022年5月27日発売予定。市場想定価格は5万円。歴代WHシリーズでも、もっとも高い初値となりそうですねぇ…。価格も音質もノイキャンも、全部本気。新たなソニーフラッグシップが、ここからはじまりますよ。
Photo: ヤマダユウス型
Source: SONY