「核融合発電の時代はくるの?」専門家に聞いてみた

  • 44,207

  • Twitter
  • Facebook
  • LINE
  • はてな
  • クリップボードにコピー
  • ×
  • …
「核融合発電の時代はくるの?」専門家に聞いてみた
Image: Benjamin Currie (Gizmodo)
Amazonブラックフライデーセール開催中!<いますぐ会場へ>

今のエネルギーを取り巻く状況が持続可能だと言ってるのは、だまされやすい若者と化石燃料企業の重役ぐらい。

気象変動の危機が表面化するよりずっと前から科学の世界では核融合を代替電力に活かす技術の研究が進められてきました。つまり核が融合するときの放熱で電気を生み出す技術です。

実現はもうすぐそこまで来ていると言われ続けて半世紀。核融合は本当に来るのか? 来るとすればいつなのか? 専門家に聞いてみました!


研究費が増え続けていけば、答えはYES

Steffi Diem(ウィスコンシン大学マディソン校工学物理学教授。ペガサスIII実験で革新的な核融合リアクタのスタートアップ技術の開発に専念)

研究費が増え続けていけば、答えはYESで、核融合は未来の電力源になっていくだろう。1990年代から米国内の核融合研究は科学向けで、エネルギー資源の開発ではなかった。核融合の研究は米国外でも盛ん。みな核融合による電力活用に向けて競争中だ。最近はテクノロジーの進化が目覚ましく、米国の核融合学会は核融合エネルギー開発に重点をシフト中。核融合が世界の電力源となる未来はますます身近になっている。越えなければならないエンジニアリングの課題もあるが、核融合エネルギー商用化の日は近い。自分の研究が向かっている未来を思うとワクワクするよ!

核融合には、クリーンでグリーンなエネルギーをゼロ排出で世界に供給するポテンシャルがある。核融合の燃料はエネルギー密度が半端ない。バスタブ1杯分の水に含まれる重水素。これにノートPC2台分のバッテリー(トリチウム造成に使用)に含まれるリチウムを組み合わせて使う。これだけで一生困らないほどのエネルギーが生成できる。汚染もない。これだけのエネルギーを化石燃料で賄おうと思ったら、石炭が230トンも必要。汚染物質は380トンも出る。世界中が再生エネルギーに転換を図る今、核融合がエネルギーの一翼に加わっても何ら不思議はない。核融合なら場所や環境条件に縛られないし、フットプリント(環境に与える影響)もコンパクトだ。燃料は水素同位体なので、幅広く調達でき、基本、尽きることがない。

米国内では、核融合コミュニティ(大学、国立研究所、民間企業)が核融合エネルギー商用化実現に残された課題を特定する2か年戦略プラン策定をちょうど終えたばかりだ。ナショナルアカデミーの報告書(核融合のコンディションをつくることがテーマ)を筆頭に、いくつかの報告書がまとめられた(コミュニティ合意事項レポート、FESACレポート、ナショナルアカデミー縮刷版レポート) 。中心テーマは、発電デモで使える試験運用の核融合発電プラントを設計・建設することで、これは2035年までに実現を目指している。

このように、米国の核融合エネルギー研究は、近年のテクノロジーの進化を足掛かりに、大胆かつエキサイティングな方向に進んでいる。高効率&小型なトカマクの製造、レーザー技術の大きな進歩により、核融合の状況は格段に改善された。添加剤・製造工程も日々進化しており、過酷な核融合の環境に耐えうる、複雑な構造を持つマテリアルやデザインもだんだん使えるようになっている。高性能なエクサスケールコンピューティング(1秒間に100京回の計算が可能)のおかげで、核融合の試運転プラントの設計、および、予想される成果をはじき出す核融合炉全体のモデリングも可能になった。高熱仕様の超電導コイルはもっと小さな炉へのアクセスも提供してくれるし、それができれば核融合電力のゲームチェンジャーになることも夢ではない。民間企業が関心をもって投資をしてくれれば、核融合を気象変動のソリューションとして推進するうえで不可欠なパートナーも得られる。世界初の核融合実証機ITERも実現間近だ。これは、機械を動かすのに必要な消費電力より多くの電力を生成できることを実証する構造になっており、自給自足の核融合反応の実証機となるとの期待がかかっている。

つい先日も核融合の領域では2つの大きなブレイクスルーがあったばかりだ。MITとコモンウェルスフュージョンシステムが高熱超電導体のデモに成功したこと。そして、国立点火施設がレーザー核融合で記録的な収量を達成したこと。話題は尽きない。


あと50年、あと50年と言われ続けて50年

Daniel Andruczyk(イリノイ大学アーバナシャンペーン校原子力・プラズマ・放射線工学准研究教授)

核融合の世界では「あと50年、あと50年と言われ続けて50年」というジョークがあるが、今度こそ来るような気はしている。

おそらくではあるが、この先20~30年で電力源としての核融合技術のリアルな実証が行なわれるだろう。そのゴール到達までの大きな布石となるのが、フランスの国際熱核融合実験炉(ITER)だ。核融合反応を続けるためには、出ていくエネルギーと入ってくるエネルギーがイコールにならなければならなず、これをブレイクイーヴィンポイントと呼ぶのだが、ITERはそれを遥かに上回る、10倍のエネルギー出力にも耐えうる構造を持つ。つまり、50メガワットの熱電力を入れると、500メガワットもの核融合電力が得られるのである。実現の暁には、核融合がq=1のブレイクイーヴンポイントを超えることを実証する初のケースとなる。

誤解のないように書いておくが、この「出力電力」というのは、送電網に送られたり、電力を生成する類いのものではない。この段階ではまだ電気の実証ではなくて、実際にプラズマを起こして、核反応を生成できることを実証するだけのものに過ぎない。

それをクリアできたら、次なるステップは試運転プラントの稼働だ。送電網に電力を供給する初のデモンストレーション。全米科学アカデミーが発表した報告書によれば、米国は2050年までに実現が不可欠とのことだ。もっとも最初からそんなに大それた目標を立ててもしょうがないので、初号機が送電網に送る電力はわずか20メガワット。実証が目的なので数値は問わない。

海外ではもっと壮大な構想もある。ヨーロッパと日本の科学者が目指しているのは「DEMOnstration発電所」と呼ばれるもので、その発電量はドーンと1〜2ギガワット。市街地に実際電力を供給できるような構造のものだ。理論的メカニズムはもうわかっているのだが、技術がまだそれに完全には追いついているとは言えないのが課題。たとえば、核融合炉の建設資材。これは炉内の地獄のような過酷な条件に耐えうるものが必要なのだが、そうなるとコストが半端なくかかってしまう。それも実現の足かせになっている。よって、今後どうなるかは、実現性あるレベルまでこうした建材を改善できるかどうかにかかっている。それについてはわれわれも完全に理解しているとは言い難いかもね。


(比較的)早期に実現しそうな空気ではある

Derek Sutherland(核融合電力開発会社CTFusion, Inc.共同創業者兼CEO)

核融合研究者バイアスが多少あるかもだが、答えはYES。もちろんくる。

今はちょうどこの領域全般がエキサイティングな時局にある。核融合の科学原理の構築に取り組んでかれこれ50年余り。それは主に米エネルギー省出資の研究開発を通して行なわれてきたが、海外からの貢献も大きい。

科学原理の構築が終わり、民間の核融合専門企業が数多く生まれて原理の応用に取り組んでいる。実現可能な商用エネルギー源を開発し、 送電網に配電する日がくると望みをかけて。この10年で純利益を生み出す施設運用を実証する企業が続々現れるだろうし、次の10年(2030年代)に初の商用施設の実現を予定している企業も多い。したがって、万年「未来のエネルギー」で終わる状況は過去のもので、(比較的)早期に実現しそうな空気ではある。

新しいテクノロジーはなんでもそうだが、一番のハードルは最初の設備の実現だ。それさえできてしまえば、次なるハードルは、市場シェアを獲得できる規模まで発電量を上げていくこと。願わくば、2030年代終わりから21世紀半ばにかけて市場シェアが拡大し、化石燃料と従来型原子力発電に取って代わる存在となり、風力発電や太陽光発電とともに脱カーボンの一翼を担い、気象変動打開の風穴を開けてくれればと考えているし、それがわれわれのゴールだ。

技術的なリスクは残る。だが、全体で考えると、プラズマ物理学とコアテクノロジーの前にはそんなリスクも微々たるもの。こうしたシステムのエンジニアリング(熱交換、タービン、圧縮などの技術)にわれわれも研究の重点をシフト中だ。加熱機で何百年も前からふつうに行なわれていることなので、しくみはわかっている。核融合の熱源用にそれをカスタマイズすればいいだけの話。

このように、越えなければならない課題山積なことは確かだが、実現に一歩一歩近づいていることもまた確か。そんな状況だ。


核融合は最終的に世界のエネルギーニーズの大部分を担う存在になる

Carlos Romero-Talamas(メリーランド大学ボルティモア郡機械工学准教授)

答えはYES。核融合は最終的に世界のエネルギーニーズの大部分を担う存在になる。これまでの60年は、核融合エネルギーが現実のエネルギー源になる可能性があっても、懐疑主義とシニシズムがそれに水を差してきた。「核融合の時代まであとわずか20年。永久に、あと20年」というジョークもずっとある(年数はなんでもいい。言う人の数だけパターンがあるが、パンチラインは一緒)。核融合研究の黎明期には、楽観主義が幅を利かせていたのだが、核融合は何十年待っても現れない。ジョークのネタにされても致し方ないところではある。

しかしながら、まったく進歩がないように見える核融合研究をもっとよく知るためには、核融合研究資金の出どころの変遷、増減、停滞にも目を転じる必要がある。金の流れが長期に渡って止まった時期もあるのだ。1970年代、核融合の研究資金は世界全体で5倍に増えたが、80年代に入ると減少に転じ、2000年代に底を打つまで続落が続いた。これだけ研究予算のアップダウンが激しいと、実験の継続もままならないし、経験豊富な人材の確保も厳しい。それが最近ようやく増加に転じ、全体として増加が加速しているのが現状だ。

核融合エネルギー原子炉を稼働するには、高温な炉に長時間粒子を閉じ込めなければならない。こうして粒子同士が正面衝突して核融合する(融合の過程で膨大な量のエネルギーを放出する)ように仕向けるのだ。この密度、温度、封じ込めが、俗に言う「トリプルプロダクト」で、さまざまな原子炉のコセプトから得られる正味のエネルギー量はこの3つで比較できる。過去最高のトリプルプロダクトを誇る炉はドーナツ型のトカマクで、ごく短時間だが、正味ゲインの状態を25年以上前に実現した。装置は設計どおりに動き、長期の正味ゲイン実現への足掛かりとなった。

次のステップは当然、正味ゲインのトカマクへの研究費取り付けだが、これがもたついて、EU・米露日中韓印がかかる原子炉(ITERという)建造を全会一致で承認したのは2006年のこと。 ITERの初実験は当初2016年の予定が遅れこんで、今後4年以内に行なわれる予定。遅れた原因は科学的なことというより主に政治的なことだ。遅れている間にも、既存の設備でシミュレーションと実験を重ねて、モデリングと解明が進み、ITERでもきっと目標を達成できるとの確信を得られたのが不幸中に幸いだ。市販のPCや携帯電話と同じように、核融合関連の実験に向けたコンピューターシミュレーションと診断技術はわずか数年で見違えるほどの進歩を遂げ、コストも低下。詳細が明らかになるにつれ、複雑な物理モデルの精度向上も可能になっている。

核融合炉の最終進化形はITERのような見た目ではない。あんなにサイズもコストも大きいものに市場の消費者は寄り付かないからだ。とはいえ、基幹の技術にも重要な進展があって、超電導磁石(トカマク核融合炉に必要)も大躍進で、わずか10年前には考えられなかったような閉じ込めが可能になっている。これでつくればコスパがよくて市場化が短期で済むような小型核融合炉も夢ではない。気候変動対策とエネルギー資源の脱炭素化が喫緊の課題になったことで、核融合研究への投資熱も復活した感がある。

核融合の商用化を目指す民間企業は増加の一途をたどっている。この20年で、政府や民間の投資家からすでに何億ドルものお金が企業に投じられた。新規ベンチャーの多くは、トカマクとは異なるアプローチに賭けている。成功の暁には、大型発電施設から小型貨物船まで、あらゆるものの動力源となる核融合炉のオプションの幅も広がる。ITERの成果は、核融合コミュニティ全体にとって、極めて重要な意味をもつ。なぜなら、あらゆるコンセプトに応用されている技術が数多くテストされるからだ。初の商用炉までには課題山積だが(エンジニアリング、規制、一般の支持)、ゴール達成に向けた 開発と出資のペースは加速中だ。現状、世界を駆動する核融合炉が実現するかどうかは、どれだけ迅速にコストダウンと商用化を図れるかどうかにかかっている。


数十年で核融合発電の時代がくると考えるのは現実的ではない

Omar A. Hurricane(ローレンスリバモア研究所慣性閉じ込め核融合プログラムのチーフサイエンティスト)

遠い未来、核融合は世界の電力の一翼を担う可能性が高い。今すぐ数十年でそれが起こると考えるのは現実的ではないと思うけど。

ここ数十年の核融合研究の進化は確かに目覚ましいものがあるが、やっとブレイクイーヴンのところまで迫ってきた段階。核融合発電を実用化するには、ブレイクイーヴンを遥かに上回るエネルギーゲインが必要だ。

なぜそんな先の話なのかって? 昔からおなじみの核分裂の発電だって、発電所建設には最低でも10年かかったんだから推して知るべしだ。今はまだ核融合は実験段階と言えるだろう。