また発表なし。アップルのVR/ARヘッドセット、なぜこんなにのんびりしてるの? #WWDC22

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  • author satomi
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また発表なし。アップルのVR/ARヘッドセット、なぜこんなにのんびりしてるの? #WWDC22
Image: Ian Zelbo
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出る出ると言われ続けて7年。

Apple(アップル)のAR/VR/XRヘッドセットは今年もで終わってしまい、期待して待っていた人たちからは「またナシだったか…」「がっかりだ」という声が早くも上がっています。

ハリウッドの映画監督にVRコンテンツの制作を依頼したという話も、OSはrealyOS(rOS)になるという話もなし。カメラは15台だとか、ディスプレイはSONY製2枚+1枚のトリプル搭載だとか、通信規格はWi-Fi 6Eだとか、CPUはダブル搭載だとかの話もなし。

筆者はてっきりティム・クックCEOのTwitterプロフィールとイベントのビジュアルがVRアバターっぽくなったのを見て、くるかー!?と期待してたのだけど…

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Image: Tim Cook / Twitter

あんまり関係なかったね。「今年のWWDCはAR/VRの話題一色になる」というBloombergの直前予想も、よく見ると「出ないけどね」という但し書きが尾っぽについてました。何がどうなって、こんなにのんびりしてるんでしょうね?

VRゴーグル vs ジョニー・アイヴ

Appleは20年近く前からVR/AR系の特許を取りためてきました。社内で開発が本格化したのは2015年ごろです。開発コードネームはN301。現実上にデータをオーバーレイで表示するARゴーグルもコードネームN421として開発しており、そちらは2020年代リリースを目指しています。

VRとARを担当するのはTechnology Development Group(TDG)と呼ばれる部門で、本社から車で15分のサニーヴェイルに独自のオフィスを構え、社内でも選りすぐりの人材が集まっています(今は総勢2,000人)。開発総責任者はMike Rockwell VP(ハードウェア部門元トップのDan Riccio氏に2015年に採用された人)。その指揮のもと、2015年後期からARとVRの人材を1,000人以上採用して最初の試作機をつくりました。

ここまでは順風満帆に見えるんですが、ゲームも動画も写真も音声もVRでやるとなると、従来のウェアラブルの常識では考えられないほどの処理パワーが必要です。放熱がすごくて、とてもゴーグルひとつには搭載できません。しょうがなく、ちっこいMacみたいなハブを用意して、そっちで処理をこなしてワイヤレスでゴーグルにつなぐ仕様にしたんですが、そこに思わぬ方向から横やりが…。デザインチーム率いるジョニー・アイヴから「本体/ゴーグルの2台がないとまともに機能しないとは何事か」と待ったがかかってしまったのです。

もっと処理パワー落としてゴーグルに全部盛ったのつくろうよ、と諭すアイヴ。分離方式なら競合なんて目じゃない性能が出せるのにもったいなさすぎる、と抵抗するRockwell。話し合いは平行線のまま何カ月も押し問答が続き、最終的にはティム・クックCEOが後者の味方について決着をみたとBloomberg Businessweekは2020年に報じていますよ

アイヴはそもそも現実に向き合わないVRには否定的で、どちらかというと現実強化のAR推しでした。それじゃなくても今の子たちは画面にくぎ付けで、周囲の人間はガン無視ですし、VR漬けになったらもっと現実と乖離してしまうのでは…という不安は社内にもあって、デザインチームの社員が少なくとも2人、これで会社を辞めています(NYTより)。

そこで両者の妥協点として、カメラを増やしてXR(クロスリアリティ)のヘッドセットを目指すことにした、ってなことらしい…。どうりでXRという言葉がよく使われるんですね…。

気になる内部情報

それにしてもBloomberg Businessweekの2年前の記事には「初号機は来年発表、2022年リリースだ」というRockwell氏の発言が載っていますが、2年後の今になっても発表がないっていうのはどういうことなんでしょうね…。5月の段階で役員会に実機はお披露目されたとBloombergは先月19日に報じているので、もうモノはできてるはずなのですが、なぜ出てこないんでしょう…。

そう不思議に思っていたら、The Informationが情報筋10名(XR開発チーム元社員が大半)の話として5月17日に気になる内部情報を報じていました。曰く、役員会で実機を披露するのは今回が初めてではなくて、開発開始から1年後の2016年にもあったみたいなんですね。アル・ゴア元副大統領、Disneyのボブ・アイガーCEO(当時)らも同席した初のデモ。披露されたのは、ちいさなサイが机の上に現れて実寸大に大きくなるシーンや、周囲が突然密林の滝になるシーン。

それはいいのだけど、 情報筋によると、使った第1号試作機は既存パーツの「寄せ集め」でMicrosoft WindowsがOSとして使われてるものだったり、HTC Vivesなんかの既存の競合プロダクトに手を加えたものだったのだといいます。ある試作機は重すぎて首がやばいので「小型クレーン」で吊り上げて役員に装着させたんだそうですよ? いやあ…。

初号機から6年。5月に披露された試作機はどんなんだったんでしょうね? 進歩をこの目で見たかった…。

Source: Bloomberg(1, 2, 3, 4, 5), The New York Times, The Information