豊かさの本質を車から学ぶ。シトロエンのウェルビーイングな哲学とは?

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  • author 青山 鼓
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豊かさの本質を車から学ぶ。シトロエンのウェルビーイングな哲学とは?
Photo:橋本越百
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ウェルビーイングなクルマって、どんなクルマだと思いますか。

ギズモード編集長、尾田の愛車はシトロエンC3。小柄な4ドアハッチバックにユニークなデザインを施した個性あふれるモデル。

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ギズモード・ジャパン編集長、尾田と愛車のシトロエンC3。兄弟メディア「ROOMIE」の企画にて

シトロエンのオーナーとなるにあたって、初めてディーラーを訪れたときの担当者との会話や、納車のセレモニー、そして日々クルマから感じるフィーリングといったことから、尾田はシトロエンの哲学を強く感じてきました。それは、豪華さや金銭的な豊かさと、心の豊かさは違うということ。そしてシトロエンを所有したことは心の豊かさを得る体験だったということ。

シトロエンというブランドは、ウェルビーイングを体現する存在だと尾田は言います。なぜ、そんなクルマができたのか。シトロエン ブランドマネージャーの中山領さんとの対話から探ります。

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心が満たされるクルマとは?

尾田:クルマを買うというのは、もちろん高い買い物ではあるんですが、シトロエンは1千万を超えるような超高級車というわけじゃない。そうではない“心が満たされるクルマ”という哲学をシトロエンからは感じていて、それはSDGsとかESG、サスティナブルといった文脈の中でも、ひとつのヒントになりそうです。言ってしまえば、たくさんのお金を使って豪華に暮らすことだけが豊かさでないってことですね。

そもそも、僕がシトロエンに興味を持ったきっかけは自動車評論家の故・徳大寺有恒さんの文章で、自動車は排気量で評価するんじゃなくて、乗り心地なんだって書いてあったんです。スペックじゃないってところにとても感銘を受けてシトロエンが気になるようになった。

それからもうひとつ、スタジオジブリの宮崎駿監督が2CVを自分で運転して職場に通っているというエピソードを偶然NHKのドキュメンタリーで見たんです。1948年に誕生した大衆車を大切に乗り継いでる。おそらく高速道路を飛ばしてじゃなくて一人でゆったりと。ずっと地球環境に関わりの深い物語を作ってきた巨匠が2CVのようなクルマをチョイスしているところになんかじーんときちゃって。

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シトロエン2CV(フランス語:「ドゥ・シュヴォー」、すなわち「ドゥ・シュヴォー・ヴァプ」「2つの税馬力」は、1948年のパリ・モンディアル・ド・ロオートで導入され、シトロエンによって1948-1990年のモデルで製造されたフロントエンジン、前輪駆動、空冷エコノミーカー。
photo : getty image / EmilHuston

実際にはシトロエンというメーカーは、環境問題に関して耳あたりの良いキーワードを使ったコミュニケーションを積極的にする自動車メーカーではないと思うのですが、昔から大量消費に疑問を持つ自動車好きに愛される車というイメージはあって。それでお話を聞きたいなと思ったわけです。

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シトロエン ブランドマネージャーの中山領さん

中山:大きな話なのでちゃんとお答えできるかどうか……(笑)。そして、ひとりの車好きとしての意見も入っていると思って聞いていただきたいんですが。

シトロエンブランドとして、一番気をつけているのはやっぱり尾田さんがおっしゃるようなお金臭さを出さないところなんですよね。経済的な尺度でクルマを売りに行きたくない。それはシトロエンの出自にも関わるところで。

お話にあった2CVで言えば、フランスの農民が苦労なく暮らしができるように作られたクルマなんです。「後ろの席に卵を山積みにして農道を走っても、ひとつも卵が割れないようなクルマを作る」という前提から作られているという逸話もあって。もうひとつ、コウモリ傘みたいな簡単さで、それに車輪を付けて乗れるようなクルマを作ろう、という発想から生まれたのが2CVです。

なので、2CVはフランスにおける国民車の先駆けというところがあると。やはり国民車ということは、より多くの人たちに利便性を提供することが理念になります。

それは新しいところでいうと、フランスでは14歳から乗れる2人乗り電気自動車の「アミ」というクルマがあるんですが、これは地球環境にも配慮したEVであり、都市生活への利便性を高めるモビリティです。

Video: Citroën France / YouTube

ウェルビーイングの要点って、快適さを提供するだけではなくて、心身ともに健康である、つまり心地いい人生や穏やかな人生をみなが過ごせることですよね。アミのような、安価で誰にも乗れるクルマを提供していることが象徴的ですが、シトロエンには、そんな心地よい人生をモビリティの側面からサポートするという発想があります。

尾田:アミは日本円だと100万円くらいですよね。日本にはまだ導入されていませんが、EVというだけで脱炭素ということがフォーカスされがちですけど、小型モビリティという文脈で見ていくと貧困をなくすという要素への繋がりもありますよね。

電気自動車って現状ではやっぱり高価だし、お金がないと乗れないというよくある批判もあったりしますが、アミはその文脈からすっと抜け出している現代版の大衆車ですよね。

中山:はい、日本に導入するにはさまざまな課題があり現状では難しいのが残念なのですが…。 14歳から運転できる小さい車をたくさんの人が運転できるようになれば便利な暮らしがもたらされます。航続距離も思い切って短く設計して、ラストワンマイルを移動するものとして割り切る。実はカーゴタイプのクルマもあるんですよ。配送業者が使えるような。自動車のオーナーに、いかに便利な生活をしてもらうかに集中しています。

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ギズモード編集長・尾田和実

チャレンジ精神=シトロエンの伝統

尾田:そんな大衆に寄り添っている一方で、シトロエンはハイドロサス(ハイドロニューマチックサスペンション)という、サスペンションの金属バネの変わりにオイルと窒素ガスを使って乗り心地を飛躍的に高める技術を、他社に先駆けて市販車に装備していますよね。他にもシトロエンは他社がやらないことを先陣をきってやっている。独自の先進性も魅力のひとつです。

中山:ハイドロサスを備えたDSは1955年ですね。さかのぼって1934年にはトラクシオン・アヴァンと呼ばれる前輪駆動車の先駆けとなるクルマも出しています。さらにさかのぼると1919年にシトロエンが最初に世に送り出したタイプAというクルマは、ヨーロッパで初めて流れ作業による大量生産方式で作られていて、価格も同クラスの他メーカーのクルマの半分程度でした。創業してすぐ、このような画期的なクルマ作りをしていたところからも、チャレンジ精神=シトロエンの伝統といえるでしょう。

尾田:創業者のアンドレ・シトロエンの姿勢には、ジェームス・ダイソンの発想に似たものを感じます。“本人は技術者で、デザインのことを考えて作ったわけではないんだけれど、結果的にデザイン的に評価される”というような。やっぱり機能性を突き詰めて出てきたデザインって美しい

中山:やはり目指したいのはそういうところなんでしょうね。僕の憶測も入りますが、先程申し上げたトラクシオン・アヴァンは、当時の自動車としては非常に車高が低いんです。トラクシオン・アヴァンは当時世になかった前輪駆動車ですが、前輪駆動車は構造的に車高が低くできるんですよ。 やっぱり車高が低かったというのは特徴的でカッコよくて、そんなクルマが生まれたことは象徴的ですよね。尾田さんがおっしゃるとおり、機能に根ざしたところから生まれたデザインです。

また、シトロエンが作る車は、あくまでもアンドレ・シトロエンというか民間企業の意思によって生まれています。バックグラウンドが自由であるということは大きいのではないでしょうか。

尾田:確かに、機能性を追求してできたクルマでありつつ、シトロエンには遊びがあるというか、良い意味でのストレンジな感性がありますよね。ハイドロサスも、生き物の身体みたいです。鉄のバネではなくて、血液のようにオイルとガスが機能して。

中山:フランスならではの自由さというか、フランス革命から生まれた国で、市民が作った国のカルチャーが、バックグラウンドにあるのかもしれませんね。

尾田:人とのコミュニケーションというか、生活の一部として楽しめる移動手段としての要素が色濃く見られます。気持ちいい乗り心地だとか目を引くデザインだとかを目指していて、スペックが満点である必要はない。

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環境問題への取り組み

尾田:多くの自動車メーカーが環境問題への取り組みとして「何年までに全車EVにします」とか「サプライチェーン全体でのCO2排出量を何%にします」とか、数値目標を前面に出した発表をするなかで、シトロエンはあまりそういうステートメントを発表しないなという印象があるんですが、そこにはなにか理由があるのでしょうか?

中山:もちろんシトロエンも、Ë-C4やアミのようなピュアEVは作っています。そして、今後の地球環境を考えるとEVは必要な存在です。台数目標自体はありますし、本国では内燃機関の車種はかなり削減されました。ただ、それはあくまでもビジネス的な側面。 そういったビジネスステートメントは親会社であるステランティスが担っている部分が大きく、シトロエンブランドのコミュニケーションとしては電気自動車のある生活の魅力を広く知っていただくことを前提としていますね。

つまり、シトロエンでは「EVにしたことで、大気がどれくらいきれいになります」というようなことよりも、人間から見たときに「EVにしたことで、どんな特別な体験ができるか」の方にフォーカスしているんです。それは例えば、エンジン車から電動車になったことで生まれる、フリクションロスの究極のコンフォートを提供します、というような。

尾田:個人主義を重んじるフランスの国民性だったり、環境問題は大切だけどそれを前面に出して商売をするのはちょっと品性ないんじゃない?みたいな意識があるようにも感じますね。

中山:長くシトロエンを愛してくださる方のなかには、いろいろな方がいらっしゃいます。とにかく先進性を重視する方も当然いらっしゃるわけで、そういう方はやっぱり新しいものや電気自動車を欲される。そのための選択肢としてきちんと先進性を持った商品も用意しながら、デザイン性で評価されてきたシトロエンの文化や伝統も損なわない。そして、環境問題を解決したいという目的でシトロエンを選ぶ方には、その暮らしが良い方向にいくためのベストチョイスを提供していきたいという考え方ですね。

尾田:ダイバーシティーを重んじるSDGs、ESGの文脈からも、そしてウェルビーイングという観点からも、シトロエンはとてもユニークな立ち位置で、注目に値する存在だと思います。

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https://www.gizmodo.jp/2022/03/citroen-e-c4-electric.html


Photo:橋本越百