劉慈欣の『三体』 から抜け出たかのよう。
これ何かわかります?
【ヒント】
・高さ75m
・鉄筋構造
・エネルギー分野の「マンハッタン計画」とも呼ばれる国家プロジェクト
・5つのサブシステムがある
・今月実証実験成功の発表があった
さてなんでしょう? (こたえは12行下)
こたえ
宇宙太陽光発電受電局
西安電子科技大学の南キャンパスにそびえる、宇宙太陽光発電システム(SSPS:Space Solar Power Systems)実証施設です。
宇宙太陽光発電とは、宇宙太陽発電衛星(SPS:Solar Power Satellite)を打ち上げてソーラーパネルを展開し、悪天候や夜に左右されることのない静止軌道上で24時間太陽の光をキャッチして地球に電気をビームするというもの。電気はいったん電波(マイクロ波)に変換して地上に伝送し、こんなお皿みたいなので受けてまた電気に変換して電力網に送ります。
なんかすごく未来的に聞こえるけど、提唱されたのは割と古く、1968年代にチェコ生まれのアメリカ人航空宇宙エンジニアのピーター・グレイザー(Peter Glaser)が提唱したのが最初とされますが、1963年5月にレイセオン社エンジニアのウイリアム・ブラウン(William C. Brown)がマイクロ波ビームによる横方向の空中送電を確認し、64~65年に米空軍の委託でマイクロ波ビーム給電による小型ヘリの飛行実験を行っていたことが最近機密扱いが解かれた軍の資料で明らかになっています。
近年は日本でも次代のエネルギー立国めざしてさまざまな取り組みがなされているホットな分野です(以下の動画参照)。
中国では段宝岩(Duan Baoyan)同大教授が2014年に球面線状焦点原理に基づく集光プラン「OMEGA(Orb-Shape Membrane Energy Gathering Array)」を発表。2019年からこの施設を建設してエネルギー変換とワイヤレス送電の実験を進めているのですが、今月とうとうワイヤレスで電気を約55m飛ばせた!予定より3年早く達成できた!ひゃっほー!と発表があったのです。
類似の試みはNASAでも行なわれていて、そちらは「SPS-ALPHA(Solar Power Satellite via Arbitrarily Large Phased Array)」と呼ばれます。アルファ対オメガで米中開発レースというわけですね。
中国が太陽光発電所建設用に積載重量878トンの長征9号ロケット開発計画をぶち上げれば、アメリカは空軍とノースロップグラマン社が共同で衛星軌道上の発電デモで応じるってな具合。そんなライバル意識も手伝ってか、米Gizmodoにはこんな微妙なコメントもついていますよ。
・中国の衛星がマイクロ波の死のビーム。未来は明るい。明るすぎてシェードが要るな
・高さ75mの鉄塔で55mのトランスミッション。計算間違ってなければ、低軌道から飛ばして受けるには、高さ340kmの鉄塔つくればいいだけの話だな
ははは。中国メディアによると、幅1kmの宇宙太陽光発電所を衛星軌道上に建設して変換効率100%を達成すれば、1年で地球石油可採埋蔵量の総計に並ぶエネルギー調達も夢ではないとのこと。2030年にはメガワット、2050年にはギガワットまで発電量を高めたい計画です。
対する米国はというと、フィナンシャルタイムズが取材した専門家によると、「通常は2000メガワット級の送電を想定しています。それだけあれば100万世帯の消費電力をカバーできるのだそう。となると、幅1.5kmの宇宙太陽光発電所を衛星軌道上に建設して、地上には幅6kmの受電システムが必要。受電システムは漁の網みたいな外観で、4~5cmおきにT字のアンテナが立ってるみたいなのになるそうですよ?
イーロン・マスクには「あんなイカれたアイディアはない」と笑われている宇宙太陽光発電ですが、電気代やガソリン代がこれだけ上がってくると、エネルギー戦争の未来を本気で心配しちゃいますよね。資源小国・日本もがんばらなきゃ。