バレないものなのね…。
世界全体ではサッカーの次にファン人口が多いクリケット。日本ではほぼなじみのない競技ですが、スポーツ賭博が違法なインドでもクリケット賭博は大人気。そこでインドの村人らが結託してフェイクのプロリーグ試合をYouTubeでライブ配信して賭け金を募ったところ、なぜかロシアのギャンブラーたちがごろごろ引っかかり、犯行グループの4名が詐欺罪で逮捕され、海外に静かな笑いを呼んでいます。
インド西部グジャラート州の現地メディアが伝えたところによると、プロの選手役を演じたのは農民や無職の若者たち20数名とのこと。試合をするには人数がギリギリなんですが、攻守交代のときに対戦相手のジャージに着替えることで、なんとか人数を埋め合わせていました。
「よく見れば攻守同じメンバーじゃん!」とバレそうなものですが、録画を見ると、うまい具合にボケていて顔までは判別できなくなってるんですね。
大がかりな割に儲けはしょぼい
よっぽど似てたんでしょう。偽試合は2週間に渡って堂々と繰り広げられ、最終的には「ありもしないリーグの試合中継が流れてます!」というタレコミがあって警察が偽試合の最中に現場に乗り込んで逮捕となりました(Washington Post)。
同州警察のBhavesh Rathod警官が記者団に明らかにしたところでは、選手役の若者たちについては逮捕を免除して証人として事情聴取中とのことです。The Guardianによると、運営側が巻き上げた賭博金は推定30万ルピー(約52万円)で、若者たちが手にしたギャラは1試合につき1人約400ルピー(日本円で約692円)。どっちみち雀の涙ですもんね…。
捕まった運営者4人のうち、Shoeb Davda容疑者はロシアのスポーツ賭博バーで働いた経験者で、農民らをリクルートして選手役を演じさせたのも彼だとTimes of Indiaは報じています。詐欺のスキームを考え、ギャンブラーたちを煙に巻いた主犯はAsif Mohammed容疑者。残り2人は審判役です。
YouTubeでは単に「プロフリーグIPL」(IPLは世界最大の興行規模を誇るインディアン・プレミアリーグの頭文字)とだけPRされており、オフィシャルな試合中継と勘違いしたギャンブラーらが偽試合の生配信を見ながら、Telegramのチャンネルで賭けに参加。賭けの現況はトランシーバーで審判に逐一伝えられ、審判は詐欺グループに有利に働くようにストライクとアウトの判定を操作していました。選手が捕まらなくて審判が捕まったのは、まあ、そういうワケですね。
偽チームのストライカー(打者)とボウラー(投手)が着ているのは、本物のIPL所属プロチームのジャージに似せて作ったもので、チェンナイ・スーパーキングス、グジャラート・タイタンズ、どちらも実在のチームです。偽リーグのYouTubeチャンネルは削除済みなので、上の動画は録画されたもの。 本物かどうかは独自に確認がとれていませんが、警察の報道発表の資料とは符合しているように見受けられます。
偽IPLの偽トーナメント開幕は本物のIPL閉幕(5月)の3週間後で、タイミング的にもよかったみたいですね。スコアボードはPCのグラフィクスで作成し、熱狂するスタジアムの歓声はネットでダウンロードしたものを流用。解説も有名解説者Harsha Bhogleのモノマネが得意なインド人が担当して、プレイごとに分析していました。
これには本物も大笑いで「絶対聞かなきゃな」ってツイートしてますよ。
Can't stop laughing. Must hear this "commentator" pic.twitter.com/H4EcTBkJVa
— Harsha Bhogle (@bhogleharsha) July 11, 2022
これだけの手間をかけて儲けが52万円ぽっちというのも解せないため、実際の被害はもっと大きいのではないかと見て捜査中だと警察はWashington Postに語っています。