中絶違法化が進む米国で、リモート診断による「飲む中絶」での堕胎が急増

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中絶違法化が進む米国で、リモート診断による「飲む中絶」での堕胎が急増
これは黄体ホルモンの分泌を止める薬 Image:ABC News

中絶医も殺人罪に問われるぐらいなら、もう自分でなんとかする!となっちゃうよね…。

6月の最高裁判決を受けて保守系の10州に中絶違法化の波が広がる米国で、望まない妊娠を自分で終わらせることを考える女性が水面下で増えています。

代表的な手法は経口薬堕胎で、いわゆる「飲む中絶」ですね。具体的には、WHOが推奨するように、まず①ミフェプリストンを飲んで、黄体ホルモン(プロゲステロン) の分泌を止めて妊娠続行を止め、②ミソプロストールで陣痛を起こして流産を促すという、2段構えで行なうのが一般的。

日本ではあまり耳慣れないアプローチかもしれませんが、アメリカでは経口中絶薬のほうが堕胎の過半数を占め、日本のような掻把法や吸引法といった外科手術より母体への負担は少ないと考えられています。

もちろん処方には通院が必須でしたが、折からのコロナ禍で政府が通院の要件を撤廃したばかりですので、今はリモート診断でも自宅に郵送で取り寄せることが可能です。遠隔医療×宅配すらも禁じる州もあるようですが、そうなると子宮外妊娠などの診断ができなくて非常にリスキーだし、医学的見地からは、なんのための法律なのかと言いたくもなります。

それじゃなくても中絶が違法になったオハイオ州ではレイプ被害者の10歳女児が中絶できなくて隣のインディアナ州まで行って手術を受けて全国区のニュースになってます。このときはバイデン大統領がこんなのおかしい、国が認可している中絶薬を届けてあげられないのか、とスピーチしたら、Wall Street Journalが論説でそんな10歳女児本当にいるの?と疑問を投げかけて、わざわざコロンバス警察が「レイプは事実。6月22日に母親が郡児童サービスに相談して警察に報告が入り、30日に中絶手術を行ないました。署は27歳男を逮捕してDNA鑑定を急いでいるところです」と地方紙のThe Columbus Dispatchに発表。 WSJは訂正し謝罪しています。

アメリカ疾病予防管理センター(CDC)の推計では、18歳未満の未成年アメリカ人女子の9人に1人はレイプ被害者で、一生のうちレイプ関連の妊娠を経験する女性は300万人近くにものぼるというのに、中絶は政争の道具になってしまってて、当事者は完全に蚊帳の外。望まない妊娠をしてしまった女性はネットの履歴を消したり、中絶薬の取り寄せでも足取りを消したり、自衛に必死です(何かあったときに殺人罪の立証に使われてしまうから)。

気になるのは安全性と成功率。WHOの推奨では妊娠12週目ぐらいまでは服用が可能です。NY Timesが報じた実態調査によると、2020年に経口中絶薬で堕胎したアメリカ人女性50万人余りのうち、重篤な症状に見舞われた人は0.5%未満で、2013年の調査でも入院や輸血などの治療が必要になったのは0.4%どまりでした。中絶成功率は96.7%(2018年調査)。胃薬のサイトテック(ミソプロストール)についてはFDAもオンライン購入をやめろとは指導していませんし、これ単品で効果が出るという話も…。

Video: MinuteEarth / YouTube

NY Timesには、家計が厳しくて第2子出産はムリと判断したテキサス(中絶違法)の女性が欧州から薬を購入した事例も紹介されているのですが、思いのほか届くのに時間がかかって、届いたときにはすでに12週目でしたが、祈るような思いで服用し、大量出血で病院に行って流産となりました(薬も自然流産も違いはほとんどない)。一方、自殺願望の鬱で中絶した女性は、テキサスから州境をまたいで堕胎にくる患者で病院がパンクしてて受け付けてもらえなくて、しょうがなく経口中絶薬を飲みましたが、痛みは生理と変わらなかったといい、個人差があることがうかがえます。

こうした女性たちを支える情報提供サイトや海外取り寄せサイトも活況を呈しています。中絶を違法化したことでセルフ堕胎が一般化しているような状態。そのうち自己堕胎も違法化になるという動きもあります。

中絶薬は日本では薬事法上未認可で個人輸入も禁止ですが、最近になって英国の製薬会社が経口中絶薬の認可を申請していますので、その意味でも無関心ではいられません。

Sources: TIME, CDC, NYT, WHO, レディースクリニック山原