ゾンビ化した蝿、泥酔した鳥、スキューバダイビングをするトカゲなどなど。
今年で2回目となる「BMC Ecology and Evolutionフォトコンテスト」が開催されました。このフォトコンテストは、生態学者や進化生物学者が行うフィールドリサーチや、人間も含む多種多様な生態系が自然と密接に結びつく関係を、クリエイティブに紹介することを目的としています。
2022年の受賞作品は、ハエを宿主にした「ゾンビ菌」が増殖して感染させるというホラー映画級の作品から、水中呼吸芸を披露するアノールトカゲなどのほっこり写真も受賞しています。最優秀賞、各部門の最優秀賞・優秀賞、佳作3作品を含む、合計12点の受賞作品を紹介していきます。
The Zombie Fly(ゾンビ蝿)

今年の最優秀賞は、寄生菌類の子実体がハエの体から抜け出して分離している様子を撮影した写真です。
「この写真は、何千年もの進化によって形成された『征服』を表わしています。いわゆる「ソンビ菌」の胞子が、ハエの外骨格と精神に侵入し、菌の増殖に有利な場所に強制的に移動させ、子実体はハエの体から噴出し、より多くの犠牲者を出すために放出されます」と、この写真を撮影したRoberto García-Roa氏(スペイン・バレンシア大学研究員)は述べています。ホラーですね…。
Kids in the Pool(キッズ・イン・ザ・プール)

「生物多様性の危機」部門優秀賞に選ばれたのは、卵塊にしがみつくオスのカナダアカガエルの写真です。
カナダアカガエルは、冬になると体を凍らせて生き延びることで知られています。現在、その個体数が深刻な危機に瀕しているわけではありませんが、北米の多くの森林地帯は都市化の影響、そして気候変動に起因する、水たまりに産卵される卵の生存率が低下している可能性が問題となっています。
Glow-in-the-Dark Life(暗闇の世界で光る)

今年度の優秀賞3作品に選ばれたのはこちら。世界第3位の大きさである、東南アジアにあるボルネオ島の熱帯雨林に生息する発光菌の一種を撮影したものです。
Dinner-to-Go(ディナーを食べに行く)

「自然界との関係」部門の受賞作は、トゥンガラカエルを食べようとしているフリンジリップドバットの写真です。この種のカエルのオスは、交尾の際の鳴き声でコウモリに殺される危険があると考えられています。コウモリの羽音が聴こえると静かになりますが、鳴きながら水面に波紋を作ることで、捕食者を引き寄せてしまうと考えられています。
Otherworldly Eggs(異世界の卵)

ライフクローズアップ部門の優秀賞で、この緑色のエイリアンのような塊は、アマガエルの幼生期の状態です。このカエルはコロンビア、コスタリカ、エクアドル、パナマの各地に生息していますが、熱帯の生息地が失われ、絶滅の危機に瀕しています。
Finding Shade(日陰を探す)

「生物多様性の危機」部門 の受賞作品で、南アフリカのマプングブウェ国立公園のバオバブの木の陰に佇むアフリカゾウの写真です。気候変動の影響により、この木とゾウのバランスが崩れつつあります。
「バオバブは2,000年以上生きることができる木で、水分が不足しても樽のような幹に水を蓄えることができますが、この写真にあるバオバブの木は、水を求めるゾウによって樹皮が剥ぎ取られています。通常バオバブは回復が早いとされていますが、このようなダメージは気候変動に対してバオバブが耐えられる範疇を超えています。この写真は、象徴的なバオバブの木が絶滅することを防ぐためのアクションの必要性を語っています」と、ワシントン大学のSamantha Kreling氏は述べています。
A Rare Find(希少価値の高いもの)

この写真が何を物語っているかはひと目ではわかりづらいですね。これは絶滅しかけた伝説の鳥、バミューダシロハラミズナギドリの卵の健康状態をライトで観察している様子の写真です。バミューダシロハラミズナギドリはバミューダ諸島の国鳥で、1950年代に個体群が再発見されるまでは、何百年もの間絶滅したと思われていたのです。保護活動の成果があり個体数は増え始めていますが、今も世界で2番目に希少な海鳥とされていて、卵の発見写真は特別なものです。
Breathing Easy(息が簡単にできる)

ライフクローズアップ部門の受賞作品。アノールトカゲは水中で呼吸をするために水泡を発生させ、最長で18分間も息ができるのですが、その瞬間を捉えた写真です。息を吐きながら水泡を発生させて、未利用の酸素を含む再生空気を吸い込み、スキューバダイビングの装置のように機能させます。
Starry-Eyed Research(夢想的な研究)

実践研究部門の最優秀賞で、ブラジルで雷雨の中、研究者たちがこの地域に生息するカエルの個体数を調査している様子を撮影したものです。この写真はCovid-19パンデミックの初期に撮影されたもので、厳重な装備が時代を物語っています。
「この写真に写っている研究者たちは、Covid-19パンデミックの間でも研究を続けた数多くの研究者たちの象徴です。雷雨や世界的なパンデミックにも関わらず、研究を継続している研究者たちの強さと、われわれの世界を理解するための献身的な姿を表しています」と、この写真を撮影したコーネル大学のアマル氏は述べています。
The Perils of Plastic(プラスチックの危険性)

この作品は、海鳥の胃の中から出てきたプラスチック廃棄物の写真です。
多くの専門家は、特に海洋生物にとってプラスチックが生命を脅かす脅威となっていると考えています。プラスチックは完全に分解されることはなく、プラスチックの小さな破片(マイクロプラスチック)は、人間を含む多くの動物の健康を脅かすと考えられています。
Boozy Berry Birds(泥酔したベリー(を食べる)鳥)

「自然界との関係」部門の最優秀賞作品で、キレンジャクの鳥が発酵したナナカマドの赤い実を口に入れている様子です。この種の鳥の食欲は旺盛で、1日に何百個も実を食べることもありますが、その実に含まれるアルコールに耐えられるように、長い年月をかけて肝臓を鍛えてきたそう。それでも泥酔して死んでしまうことがあるそうです。泥酔して死ぬなら本望か。
A Forest Singles Mixer(森の中の合コン)

実践研究部門の受賞作品に選ばれた、何千匹ものグライドツリーカエルの繁殖下にいる研究者のBrandon André Güell氏の写真です。このカエルは雨の後に大規模な繁殖を行い、産まれた卵はその6日後に孵化します。
「今年のコンペティションに応募された並外れた多くの優れた画像の審査は、素晴らしくやりがいのある経験でした。編集委員メンバーは専門知識を総動員し、受賞作品の背景にある科学的なストーリーだけでなく、写真自体の技術的なクオリティや美しさも考慮して作品を選出しました。今年のコンテストに参加したすべての人に感謝し、読者がこれらの写真を楽しみ、背景のストーリーを発見してくれることを願っています」と、BMCの編集者であるJennifer Harman氏は、米ギズモードにコメントを提供しています。