火星サンプル回収ミッションの新型ヘリコプター、車輪付きのデザインになる模様

  • author George Dvorsky - Gizmodo US
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火星サンプル回収ミッションの新型ヘリコプター、車輪付きのデザインになる模様
車輪付きヘリコプター、探査車パーサヴィアランス、地球帰還オービター、サンプル回収ランダー、アセント・ビークル といったマーズ・サンプル・リターン計画で使用される探査機などが描かれたイラスト
Image: NASA

インジェニュイティの大活躍があってこそ

火星の地表サンプルを地球に持ち帰るというNASAと欧州宇宙機関(ESA)の共同ミッションから、サンプル回収用のフェッチローバーがキャンセルになったのは既報のとおりですが、新たに投入される小型ヘリコプターなどの詳細がNASAの会見で明らかになりました。どうやら火星のジェゼロクレーターに送り込まれるのは、ロボットヘリコプター「インジェニュイティ」を基にしたヘリコプター2機で、それらはサンプルチューブの元まで飛んでいって拾い上げ、近くで待つランダーへと運んでいくようです。

火星の地表サンプルを持ち帰られるか?

NASAと欧州宇宙機関(ESA)はまだマーズ・サンプル・リターン(MSR)ミッションの概念設計フェーズにあるため、変更があるのは想定内です。しかし、会見で発表されたのはかなり大胆な改定案でした。両機関は同ミッションのシステム要求審査を終え、いくつかの要素を外して他の要素を足したのです。

NASAの科学ミッション本部のトーマス・ズルブチェン副本部長は、MSRを運用開始したばかりのジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡になぞらえて、両方とも歴史的な意義を持つ国際的なミッションだと述べました。確かに火星の地表サンプルを分析のため地球に持ち帰るのは、得られる科学知見とその過程での経験、どちらの意味でも重大事となるでしょう。サンプルで火星の地質学について理解を深められるだけでなく、太古の火星の生命の証拠を得られるかもしれません。ESA人類とロボット探査部門のDavid Parker博士は、MSRミッションによって火星サンプルの(今は不可能な)絶対年代測定が行えるようになると発言。そのうえ、火星への有人探査に向けた“先駆けミッション”の役目も果たすだろうともコメントしています。

ウェッブ宇宙望遠鏡と同様に、MSRミッションは非常に複雑で史上初めての試みになります。ご存じのとおり、このミッションは厳密にいえば既に進行中。現在、探査車「パーサヴィアランス」はジェゼロクレーターで地表サンプルの採取・保管を行っていて、微量の岩石が入った小型チューブを車内カルーセルに格納あるいは火星の地面に置き去りしています。現時点までにパーサヴィアランスが中身を詰めて封をしたチューブは既に10本にのぼり、11本目のチューブの保管に取りかかっています。NASAとESAは、こういったチューブを寄せ集めて地球へと無事に戻す最も確実な方法を決めようとしているところです。

新たに発表された修正案で、このミッションアーキテクチャは大きく方向転換しました。マーズアセントビークル (MAV)を運ぶNASAのサンプル回収ランダーと、NASAの捕獲・格納・リターンシステム(CCRS)を搭載した地球帰還オービターは残ったものの、サンプルフェッチローバーと付随する着陸プラットフォームを送る計画はキャンセルされたのです。

ローバーではなくパーサヴィアランスを活用

ズルブチェン副本部長によると、この変更の理由はパーサヴィアランスと、火星で10年近く活躍しているNASAのもうひとつの現役探査機キュリオシティの「優れたパフォーマンス」が関係するそう。MSR計画のリスク分析は「昨年の経験の影響を受けている」と語っていました。今のNASAには、ミッションの回収フェーズが始まる2030年代初めになっても、パーサヴィアランスが機能していると信じるだけのもっともな理由があるのです。この点が必ずしも明白ではなかったゆえに、専用のサンプルフェッチローバーの必要性を認識していたと副本部長は説明。パーサヴィアランスに全面的に頼るのは、決して合理的あるいは現実的ではなかったと言っていました。自信を得たことと同探査車が好調であり続けていることから、両機関はフェッチローバーを取りやめて、パーサヴィアランスとNASAのサンプル回収ランダーにサンプルを届けてもらおうと判断するに至ったようです。ズルブチェン副本部長は、NASAのプランナーたちは「前々からパーサヴィアランスをミッションの回収パートに携わらせたいと望んでいた」として、見直された戦略は「大きな変更」というよりも「むしろ進化」だと語っていました。

NASAとESAはリスクを減らすために、フェッチローバーとマーズアセントビークル(サンプルをオービターに運ぶロケット)を別々のロケットで打ち上げようと考えていましたが、フェッチローバーのキャンセルにより、その必要はなくなります。

ESAは現在、パーサヴィアランスのカルーセルからチューブを取り出し、アセントビークル内にそっと置く「Sample Transfer Arm」を開発中です。Parker博士は報道陣に、伸ばしたときの長さが2.5mになる多関節のサンプル・アームは「常にミッションアーキテクチャの一部であった」と述べていました。

NASAはまた、パーサヴィアランスに何かあった不測の事態の策として、インジェニュイティ級のヘリコプターも2機送るつもりです。この判断の背景について、マーズサンプルリターンプログラムのディレクターJeff Gramling氏は、2021年2月にパーサヴィアランスと共に火星に着陸したヘリコプター「インジェニュイティ」が、現在までに当初の計画よりも24回多いフライトを実施してきたことを挙げました。「これは火星での回転翼航空機の有用性を示した」とコメントしています。

MSRミッションに使われるヘリ2機は、インジェニュイティと瓜ふたつになるわけではなく、重量はわずかに重く脚の代わりに車輪を備えるそう。この小さな車輪によってヘリコプターは火星の地表を動き回れるようになるわけです。さらに各機には地表からチューブを掴むためのアームが付く模様。チューブの重量はサンプル込みでも150g以上にはならないので、ヘリに支障をきたすことにはならないはず。またNASAの高官は、ヘリコプターはランダーから2300フィート(700m)以上離れたサンプルチューブは回収できないだろうと語っていました。

ヘリコプターはそれぞれ独立して動くようになっていて、回収フェーズ中はサンプルチューブへと飛んで向かい、着陸したら走って近づき、拾い上げてサンプル回収ランダーの元へ戻ります。ランダーの付近に置かれたチューブは、ESAのロボットアームに拾い上げられアセントステージに入れられるそう。隠しておいたサンプルが全部集められるまで、この作業が行われます。

Gramling氏たちは、この新たな案がミッションの全体的な費用を削減するのかという点については言及しませんでしたが、ズルブチェン副本部長はフェッチローバーとふたつ目のランダーがなくなったことで、ミッションは“よりシンプル”で“組織的な煩雑さは減った”と認めました。以前の見積もりは44億ドル(約5880億円)を超えるだろうと示唆していました。

現在の計画では地球帰還オービターが2027年に、サンプル回収ランダーが2028年に打ち上げられ、サンプルは2033年に地球に届くことになっています。プログラムは10月に、12カ月間の予備設計フェーズに入る予定です。

火星サンプル回収ミッションに小型ヘリコプター。欧州ローバーはキャンセルに

火星の岩石や土壌を地球に持ち帰るというNASAと欧州宇宙機関(ESA)の共同ミッションの新展開。BBCにより報じられ、NASAから発表がありました。

https://www.gizmodo.jp/2022/07/mars-sample-return-update.html

Source: NASA