ちょっと変わったスーツケース。
上部にはなにやらカメラっぽいモノが付いています。実はこれ、視覚障がいを持った方を目的地まで案内するナビゲーションロボットなんです。
「AIスーツケース」を開けてみると…

…なにやら装置がぎっしり!

視覚障がいがある人を目的地まで音声と振動で導いてくれるロボット
たとえば、ひとり旅をしていて、見知らぬ街の空港に降り立ったとしましょう。でも、もし視覚障がいがあったら? 迎えの車が待つロータリーまで、最短ルートでたどり着くにはどうしたら?

AIスーツケースはそんなときに助けてくれる発明です。スマートフォンで目的地を設定すると音声ガイダンスが始まり、目的地に向かって動き始めます。ハンドルにはセンサーがついていて、手を放すと止まったり、振動で曲がり角や障害物を知らせてくれたりする仕組みにもなっています。
AIスーツケースには、モーターやロボット技術のほかにもカメラや赤外線LiDARなどのセンサー技術が搭載されていて、それらから得られる情報とAI技術とを組み合わせることで、障害物や人との接触を避け、安全に誘導してくれるそうです。
「ひとりで初めての場所へ出かける勇気」を与えてくれるロボット

発明したのは、日本科学未来館の2代目館長で、IBMフェローである浅川智恵子さん。聞くところによると、全盲の浅川さんが実際に空港での移動に困難を感じたことから、AIスーツケースを発案するに至ったのだとか。
写真のプロトタイプは「未来館アクセシビリティラボ」が開発したもので、日本科学未来館で2022年7月に開催された「Mirai can FES -ミライキャンフェス-」ではAIスーツケースの体験会も行なわれていました。

このAIスーツケース、旅先での使用のみならず、たとえばショッピングモールでお買い物したり、病院に通ったり、大型レジャー施設を楽しんだりするためのコンパニオンとしても重宝するんじゃないでしょうか。駅のプラットフォームからの転落事故も防げるかもしれません。
さらに言えば、持ち主の視覚障がいの有無に関係なく、目の前に広がる世界をわかりやすく情報化して、ちょっと先の未来の居場所まで最短ルートを切り拓いてくれる、そんなガジェットなのかなと思います。遠方で独り身で暮らしている家族にも、生まれつき下肢に障害があって直線的に歩けない友人にも、ひとりで初めての場所へ出かける勇気を与えてくれるロボットなんじゃないかな、とも。
テクノロジーは、社会を良い方向に変えていける。そんな明るい展望をAIスーツケースが見せてくれました。