一夜漬けじゃすぐに忘れちゃうテスト勉強と同じよね。
メディアが正確な情報を繰り返し伝え続ければ、人々は気候変動の科学を信じて対策を支持するようになるそうですよ。
保守も気候変動対策を支持するように
オハイオ州立大学の研究チームが米国科学アカデミー紀要(PNAS)に発表した論文によると、人々の気候変動に対する考え方はメディアのメッセージに左右されやすいため、より正確な情報を繰り返し伝える必要があるのだそうです。
研究チームは2020年秋、気候変動に関する情報を4段階に分けて2,898人に読んでもらい、気候変動の科学や気候変動対策に関する意見がどのように変化するかを分析したところ、たいへん興味深い結果になりました。
まず第一段階は、「主要メディアによる科学者間で合意されている気候変動に関する情報を反映した記事」を、第2段階と第3段階では、「さらなる気候変動の科学に関する記事」「気候変動に懐疑的なオピニオン記事」「気候変動についての党派的議論を考察する記事」「気候変動とは無関係の記事」のどれかを読んでもらったそうです。そして第4段階として、各段階の記事を読み終えたあとに、「気候変動がリアルで人為的だと信じているか」と「気候変動政策として再生可能エネルギー推進を支持するか」を尋ねました。
その結果、正確な情報に基づく記事を読んだ参加者は、民主党支持者も、実験前は人為的気候変動に懐疑的だった共和党支持者も、気候変動の科学を信じて気候変動政策を支持するようになったんだそうです。気候変動がリアルで人為的だと理解すれば、党派関係なく政府に対策を求めるようになるということですね。
懐疑的な情報で逆戻り
でも、ちょこっと正しい情報に触れた程度では、またすぐに心変わりしちゃうかもしれないのが人間らしさなのでしょうか。正しい情報に触れたあとに、人為的気候変動の科学的合意に懐疑的な記事を読むと、元の意見に逆戻りしがちとのこと。ただし、気候変動についての党派的議論を考察する記事は人々の意見に影響を与えなかったそうです。
大きいメディアの役割と責任。でも…
研究結果は、気候変動のような問題の世論形成において、メディアが大きな役割を担っていることを示唆しています。コンセンサスのとれている気候変動の正しい知見を繰り返し報道することで、忘れがちで変わりがちな人々が科学的事実を理解し、政府に気候変動政策を求めるようになるということなんですよね。
研究チームを率いたオハイオ州立大学政治学部のトーマス・ウッド准教授は、次のように述べました。
人々は気候変動に関する正確な情報を何度も何度も聞く必要があるということです。一度聞いたくらいでは、すぐに忘れてしまいますから。
やはり、気候変動対策を加速させる鍵を握っているメディアにがんばってもらわないといけないのですが、准教授は懸念を表明しています。
メディアは、そういう行動をとるようにできていないんです。
いや、准教授ちょっと待って。それではどこにも救いが…。
Reference: PNAS, Ohio State University