せめて一目だけでも。
一流時計職人の手作業による装飾の華麗さで、海外からも熱い注目を浴びているセイコーのクレドール。和のテイストを生かした素材使いやオリエンタルなデザインは、スイスメイドの時計とは一線を画した美意識を感じさせます。
このブランドのなかでも特に傑出したラインが「アートピースコレクション」。彫金や七宝、漆といった日本が誇る工芸技術を生かした贅沢なシリーズで、宝石のセッティングが非常に美しいことでも定評があります。
盤面に踊るゴールドの蝶たち

今回アートピースコレクションの新作として発売されるモデルは、2002年に「卓越した技能者(現代の名工)」として表彰され、2007年には黄綬褒章を受章したセイコー最高峰の彫金師、照井清氏による彫金をフィーチャー。ダイヤル上にゴールドの蝶が舞い踊るデザインですが、その蝶の細やかさといったら息を呑むほどです。
このデザインは中国の思想家・荘子の説話「胡蝶の夢」に着想を得たもので、4時位置のリューズを操作することで蝶が羽ばたくというギミックも。これだけ細やかな彫金を動かすには、クレドールの調整技術があってこそでしょう。

裏蓋はスケルトンになっていてムーヴメントが覗けるんですが、こちらもブリッジに蝶形花(ちょうけいか)と呼ばれる藤の花が彫金されています。白蝶貝と黒蝶貝による2匹の蝶があしらわれており、ダイヤル表面に負けず劣らず美しい仕上がりです。ムーヴメントは500円玉とほぼ同じ薄さ(1.98mm)のCal.68を採用しており、ダイヤルの優美なデザインを生かす薄いフォルムに仕上がっています。
中身から外装まで贅を尽くしたモデルゆえ、その価格は4950万円。庶民としては手も足も出ません。昨今の高級時計ブームもあって、この価格でも欲しいという人は多そうですが、製造数はなんと限定1本。完全な1点ものです。8月19日発売ですが、争奪戦になること必至。果たして手に入れることができるのはどんな御仁なのか、ちょっと気になりますね。せめて現物を一目見る機会くらいは得たいものです。
Source: SEIKO