こういうのを「Man falling upward(上に落ちる男)」と言うのか…
ずさん経営が暴露されてWeWorkを辞めて3年。命運尽きたかに思えたWeWork共同創業者のアダム・ニューマンが、また住宅不動産ビジネスの新会社「Flow」を立ち上げてシリコンバレーの投資会社AndreeVssen Horowitz(a16z)から評価額10億ドル超で3億5000万ドル(約473億円)もの巨額投資を確保しました。
a16zはFacebook、Twitter、Skype、Airbnb、GitHub、Pinterestなどの初期投資を行なった名門VCですが、3億5000万ドルというのは同社始まって以来の最高投資額に当たります。
a16zは5月下旬にもアダムのブロックチェーン活用CO2排出権取引企業「FlowCarbon」に7000万ドル(約95億円)を出資したばかり。いったいアダムのどこにそんな価値が?と不思議でなりませんが、a16zのマーク・アンドリーセン(Netscape創業で儲かったお金でVC活動を展開)はブログで「過去の教訓から学んだ復活劇に期待している」と書いていますよ。
下げれば下げるほど上がる男
アダムは高級テキーラを浴びるほど飲んでパーティーに明け暮れてIPOを台無しにし、WeWork筆頭株主のソフトバンクに追われるように会社を去りました。そのとき受け取ったゴールデンパラシュート(巨額退職金)が10億ドル。
その後、WeWorkはSPAC(特別買収目的会社)を通して昨年念願のIPOを実現。今も10%のWeWork株を保有するアダムはNYスタンダードホテルで朝からシャンペンを開けて昔の仲間とIPOビューイングパーティーに興じます。これで総資産は23億ドル(約3105億円)に膨れ上がりました。
ブロックチェーンの会社は発表したと思ったら終わる
こんなにあるんだから使わなきゃね♪ってことで、クリプトのスタートアップ「FlowCarbon」を立ち上げたら、折からのクリプト暴落(市場から2兆ドル(約271兆円)が消えた)で6月に予定されたトークン発行がとん挫、発表からわずか2か月でプロジェクトが無期凍結になったと報じられています(サイトではまだ「トークンまもなく発行」と注文受付中だけど)。しょうがないので、お金に飽かせて買い漁ったマイアミ、アトランタなどの不動産をマネタイズするほうに方向を切り替えたんでしょう。
マーク・アンドリーセンもクリプトにはだいぶ入れこんでいるので暴落で大損こいてるはずなのですが、損すれば損するほど熱くなる人なのか、6月のインタビューでも「インターネットが生まれた当時の状況に似ている」と早口でまくし立てています。
この勢いでFlowCarbonも強力プッシュしていたはずなのに(なんせa16zクリプト部門はSamsung Nextなどからも出資を集めて道連れにしたリードインベスター)、なぜか今回のFlow巨額出資の発表文には「FlowCarbon」のフの字も出てきていなくて、Flowのことを「his first venture since WeWork(WeWork以来、彼の初となるベンチャー)」と紹介してるんですよね…。FlowCarbonは無かったことにされてる!笑
「住宅の世界を変える」Flowは来年ローンチ。アンドリーセン(「若い人が買える家がない! もっと建てなきゃ!」とFlowのミッションを支持する割には自宅のある豪邸街アサートンでは集合住宅の建設に反対してたりする)も役員参加予定。家のバナナが腐るのが先か、アダムが3億5000万ドル焦げ付かすのが先か、ゆるく見守っていきたいですね。
Sources: a16z, NYT, Stephen Moore, BusinessCloud, Fortune, YouTube