生徒に1人1台のiPadがある学校。制限なしでYouTubeにもゲームにも使っていい理由

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生徒に1人1台のiPadがある学校。制限なしでYouTubeにもゲームにも使っていい理由
Image: Shutterstock.com

近畿大学付属高等学校・中学校は、大阪府東大阪市の近畿大学キャンパスのすぐそばにある中高一貫校。

2013年の高校の新入生から1人1台のiPadを導入し、いまでは高校生約3000人、中学生約850人、教職員約200人と約4000台のiPadが稼働しているiPadマンモス校でもあります。

驚くべきは、生徒のiPadにほとんど制限がかけられていないこと。各iPadは学校が管理するMDM(組織のモバイルデバイスを一括管理する仕組み)に登録されてはいるものの、Web閲覧からYouTube鑑賞、アプリのインストールにいたるまで、生徒が自由に行なえるといいます。

セキュリティやモラルの面で不安に感じてしまいますが、なぜうまくいっているのでしょうか。近大付属高校・中学校の教育改革推進室 室長である乾 武司(いぬいたけし)先生は「もっと生徒に任せても大丈夫!」と断言します。

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近畿大学附属高等学校・中学校 教育改革推進室 室長 / 乾 武司 先生

なぜiPadなのか?

「生徒にはテクノロジーやICTが当たり前になった世界で生きていく力をつけてほしい」という思いでICT導入に取り組んだ乾先生。

直観的に使える操作体系や、故障率の低さ、標準アプリケーションの使いやすさにメリットを感じてiPad導入に踏み切ったのだとか。1人1台iPadを導入したことに加えて、クラウド上の学習ポータルを整備。生徒と保護者ににそれぞれポータルのアカウントを提供することで生徒・教師・保護者のコミュニケーションが円滑になったといいます。

また、写真の撮影、音楽制作、動画編集、プレゼンテーションといった多彩な表現を使ったiPadならでは授業にも可能性を感じているようです。

ゲームもSNSもOKなiPad

iPadの費用は生徒側が負担し、学校側が初期設定を行ないます。その後はアプリのインストールに制限はなく、学校以外の場所でも24時間好きなように使用できるのだとか。これが可能なのは、App Storeの存在が大きいといいます。

インストールできるアプリを管理するのは想像以上に大変な作業です。しかしApp Storeに掲載されるアプリであればすべてAppleのスタッフによる審査が行なわれています。普通のアプリに偽装したマルウェアが入り込むことを未然に防いでくれるんです。

学校側からすれば、本来ブラックリストやホワイトリストでインストールできるアプリを制限するような管理業務を、Appleが代行してくれているようなものなのかもしれません。

セキュリティ以外にも、いじめなどの懸念からSNSの利用を禁止している学校もあります。しかしそういったネットの活動を抑制することにもデメリットがあるのだとか。

SNSを禁ずると、生徒にとってSNSがアングラな存在になってしまうんです。たいていアングラなものって良いことに使わないんですよ。当校はiPadを導入したことでSNSが当たり前のものになりましたが、そうなって初めてその良し悪しを議論できるようになりました。今ではSNSはビジネスでも使われるツールです。学生のうちからこういったツールの正しい使い道を導くのも学校の役目だと思います。

教師はもう知識でマウントをとることはできない

乾先生は利用制限のないiPadを導入してからの生徒と教師の関係についてこう話します。

生徒がiPadを通して自由に情報にアクセスできるようになり、得られる知識の量が爆発的に増えました。そうすると教師と生徒との知識の差がなくなっていきます。もはや教師は生徒に知識量でマウントを取ることができないんです。知識のアウトプットもiPadによってクリエイティブになり、私たちの想像を超えてきています。制限をなくすことによって生徒が主体的に学ぶことができると思います。

知識でマウントをとることができない。ではこれからの時代、教師や学校の役割はどうなっていくのでしょうか。

生徒が得た知識がどの分野に通ずるのか、どういった職業で活かされるのか。そういった知識と学問のマッピングをして人生のナビゲーターのような役割を担うようになると思います。そういう意味では教師も幅広い教養が求められますし、自分の担当以外の教科と連携を強めていく必要がありますね。


学校側から課す制限で一定の平和や安心が得られるのは確かです。でもそれで安心するのは大人だけなのかもしれません。「ブラック校則」なんて言葉もありますもんね。

大人になってから失敗するよりも、制限を無くして学生のうちに失敗した方がずっといいのです。

最後に乾先生が語ったこの言葉がとても印象的でした。