温暖化によって、6つのティッピングポイント(後戻りできない臨界点)を超える日

  • author Angely Mercado - Earther Gizmodo US
  • [原文]
  • Kenji P. Miyajima
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温暖化によって、6つのティッピングポイント(後戻りできない臨界点)を超える日
Image: Mario Tama / Getty Images

急激な海面上昇、サンゴ礁の大量死、氷床と氷河の急速な融解は、私たちの想像以上に身近で起こっています。そして、いくつかの変化はもう取り返しがつかないほど危機的状況、いわゆるティッピングポイント(不可逆な臨界点)を超えそうな領域に入っているという研究結果が科学誌Scienceに掲載されました。

気候変動の限界点、ティッピングポイントとは

ティッピングポイントは、小さな変化の積み重ねによって、地球の気候にさらに大きな変化がもたらされたときに、ある現象が二度と戻らなくなる臨界点を指します。今回の研究で、科学者は地球の気候を安定させるための主要な16のティッピングポイントを特定しています。その中には、北極圏の永久凍土融解大西洋南北熱塩循環の崩壊など、地球の機能をつかさどる核となる9つのティッピングポイント(大西洋南北熱塩循環の崩壊、西南極の氷床融解、アマゾン熱帯雨林の消滅、西アフリカモンスーンの変化、北極圏の永久凍土融解、珊瑚礁の死滅、インドモンスーンの変化、グリーンランドの氷床融解、北方林の衰退)が含まれています。

ティッピングポイントを超えたらほぼアウト

もしもティッピングポイントを超えてしまったら、その変化を食い止めるためにできることはほぼないそうです。2008年以降に発表された気候関連の研究結果とさまざまな気候モデルを分析した結果、産業革命以降の気温上昇が約1.1度の現段階で、いくつかのティッピングポイントをあとちょっと超えるところまできているそうです。さらに良くないことに、パリ協定の「2度を大きく下回って1.5度を目指す」という目標を達成したとしても、6つのティッピングポイント(北極圏の永久凍土融解、グリーンランドの氷床融解、ラブラドール海の対流の変化、バレンツ海の海氷融解、熱帯サンゴ礁の死滅、西南極の氷床崩壊)を超える可能性があることが確認されてしまいました。

Global Tipping Elements
Image: DESIGNED BY GLOBAIA FOR THE EARTH COMMISSION, PIK, SRC AND EXETER UNIVERSITY
2度未満、2度~4度、4度以上の各気温上昇における16のティッピングポイント

研究の共著者であり、英エクセター大学グローバルシステム研究所のディレクターを務めるTim Lenton氏は、Eartherにこう述べています。

西南極の氷床崩壊、既に始まっている熱帯サンゴ礁の大規模な死滅はもちろん、非常に広い範囲における永久凍土の急激な融解が含まれます。

ティッピングポイント超えで世界規模の異常気象が増加

世界が迅速な排出量削減に取り組まず、気温上昇が2.6度に達するシナリオでは、さらに10のティッピングポイントを超えてしまいます。大西洋のコンベヤーベルトと呼ばれる大西洋南北熱塩循環(AMOC)の崩壊もそのうちのひとつ。北半球の気象に大きな影響を与えているAMOCが崩壊すれば、世界中で降雨パターンが変化します。現在の気候下で予測される降雨パターンに従って農作物を育てている世界中の農耕民族は、変化によって苦境に立たされることになります。AMOCの崩壊によって、ヨーロッパの異常気象も増えることになるでしょう。そして、もうひとつの大きなティッピングポイントは、アマゾンの熱帯雨林崩壊です。二酸化炭素の吸収源であり、多くの絶滅危惧種が生息しているアマゾンの熱帯雨林ですが、すでに二酸化炭素排出源になっているのではないかとも言われています。

Lenton氏によると、1.5度や2.6度の温暖化で一気に変化が起こるわけではないとのことです。その影響は、時間の経過とともに深刻化し、極端な気象現象の一因となって、世界中で人々が移住を強いられることになるでしょう。ティッピングポイントを超えることで引き起こされる海面上昇は、今後数世紀で何十センチにも達する可能性があります。

研究の主執筆者であるDavid Armstrong McKay氏は、今回の研究は特定の異常気象を調査したわけではないとしつつ、気象災害の頻度の増加はティッピングポイントの研究が重要であることを示していると言います。また、「直近10年から20年における気候変動の影響は極めて明らかで、すでに安全とは言えない状況にあり、1.5度を超えれば異常気象は深刻化する一方になる」と指摘しています。


Regional Impacts of Tipping Elements
Image: Earth Commission, PIK, SRC and Exeter University
ティッピングポイントの区分。青が雪氷圏、緑が生物圏、オレンジが大気と海洋。

次の0.1度上昇を抑えるために迅速な脱炭素を

研究の共同執筆者であり、Earth Commissionの共同代表を務めるJohan Rockström氏によると、世界は2度から3度の温暖化に向かう可能性があるそうで、研究のプレスリリースでは「ティッピングポイント超えを防ぐために、私たちは手を尽くさなければいけません。次の0.1度が重要なんです」と述べています。

研究者たちは、人類がどの温暖化シナリオを進むにしても、できる限り多くのティッピングポイント超えを回避するために脱炭素化を優先すべきと確信しているとのこと。Armstrong McKay氏はこう語っています。

気温上昇が1.5度を超えても、たとえティッピングポイントを超えてしまったとしても、それ以上の温暖化をできる限り抑えるための方法が私たちには残されています。


1.5度、2度、2.6度。数字に気をとられると、「まだ大丈夫」と対策を怠ったり、「もうダメだ」とあきらめたりすることにつながります。いつでも、次の0.1度を上昇させないために、少しでも排出量を減らす努力を続ければいいのだと思います。

Reference: Carbon Brief