イーロン・マスクのTwitterを逃げ出した人たちが見つけた心のオアシス、Mastodon(マストドン)。
マストドンはドイツのソフトウェアエンジニアのオイゲン・ロチコ(Eugen Rochko)が2016年に立ち上げたオープンソースの分散型ソーシャルネットワークです。民間企業の統率下にあるのではなく、だれでもサーバを立ち上げて任意で参加して連合艦隊みたいにつながれるところが人気を呼び、じわじわと支持を広げていました。マストドンは10月27日から50万人近くが登録してユーザーが100万人を突破して倍増。Twitterに代わるSNSのNo.1チョイスになっているというわけです。
マストドンって何?
マストドンは1万年以上前に生息していた、ゾウ、マンモスみたいな生き物です。その名にあやかる短文投稿型SNS「マストドン」の特長をまとめると、次のようになります。
・つぶやき文字数500文字以内で、Twitterよりだいぶ長い。
・投稿はツイートならぬ「トゥート(Toot、英語ではおならのブーの意)」と呼ばれる。
・地域や興味範囲に合うインスタンス(サーバー)を選んでユーザー名を登録する。
・広告に依存しない。
・投稿は検索できない(検索はハッシュタグのみ。狙われるリスクが低い)。
・コメント付きのRTはできない(ブーストと呼ばれるリツイートだけ)。
・バズることを目指していない(表示は時系列。トレンドトピックは上位表示されない)。
・CW(Contents Warning:警告)が表示される(荒れそうな投稿は畳むことができる)。
バイラルの拡散より、外野の雑音、誹謗中傷をシャットアウトすることのほうを重視していることがよくわかります。
サーバーは自分で立ち上げても、運用コストに関して「Twitter青バッジの月額購読料より安いし、データ、ID、ソーシャルグラフは完全に自分のものだ」という声も。
なお、月曜リリースになったバージョン4.0.0では投稿公開用の「Toot」ボタンが創業当時の「Publish」ボタンに戻っています。もともと「Tootボタンの名前を変えたら永久に資金援助してやる」という著名ユーチューバーの冗談を真に受けて変えただけで、英語ネイティブがどういう意味で使っているかまでは知らなかったみたい…。利用者はもうトゥートで慣れちゃってるから、これからもトゥートって呼びそうですけどね。
技術的な詳細については、Wikipediaがとてもくわしいです。
科学者がTwitterを離れる理由
Twitterは正社員の半分が即時解雇された第1の週末に続き、第2の週末には契約社員も8割が予告なしに解雇され、嘘・ヘイト拡散の防波堤となっていた外注コンテンツモデレータも不在の状態です。情報セキュリティ、プライバシー、コンプライアンスの各最高責任者も全員辞めて不在。そんなことから、誹謗中傷やなりすましの標的になりやすい学術経験者の間で「偽情報に惑わされた個人攻撃が野放しになるのではないか」との不安が高まっていて、それがTwitter離れを加速しているとScienceは報じています。
イーロンにはデマ拡散砲を放った長い歴史がある
トップに立つ、頼みのイーロン・マスクはといえば、技術のことをほんのちょっと訂正されただけで中堅社員をクビにするような人ですしね…。
2020年3月には「今のペースでいけば、アメリカも4月にはコロナ新規感染がゼロ近くになってるだろう」と根拠ゼロのツイートを広めて医師団に叱られ、同年4月にはコロナウイルスの危険性について楽観的に述べた医師2人の動画をツイートし(現在動画は削除されています)、つい最近もペロシ米下院議長宅襲撃事件に関してデマを拡散して問題になっていたりします。
真実を追求する学術肌の人を守ってくれるような雰囲気ではない、と感じた科学者たちが逃げていくのも無理はないのかもしれません。
Twitterにはないマストドンの魅力
「マストドンは学会のあと一杯飲みに行く感覚で楽しめる」とNatureにその魅力を語るのは英国の大学研究員。「これがTwitterだと、世界中が見てるなかで何かしゃべらなきゃならないと感じてしまう」といいます。
Twitterはイーロンみたいなショーマンには向いているけど、スタンドプレイする必要のない空間で静かに考えを深めていきたいときだってありますものね。その点、マストドンはサーバーごとに地域や興味範囲がわかれているので、これがスパムをはじくバッファーになって、ウマの合う人たちで集まる安全地帯になっているようです。
世界の頭脳の貴重な情報がそちらに移っちゃうのは寂しいけど、最近の学者いじめは異常。これまで有名料と割り切ってTwitterで活動していた人たちもDiscordや次を探しはじめています。
Source: Mastodon