AIでイラストを作って思った、みんながディレクターになる未来

  • author K.Yoshioka
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AIでイラストを作って思った、みんながディレクターになる未来
Image: Elmo Mistiaen

どう使うかは自分次第?

今年、大きな話題となったAIによるイラスト生成。MidjourneyにStable Diffusion、DALL・E2など、さまざまなAIが登場しました。 実際にTwitterやInstagramにはAIで生成したイラストが大量にシェアされ、その完成度の高さに驚いた人も多いはずです。

ただその精度とは裏腹に、AIによってイラストレーター・絵描きという仕事がなくなるではないかと危惧されたり、AIの学習に使用するイラストの著作権の問題だったり、手放しでは喜べないこともありました。

そしてこれは始まりに過ぎず、多分これから映像音楽に関しても、AIでの生成が可能になり、似たような問題に直面すると思います。

だからこそ、AIのことがとても気になり、自分でもイラスト生成を試したり、さまざまな作品を調べてみました。そしたら不思議と、AIに対する不安感が薄れてきたんです。今回はその理由をお話しします。

コンセプトの大切さに気づく

AIでのイラスト生成はとても簡単、だけど簡単じゃないんです。自分で試し始めた頃は、組み合わせたら面白そうなワードを適当に入れていろんなイラストを作っていました。通常の人間の発想では出てこなさそうなイラストは見ていて面白かったんですが、すぐに飽きました。なんか、確かに面白いんだけど、「AIが作った」ということに付加価値がつき過ぎてる気がしたんです。SNSには同じようなイラストも多く、「AI独特の絵柄」みたいなのがありふれてました。そこでいったんやめてしまったんですけど、しばらくしてInstagramを巡回してていくつかのAI生成の作品に出会ったんです。

まず海外のアウトドア系ファッションが好きでいろいろ漁ってた時に遭遇したのが、このイラスト。アウトドアウェアと昆虫のモチーフを組み合わせたファッションのコンセプトデザインとして、さまざまなメディアでシェアされていました。

これはAIが生成した架空の人物のポートレイトと、その人物についてのAIが生成した架空のストーリーを載せているアカウント。

これらの作品を作ったクリエイターたちのアカウントは、他にも同じコンセプトの作品をアップされており、クリエイター自身の意図、オリジナリティが存在しているように感じました。そして自分が作っていたAIイラストには「コンセプト」が抜けていたことに気づいたんです。

アートにおけるコンセプトとは、その作品が伝えたいメッセージや意図を指すとしましょう。適当にワードを入れて作ったイラストには、自分の意図があまり介在しておらず、ある意味ガチャ的な「どんな絵が出てくるわからない」ことに対する楽しさが大部分を占めていたことに気づいたんです。そこで、もう少し自分の中でコンセプトを固めて作ることにしてみました。

脳内を具現化するツールとしてのAI

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Image: Stable Diffusion

ただコンセプトを考えるといっても、メッセージ性とかまで考えると難しいので、一旦は頭の中の想像で描いたイラストをAIに再現させることを試し始めました。そうするとプロンプト(イラストを生成する際にAIに必要な要素を指示するためのテキスト)は細かく指示する必要があり、どんどん長く、複雑になっていきました。そしてこのプロンプトが長くなると、生成の時間も長くなります。そうして出てきたイラストが、全く思い描いたものとは違ったりするんです。これは2022年発の新しい「産みの苦しみ」だと思いました。そう、AI生成と言えど脳内を再現するのは難しいのです。

ただ、何回も繰り返して足りていない要素を追加し、Discordのコミュニティーで共有されているプロンプトを参考にしたりして、試行錯誤するとだんだんと思い描いていたイメージに近づいてきました。自分は趣味で音楽を作るんですが、そのアプローチともとても似ていることに気づきました。

ようは、頭の中にあるものをどのように表現するか、ということ。たとえAIを使うとしても、頭の中を具現化するために使うのであれば、これはツールでしかない思ったんです。どのAIサービスを使うのか選ぶのも、音楽で言えばLogicを使うのか、Abletonを使うのか、 FL Studioを使うのか、選ぶのと同じ。簡単な操作で作品を作ることはできるけど、自分の思い描くものを作るのには相応のスキルが必要になります。そう思うと、AIに対して脅威というより、これまでとは違うアプローチで脳内を具現化するツールだと捉えることができるようになりました。

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Image: Ascannio / Shutterstock.com
コロラド州の公共イベント「ステイト・フェア」で行われた美術作品の公募展にて、デジタルアート部門で1位に輝いてしまったAI生成の作品

中には、AIがコンセプトも考えて、その通りに作ったものが評価される未来も来るんじゃない?と思う人もいると思います。たしかにそれはそうで、そういう未来も来ると思います。でもそれは技術的に可能である、というだけの話で人間の表現活動の本質とはまた違う話です。

表現する人はどこまで行っても主体は自分ですし、作ること自体に意味があったりする。そうなると、AIをどう使って自分の表現をするか、ということが大切な気がします。いまあるスキルや経験だって無くなるわけではなく、AIと組み合わせて使えばいいと思うんです。そして作品の評価という点で言えば、オリジナリティが必要とされるのは、AIがいてもいなくても同じですしね。(ただこのオリジナリティに関しては、現時点では著作権の問題がついて回ると思いますが…)

逆に自分の中でコンセプトさえあれば、絵でも映像でも音楽でも表現できてしまう世界が来てしまうでしょう。ある意味、これまでのアーティストは総合監督=ディレクターみたいな立ち位置が近くなるのかもしれません。そうなると表現の幅も広がるはず。

AIといい関係を築くためには?

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Image: Annette Shaff / Shutterstock.com

もちろんその前に著作権の問題とか、解決しないといけない問題も数多くあります。これからAIを開発する人たちは、技術ドリブンではなく、表現に関しての知見や理解が求められると思います。そうすればクリエイターたちともいい関係が築けるのではないでしょうか。

AIを触っていて、スティーブ・ジョブズがMacの成功の理由を「優れたコンピュータ研究者でもあったミュージシャンやアーティストや詩人や歴史家たちが作ったからだ」と語っていたのを思い出しました。人間の情緒とテクノロジーをどう繋いでいくかが、今後のAI開発には必要だと思います。 そしてクリエイターや一般人も、単純に危機感を募らせるのではなく、一度使ってみてから是非について判断してはどうでしょうか。むしろ表現者たちがどんどんAIを試して、開発者にもフィードバックされ、より良いAIと未来が作られるようになることを願います。