SNSに出回っているクオリティを余裕で越えてきた...!
赤ちゃん顔や老人顔に加工できるフィルターがSNSを賑わせたのはもう何年も前のこと。最近では、俳優の見た目を若く / 老いて見せることができるというAIツールをディズニーの研究者らが開発しました。こうして見るとかなりリアルな仕上がりですが、本来であればこのクオリティに達するには数週間という作業が必要だといいます。
映画制作ツールとしてのVFX(視覚効果)
視覚効果の例としてわかりやすいのが、映画『アントマン&ワスプ』(2008)。アントマンが人間サイズからアリサイズになったり、もっと高度なところでは、ミシェル・ファイファーやマイケル・ダグラスといった俳優の、若き頃の姿を再現したり。映画作品としてクオリティを追求する場合、腕のあるメイクアップアーティストの技術でしわを消すか、コンピューターで生成したものに置き換える必要があります。
こうした技術は、ハリウッド級の予算がないと簡単に使えるものではありません。また作業としても複雑なものであることから、AIにより視覚効果をどれだけ簡易化できるかに注目し、研究に投資してきた企業も多数あります。Disney Research Studiosでは2年前に、AIを利用したフェイススワップ(顔交換)動画の制作ツールを開発。さらに今回新しく、俳優が若く / 年老いて見えるツールを発表しました。
カメラ目線じゃなくても、動いてもOK
これまでにも、ニューラルネットワークや機械学習を用いて同様の視覚効果を引き出そうとする試みはありました。ただ、静止画のほうがリアルでしっくりくることが多く、動画となるとまずまずの仕上がりだったようです。
今回発表された論文によると、ディズニーの研究者らは、俳優がカメラの方を向いていなくても効果が出るものを作り上げるのに成功しました。
まず、ランダムに生成された何千もの顔のデータベースを作成。既存の機械学習ツールを使用して、数千種類の顔を若齢化 / 老化させ、その結果からFRAN (face re-aging network) と呼ばれる新しいニューラル ネットワークをトレーニングしたといいます。FRANに顔写真をインプットして、顔のどのパーツが年齢によって変わるか(しわが増える / 減るなど)を予測し、その結果を元の顔に重ねます。
すごいのは、頭が動いていても、カメラ目線じゃなくても、時間とともに光のあたり方が変化しても、この効果をキープできること。また、AI によって生成された変更にアーティストが手を加えて調整することもできるというので今後の実用性が期待されます。